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コラム

セントラルキッチンの補助金|多店舗展開で確認したい下限額と新市場要件

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セントラルキッチンの補助金は「作る量」ではなく「何が新しいか」で決まります

複数店舗の仕込みを一か所に集約するセントラルキッチンは、店舗数が増えるほど検討したくなる投資です。厨房機器だけで数百万円、建物や内装まで含めると一千万円を超えることもあり、補助金を前提に計画を組みたくなる規模になります。

ところが検索して出てくる採択事例の記事は、数年前の公募体系を前提にしたものが多く、2026年度の制度にそのまま当てはめられません。制度は統合と再編を経ており、当時「通った」形がいまも通るとは限らないためです。

この記事では、セントラルキッチンへの設備投資が制度の入口で外れてしまう5つの前提を、2026年度の公募要領の内容にそって整理します。判断の材料に使えるよう、対象外になる境界線のほうを先に書いています。数字と要件は2026年8月時点の公募要領1.0版(令和8年6月)に基づくもので、申請時は最新の公募要領をご確認ください。

まず制度の名前から確認します

2026年度(令和8年度)から、従来の2つの制度が統合され、公募要領上の正式名称は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」になりました。この制度の中に、革新的新製品・サービス枠と新事業進出枠という性格の違う枠があります。

枠を特定せずに制度名だけで話を進めると、後の判断が全部ずれます。セントラルキッチンの計画がどちらの枠に乗るのかは、買う機器ではなく、その投資で何を新しく始めるのかで分かれるためです。以下ではこの2つの枠を軸に見ていきます。

前提1:投資額が補助下限に届かないと、そもそも枠に乗りません

補助金の記事は上限額の話に寄りがちですが、この制度には下限額があります。革新的新製品・サービス枠は補助下限100万円、新事業進出枠は補助下限750万円です。

補助率は中小企業者で2分の1(小規模企業・小規模事業者・再生事業者は3分の2)ですから、新事業進出枠で補助下限に届くには、補助対象経費でおおむね1,500万円規模の投資が必要になる計算です。厨房機器を数台入れ替える程度の計画では、新事業進出枠の入口に立てません。

逆に、革新的新製品・サービス枠は補助下限100万円と低いぶん間口が広く見えますが、こちらは金額ではなく後述する「開発があるか」で落ちます。金額の大小だけで枠を選ぶと、どちらの入口にも立てない状態になります。

三浦高

💬 執筆者の三浦から一言

審査する側にいたころから、上限額の数字だけが独り歩きします。よく見かける3,500万円・9,000万円は、最大の従業員規模で大幅賃上げ特例まで適用したときの最大値です。実際の上限は規模で変わり、革新的新製品・サービス枠は5人以下750万円からという設計です(2026年8月時点)。自社の人数で引き直してから投資額を組んでみてください。

前提2:「同じ料理を効率よく作れる」は革新的新製品・サービス枠の説明になりません

革新的新製品・サービス枠は、自社の技術力等を活かして顧客に新たな価値を提供する新製品・新サービスを開発する取組を支援する枠です。公募要領では、単なる設備・システム導入、既存製品・サービスの生産プロセス改善、同業ですでに相当程度普及している開発は対象外と明記されています。

セントラルキッチンの導入目的は、多くの場合「いまの料理を、もっと安定して、もっと安く、もっと早く作る」ところにあります。これは既存メニューの生産プロセス改善そのもので、公募要領が対象外として挙げている形にきれいに重なります。

この枠で組むなら、集約そのものではなく、集約した設備でしか作れない新しい商品やサービスが計画の中心に来ている必要があります。しかもそれが同業ですでに広く普及している内容だと、やはり対象外の側に寄ります。

前提3:新事業進出枠の「新市場」は、店舗を増やすことではありません

新事業進出枠は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。判定は日本初・世界初かどうかではなく、申請者にとって新規性のある製品等であり、かつ申請者にとって新たな市場であるかどうかで行われます。

ここで多店舗展開の計画がつまずきます。仕込みを集約して出店ペースを上げる計画は、売り先も商品も既存のままです。公募要領は、既存事業と同一市場、既存製品の増産・再製造、単なる製法変更、単なるメニュー追加、単に商圏が違うだけといった形は新事業進出に該当しないとしています。店舗を増やすこと自体は、この枠が言う新市場ではありません。

新事業進出枠の側から見て筋が通るのは、たとえばセントラルキッチンを使って店舗の外へ売る形に踏み出す計画です。それでも「新市場性」または「高付加価値性」のどちらかで説明しきる必要があり、価格帯や顧客層が少し違うという程度の説明では弱くなります。

なお、この枠には新規設立・創業後1年に満たない事業者は対象外という条件もあります。最低1期分の決算書が求められるため、法人を立てて最初の1年でセントラルキッチンから始める計画は、この枠では組めません。

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前提4:厨房の建物費が対象になるのは、2枠のうち片方だけです

セントラルキッチンは、機器よりも建物側の工事が大きくなりがちな投資です。この点で2つの枠は扱いが違います。

革新的新製品・サービス枠は機械装置・システム構築費が必須かつ主軸で、建物の単なる購入等は対象外です。一方、新事業進出枠は機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが必須経費とされており、建物費が対象経費に入ります。ただしこちらも建物の単純購入・賃貸や不動産購入費は対象外です。

どちらの枠でも、機械装置・システム構築費は単価10万円(税抜)以上という単価要件があります。見積書が「厨房工事一式」でまとまっていると、この単価要件で判定できる形になっていません。工事の見積は、機器・建物・据付・その他に割り直したうえで枠を選ぶ順番になります。

前提5:交付決定の前に発注すると、その経費は全部外れます

制度に乗る乗らない以前の話として、交付決定前の発注・契約・購入は対象外です。厨房設備は納期が長く、物件の賃貸借や工事の着工時期が先に決まっていることも多いため、ここで計画が崩れます。

第1回公募のスケジュールは、公募開始が2026年6月29日、申請受付が2026年8月31日から、締切が2026年10月30日18時、採択発表が2027年1月頃です。採択発表からさらに交付決定を待つ流れになるため、年内に厨房を動かしたい計画とは時間軸が合わないことがあります。申請は電子申請で、GビズIDプライムの取得が前提です。

採択された後に、3〜5年背負う数字があります

この制度は、採択されて終わりではありません。基本要件として、付加価値額を事業計画期間で年平均4.0パーセント以上、一人当たり給与支給総額を年平均3.5パーセント以上伸ばすこと、事業場内最低賃金を毎年、地域別最低賴金プラス30円以上の水準にすることが求められます。賃上げと最低賃金の要件は、未達の場合に返還が発生しうる設計です。

セントラルキッチンは、店舗のパート・アルバイト比率が高い体制のまま人数だけが増えていくと、一人当たり給与支給総額の伸びを説明しにくくなります。集約で浮いた人件費をどこに振り向けるかまで決めてから申請するかどうかを判断する順番になります。

この制度に乗らないときに残る道

セントラルキッチンの計画が上記のいずれかで外れる場合でも、投資の性格を切り分ければ別の制度が視野に入ります。

現場の省力化・自動化が主目的であれば、中小企業省力化投資補助金(一般型)が候補になります。こちらは単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れることに加え、汎用設備を複数組み合わせるなどのオーダーメイド性を計画で示す必要があり、汎用設備を単体で入れるだけでは対象外です。労働生産性を年平均4.0パーセント以上伸ばす計画と賃上げ目標が要件で、未達時には返還が発生しうる点は同じです。

集約後に始める販路開拓の側、たとえば新しい売り方の開拓にかかる費用であれば、小規模事業者持続化補助金が視野に入ります。ただし対象は小規模事業者に限られ、飲食業を含むサービス業では常時使用する従業員5人以下という範囲です。多店舗展開の規模になっている会社では、この範囲から外れていることのほうが多くなります。

まとめ

セントラルキッチンの補助金は、機器の値段ではなく、その投資で何を新しく始めるのかで枠が分かれます。効率化として説明すると革新的新製品・サービス枠の対象外の側に寄り、店舗展開として説明すると新事業進出枠の新市場から外れます。まず自社の投資額を補助下限と見比べ、次に見積を機器・建物・据付に割り、そのうえで交付決定の時期と工事の着工時期が並ぶかを確かめる順番が現実的です。

制度の数字と要件は公募回ごとに変わります。本記事の内容は2026年8月時点のもので、申請前には最新の公募要領で確認したうえで、自社の計画がどの枠で説明しきれるかを個別に検討してください。

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弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

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三浦高

この記事を書いた人

三浦高/Takashi Miura

元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者

産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。

融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

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中野裕哲

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】

税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1,000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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