
カフェのエスプレッソマシンに補助金は使える?対象になる条件と外れる条件
「今のエスプレッソマシンが古くなってきたので、補助金を使って入れ替えたい」——カフェを経営していると、一度は考えるテーマだと思います。実際にインターネットで調べると「飲食店の設備導入に補助金が使えます」という記事がたくさん出てきます。
ただ、実務の現場で相談を受けていると、期待と制度の設計がかみ合っていないケースが少なくありません。エスプレッソマシンは、カフェにとっては売上を左右する主力設備ですが、補助金の側から見ると「よくある業務用機器の買い替え」に見えてしまうためです。
この記事では、カフェのエスプレッソマシン導入について、どういう組み立てなら補助金の対象になり得るのか、逆にどこで外れやすいのかを、対象判定の境界線に絞って整理します。数字は2026年8月時点で確認できる公募要領・公表資料にもとづくもので、制度は改定されることがあるため、申請前には必ず最新の公募要領をご確認ください。
結論:エスプレッソマシン「単体の買い替え」は補助金の主役になりにくい
先に結論からお伝えします。エスプレッソマシンを1台買い替えるだけ、という計画は、多くの補助金で対象の中心に据えにくいのが実情です。理由は制度ごとに異なりますが、大きく分けると次の3つに整理できます。
- 省力化を目的とする制度では、汎用設備を単体で導入するだけの事業が対象外とされている
- 新製品・新サービスの開発を支援する制度では、単なる設備の導入が対象外とされている
- 販路開拓を支援する制度では、金額の上限が小さく、機器代金の一部をまかなう位置づけになる
逆に言えば、「マシンを買う」という発想から「何を実現するために、どんな設備の組み合わせを入れるのか」という発想に切り替えると、対象になる道筋が見えてきます。ここからは制度ごとに、その境界線を具体的に見ていきます。
なぜ「単体購入」だと外れるのか:省力化投資補助金の判定基準
人手不足対策の設備投資でまず候補にあがるのが、中小企業省力化投資補助金(一般型)です。補助上限は1億円と大きく、飲食業でも活用が想定される制度ですが、対象設備の考え方に明確な線が引かれています。
対象になるのは「オーダーメイド性のある設備」(情報通信技術・モノのインターネット・人工知能・ロボット等を活用した専用設備等)であり、次のいずれかに該当すれば、汎用設備であってもオーダーメイド設備とみなされて対象になります。
- 省力化に資する汎用設備を複数組み合わせることで、より高い省力化効果や付加価値を生み出す場合
- 事業者の導入環境に応じて、周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合
そのうえで、単に汎用設備を単体で導入する事業は対象外とされています。この制度には「単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れる」という要件もありますが、金額の要件を満たしていても、それだけでは足りないという整理になっています。全自動エスプレッソマシンは1台で50万円を超えることが多いため、金額要件はクリアできても、単体導入では計画として成立しにくいわけです。
したがって、この制度を狙うのであれば、たとえばマシンの入れ替えと同時に、注文から抽出、提供までの一連の流れをどう作り替えるのかを設計し、複数の設備を組み合わせた省力化計画として示す必要があります。あわせて、3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画と、賃上げの要件が課され、未達の場合は達成率に応じて返還が発生しうる点も押さえておきましょう。
候補になる4つの制度と、カフェでの向き不向き
中小企業省力化投資補助金(一般型)
前章のとおり、複数設備を組み合わせて店舗オペレーションを作り替える投資に向いています。補助上限は1億円。カフェ単店の設備更新では規模が合わないこともありますが、複数店舗の同時改修や、厨房とホールをまたぐ省力化を計画するなら選択肢になります。
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)
こちらは、公的に登録された省力化製品のカタログから選んで導入する制度です。補助上限は1,500万円(大幅賃上げ計画を盛る場合)で、労働生産性を年平均成長率3.0%以上向上させる計画が求められます。
注意したいのは手順です。この制度は、カタログに登録された省力化製品を導入することが前提であり、中小企業等が販売事業者と共同で申請する仕組みになっています(単独申請は原則不可)。つまり「気に入ったマシンを自分で選んで買い、あとから申請する」という進め方はできません。導入したい機器がカタログに載っているかどうかを、検討の最初に確認するのが近道です。
小規模事業者持続化補助金
小規模なカフェにとって、現実的な選択肢になりやすいのがこの制度です。補助率は2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4)、補助上限は基本50万円で、インボイス特例で50万円、賃金引上げ特例で150万円がそれぞれ上乗せされ、両方の要件を満たす場合は最大250万円になります。
対象経費には機械装置等費(店舗備品、衛生・省スペース化の機器など)が含まれるため、エスプレッソマシンを計画の一部に組み込む余地があります。ただしこの制度の主題はあくまで販路開拓です。「新しいメニューを打ち出して新規客層を獲得する」という筋書きの中に設備が位置づけられている必要があり、通常の営業活動の延長と見なされると対象外になりやすい点に注意してください。
対象となる小規模事業者の範囲は業種で分かれており、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員5人以下です。区分の判定に迷う場合は、申請の窓口となる商工会・商工会議所に確認しておくと安心です。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠
自社の技術力等を活かして、顧客等に新たな価値を提供する新製品・新サービスを開発する取組を支援する枠です。ここでは、単なる設備・システム導入、既存製品・サービスの生産プロセス改善、同業で既に相当程度普及している開発は対象外とされています。
カフェで言えば、「今のマシンを新しくして、これまでどおりのコーヒーを提供する」という計画は成立しません。一方で、開発の中身がはっきりしていて、その実現に設備が必要という構造になっていれば、検討の余地が出てきます。補助下限は100万円、補助率は中小企業者1/2、小規模企業・小規模事業者・再生事業者は2/3です。
数字で見る:制度によって自己負担はどう変わるか
仮に、導入したい設備一式が150万円(税抜)だったとして、制度ごとに手元の負担がどう変わるかを見てみましょう。いずれも要件を満たした場合の単純計算で、実際の交付額は審査と対象経費の判定によって変わります。
- 小規模事業者持続化補助金(基本の上限50万円):補助率2/3で計算すると100万円ですが、上限50万円が効くため、自己負担は100万円程度になります
- 小規模事業者持続化補助金(インボイス特例で上限100万円):150万円の2/3である100万円が上限内に収まり、自己負担は50万円程度まで下がります
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠:補助下限が100万円のため、補助率1/2で計算すると対象経費200万円程度の規模が必要になります。設備単体の150万円では下限に届かない可能性があります
ここで見えてくるのは、「補助率が高い制度ほど得」とは限らないということです。上限と下限、そして自店の投資規模の3つがかみ合って初めて、制度が機能します。制度を先に決めるのではなく、投資の中身と金額を固めてから制度を選ぶ順番をおすすめします。
よくある質問
Q. もうマシンを発注してしまいました。あとから申請できますか
交付決定日前に行った発注・契約・支払は対象外とされています。採択の通知が届いただけでは事業を開始できない制度もあるため、発注のタイミングは特に慎重に判断してください。「補助金を使うかもしれない」という段階であれば、契約前に窓口や専門家に相談しておくと安全です。
Q. リースやレンタルでも対象になりますか
小規模事業者持続化補助金では、借料という経費区分に機器・設備等のリース・レンタル料が含まれています。ただし対象になる範囲や期間の扱いは制度・公募回によって異なるため、契約形態を決める前に公募要領で確認してください。
Q. 中古のエスプレッソマシンでも対象になりますか
小規模事業者持続化補助金の機械装置等費では、中古品は条件付きの扱いで、50万円(税抜)未満かつ2者以上の見積が必要とされています。なお新品でも、単価50万円(税抜)超の機械装置等や50万円(税込)超の発注は2者以上の相見積が必要です。見積は1社だけで進めず、複数社から取っておきましょう。
Q. 個人経営の小さなカフェでも申請できますか
小規模事業者持続化補助金は、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)であれば常時使用する従業員5人以下が対象で、個人事業主も申請できます。会社役員・個人事業主本人・同居の親族従業員・日雇い等は従業員数にカウントしません。申請は電子申請のみで、事前にGビズIDプライムのアカウント取得が必要です。
Q. 補助金はいつ手元に入りますか
補助金は原則として後払いです。小規模事業者持続化補助金の第20回公募では、申請受付開始が2026年11月5日、事業支援計画書(様式4)発行の受付締切が2026年12月4日、申請受付締切が2026年12月15日17:00、採択発表は2027年3月頃の予定とされています。設備代金はいったん自己資金や融資でまかなう前提で、資金繰りを組み立てておく必要があります。
申請の前に決めておきたい3つのこと
制度選びで迷う時間を減らすために、次の3点を先に固めておくことをおすすめします。
- 投資の目的:省力化なのか、新メニュー・新サービスの開発なのか、販路開拓なのか。目的が決まると候補の制度は2つ程度に絞れます
- 投資の総額:マシン本体だけでなく、周辺機器・設置工事・付帯費用まで含めた金額を出します。上限と下限のどちらに引っかかるかがここで分かります
- スケジュール:交付決定前の発注は対象外です。いつまでに機器が必要かを逆算し、公募の締切と実際の導入時期が両立するかを確認します
なお、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募は、2026年6月29日に公募が開始され、申請締切は2026年10月30日18:00、採択発表は2027年1月頃とされています。どちらの制度も、書類の準備に相応の時間がかかるため、締切から逆算した段取りが必要です。
まとめ
カフェのエスプレッソマシン導入に補助金が使えるかどうかは、「マシンの種類」ではなく「計画の組み立て方」で決まります。単体の買い替えとして申請すると、省力化の制度ではオーダーメイド性の要件で、開発系の制度では単なる導入という理由で外れやすくなります。
一方で、店舗のオペレーションをどう変えるのか、どんな新しい価値を提供するのかが明確になっていれば、中小企業省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型)、小規模事業者持続化補助金、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠のいずれかで検討の余地が生まれます。
制度は毎年のように改定され、公募回ごとに要件が変わります。この記事の内容は2026年8月時点で確認できる情報にもとづくものですので、実際に申請を検討する際は最新の公募要領を確認し、判断に迷う部分は専門家にご相談ください。設備投資の資金計画そのものについては、補助金だけでなく融資との組み合わせも含めて考えると、無理のない形に整えやすくなります。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























