
外壁点検ドローンの補助金、内製化と新サービス化で当てはまる制度が変わります
外壁改修や塗装工事、建物調査を手がける会社の中には、これまで外注していた外壁点検を自社のドローンで行えないかと考え始めるところがあります。外注コストを抑えるだけでなく、点検から改修提案までを自社で一気通貫にできれば、受注の幅を広げられるという狙いです。補助金を調べ始めると「ドローン導入の補助金」という括りの情報は見つかりますが、自社の投資がどの制度に当てはまるのかは、投資の性質によって変わります。
この記事では、外壁点検ドローンの導入を「既存の点検外注を自社に置き換える投資」なのか「外壁点検を新しい受注サービスとして立ち上げる投資」なのかで分けて、それぞれ該当しやすい補助金の型を整理します。数字や条件は2026年8月時点の情報です。制度の改定が多い分野のため、申請前にはその時点の公募要領で条件を確認する前提になります。
投資の性質によって、当てはまる補助金の入り口が変わります
「ドローンの補助金」で検索すると、制度の一覧や、ドローンスクールの資格取得講座、点検サービスを提供する会社の紹介ページが目立ちます。しかし外壁改修・塗装を本業とする建設会社が外壁点検を自社で行おうとする場合、検討すべきなのは制度の一覧ではなく、自社の投資が「既存事業の効率化」なのか「新しい事業への進出」なのかという整理です。この見立てを誤ると、要件を満たせない制度に事業計画を寄せてしまい、採択の可能性を自分で狭めることになります。
①外注していた点検を自社ドローンに置き換える場合|中小企業省力化投資補助金(一般型)
これまで外部の点検業者に依頼していた外壁点検を、自社のドローンと人員で行う体制に切り替える投資は、既存事業の省力化・効率化として位置づけられます。この位置づけで候補になるのが中小企業省力化投資補助金(一般型)です。ただしこの制度は、ドローン本体を1台導入するだけでは対象になりません。対象になるのは「オーダーメイド性のある設備」で、汎用設備を単体で導入する事業は対象外と明記されています。単価50万円(税抜)以上の機械装置等を1つ入れるという条件を満たしていても、それだけでは足りません。省力化に資する汎用設備を複数組み合わせることでより高い省力化効果を生み出す場合や、導入環境に応じて周辺機器や搭載機能の構成が変わる場合に限り、オーダーメイド設備とみなされて対象になります。ドローン本体に加えて、点検データの解析システムや報告書作成の仕組みなどを組み合わせた計画にできるかが、対象になるかどうかの分かれ目になります。
この制度は、3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画が必要で、賃上げ目標も要件です。目標を達成できない場合は、達成率に応じて補助金の返還が発生しうる仕組みになっています。補助上限は最大1億円ですが、これは投資規模の大きい計画向けの上限であり、投資規模に対して事業計画の負担が見合うかどうかも合わせて検討する部分です。
②外壁点検を新しい受注サービスとして立ち上げる場合|新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠
一方、外壁点検を「これまで手がけていなかった新しい受注サービス」として立ち上げる投資であれば、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠が候補になります。この枠は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する制度で、新たに提供する製品・サービスが申請者にとって新規性を持ち、その市場が申請者にとって新たな市場であることが求められます。
ここで注意したいのが対象外の条件です。既存事業と同一市場での展開、既存製品の増産・再製造、単なる製法変更、単なるメニュー追加、単に商圏が違うだけといった投資は「新事業進出」に該当せず対象外とされています。外壁改修・塗装を本業とする会社が「点検も自社でできます」という程度の位置づけで計画を組むと、既存事業へのメニュー追加とみなされて対象から外れる可能性があります。点検を起点にした新しい顧客層や価格帯の事業として、既存の改修・塗装事業とは別の市場性をどう示すかが審査の分かれ目になります。また、新規設立や創業後1年に満たない事業者は対象外で、最低1期分の決算書が必要です。
補助上限は従業員規模によって異なり、20人以下は最大2,500万円、21〜50人は最大4,000万円、51〜100人は最大5,500万円、101人以上は最大7,000万円です(大幅な賃上げを実施した場合はそれぞれ最大3,000万円、5,000万円、7,000万円、9,000万円)。よく見かける「上限9,000万円」という数字は、最大規模の事業者が大幅賃上げ特例まで満たした場合の最大値で、従業員規模によって実際の上限は変わります。補助下限は750万円のため、これを下回る小さな投資では申請できません。
③小規模な立ち上げ・周知段階なら|小規模事業者持続化補助金
外壁点検サービスを始めるにあたって、まずはチラシやウェブサイトで既存顧客・地域に知らせるところから始めたいという小規模な段階であれば、小規模事業者持続化補助金も選択肢になります。この制度は販路開拓が主題で、補助率2/3、補助上限は基本50万円、インボイス特例や賃金引上げ特例を満たせば最大250万円まで上乗せされます。ただし対象となるのは常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の小規模事業者に限られ、申請にはGビズIDプライムの取得と、商工会・商工会議所の支援を受けて事業支援計画書の発行を受けることが前提です。
広報費とウェブサイト関連費は、それぞれ補助金交付申請額の上限が30万円(税込)と定められており、どちらか単独の申請はできません。外壁点検サービスの告知だけを目的にした計画では上限にすぐ達してしまうため、ドローンの機材費や既存事業との組み合わせも含めた計画にする必要があります。
革新的新製品・サービス枠は選びにくい理由
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金にはもう一つ、革新的新製品・サービス枠という枠があります。こちらは自社の技術力を活かして新たな価値を提供する新製品・新サービスの開発を支援する枠ですが、同業で既に相当程度普及している開発は対象外とされています。外壁点検サービス自体は、ドローンスクールや点検専門会社がすでに広く提供しているサービスのため、この枠で新規性を示すのは難しい計画になりやすい制度です。新市場への進出という切り口で新事業進出枠を検討するほうが、実態に沿った選び方になります。
💬 執筆者の三浦から一言
ものづくり補助金と新事業進出補助金は、今でも別々の制度として紹介されている場面を見かけますが、2026年度から新事業進出・ものづくり商業サービス補助金として統合され、それぞれ革新的新製品・サービス枠と新事業進出枠という形になっています。制度名で検索するときは、この統合後の名称で調べたほうが最新の公募要領にたどり着きやすくなります。
3つの型の選び分け
ここまでの内容を整理すると、外壁点検ドローンの投資は3つの型に分かれます。既存の点検外注を自社ドローンに置き換える投資は、中小企業省力化投資補助金(一般型)が候補になりますが、ドローン単体の導入では対象外で、周辺システムなどを組み合わせたオーダーメイド性のある計画にする必要があります。外壁点検を新しい受注サービスとして立ち上げる投資は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠が候補になりますが、既存事業と同一市場とみなされないだけの新規性を示す必要があります。小規模な立ち上げ・周知段階の投資は、小規模事業者持続化補助金が候補になりますが、広報費・ウェブサイト関連費はそれぞれ30万円(税込)が上限です。どの型に当てはまるかによって、事業計画で示すべき内容も変わります。
まとめ|申請前に確認したいこと
外壁点検ドローンの導入で補助金を検討する際は、自社の投資が既存事業の省力化なのか、新しい事業への進出なのか、それとも小規模な周知段階なのかを、まず整理することが実務的な出発点になります。制度によって交付決定前の発注・契約は対象外となるため、業者への発注や機材の購入は、交付決定の通知を受け取った後に進める流れになります。賃上げ目標や労働生産性の目標を満たせない場合は返還が発生しうる制度もあるため、事業計画の数値は無理のない水準で組む必要があります。補助金を受け取った場合の税務上の扱いは制度や年度によって変わるため、具体的な処理は税理士へ相談する形になります。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























