
販促物の制作費に補助金は使えるのか|看板・チラシ・メニュー表の対象条件と上限額
新しいメニュー表を作り直したい、色あせた店頭の看板を出し替えたい、近隣にチラシをまいて客足を戻したい。こうした販促物の費用に補助金が使えると聞いて調べ始めた方は多いと思います。
結論から申し上げると、使える制度はあります。ただし「販促物の費用だけを申請する」ことはできず、補助される金額にも制度全体の上限とは別の枠が設けられています。ここを知らずに看板の見積書だけを持って窓口へ行くと、申請の入口で止まってしまいます。
この記事では、小規模事業者持続化補助金の第20回公募(公募要領 第7版・2026年5月27日公開)の内容をもとに、看板・チラシ・メニュー表がどの経費区分に入るのか、いくらまで補助されるのか、申請前に確認しておくべき条件は何かを、小規模な飲食店・小売店の目線で整理します。制度の内容は公募回ごとに変わるため、本記事は執筆時点の情報である点をあらかじめご了承ください。
結論:販促物は対象になるが「販促物だけの申請」はできない
看板・チラシ・メニュー表といった販促物の制作費は、小規模事業者持続化補助金の「広報費」という経費区分の対象になります。公募要領でも、広報費の具体例としてチラシ、広告掲載、看板、DM発送、デジタルサイネージ広告などが挙げられています。
ただし第20回公募では、この広報費について次の2つの制限が明記されています。
- 広報費として申請できる補助金額の上限は30万円(税込)
- 広報費のみの申請は不可
この2つ目が見落とされがちです。「看板とチラシを作りたいので補助金を使いたい」という動機だけでは、申請そのものが成立しません。販路開拓の取組全体の中に販促物が位置づけられていて、他の経費区分の取組と組み合わせられている必要があります。
なお、ウェブサイトやネット広告の費用は「ウェブサイト関連費」という別の区分にあたり、こちらも上限30万円(税込)・単独申請不可という同じ形の制限がかかっています。かつては「補助金交付申請額の4分の1・最大50万円」という計算方式でしたが、第20回では定額30万円(税込)の上限に変わっている点にご注意ください。
看板・チラシ・メニュー表はそれぞれどの区分に入るのか
同じ販促物でも、中身によって入る区分が変わることがあります。目安は次のとおりです。
- チラシ・ポスター・パンフレット:印刷費も配布を依頼する費用も広報費に入ります
- メニュー表:新しい商品やサービスを打ち出すための制作であれば広報費として扱われます
- 店頭の看板・のぼり・デジタルサイネージ広告:広報費に入りますが、後述するとおり設置工事の規模によっては対象から外れることがあります
ここで押さえておきたいのは、広報費は「補助事業計画にもとづく商品・サービスの広報を目的としたもの」が対象という点です。単なる会社案内や、事業計画と結びつかない一般的な宣伝物は対象になりにくくなります。「うちの店を知ってもらう」ではなく「この新メニュー・この新サービスをこの客層に届ける」という形まで具体化しておくことが、区分の判断でも計画の説得力でも効いてきます。
実際にいくら戻るのか:30万円の上限が効いてくる境目
小規模事業者持続化補助金の基本的な条件は、補助率が3分の2、補助上限が50万円です。要件を満たす場合に限り、インボイス特例で50万円、賃金引上げ特例で150万円が上乗せされ、両方の要件を満たせば最大250万円まで広がります。
この枠組みに広報費30万円の上限を重ねると、実際の負担は次のようになります。
- 広報費として35万円(税込)を使った場合:補助率3分の2で計算した補助金は約23万円。30万円の枠内に収まるため、そのまま補助の対象になります
- 広報費として60万円(税込)を使った場合:3分の2で計算すると40万円ですが、広報費の上限30万円で頭打ちになります。自己負担は30万円となり、負担の割合は半分まで上がります
つまり、広報費が45万円(税込)を超えたあたりから、超えた分の負担割合が重くなっていく構造です。看板の入れ替えのように単価の大きい販促物を計画に入れるときは、この境目を意識して、どこまでを補助事業に含めるかを決めることになります。
申請前に確認したい4つの条件
1. 従業員数の上限は業種で変わる(飲食店は5人以下)
「従業員20人以下なら対象」と説明されていることがありますが、これは正確ではありません。公募要領では業種によって上限が分かれています。
- 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く):常時使用する従業員5人以下
- サービス業のうち宿泊業・娯樂業:常時使用する従業員20人以下
- 製造業その他:常時使用する従業員20人以下
飲食店や小売店は一般に前者にあたるため、目安となるのは20人ではなく5人以下です。なお、会社役員・個人事業主本人・同居の親族従業員・日雇いなどは人数に数えません。業種の判定は事業の実態によって変わるため、判断に迷う場合は商工会・商工会議所の窓口でご確認ください。
2. 交付決定日より前の発注・契約・支払は対象外
採択の通知が届いた時点ではまだ発注できません。対象になるのは交付決定日以降の発注・契約・支払です。「先に看板を作ってしまってから申請しよう」という進め方をすると、その費用は全額自己負担になります。制作会社への発注時期は、交付決定の後になるように逆算して組んでください。
3. 様式4の発行締切は申請締切より前にある
この補助金は商工会・商工会議所の支援を受けて進める設計になっており、事業支援計画書(様式4)の発行を受ける必要があります。第20回公募のスケジュールは次のとおりです。
- 申請受付開始:2026年11月5日(木)
- 事業支援計画書(様式4)発行の受付締切:2026年12月4日(金)
- 申請受付締切:2026年12月15日(火)17時00分
- 採択発表:2027年3月頃(予定)
様式4の発行依頼は、受付締切以降はいかなる理由でも受け付けられません。申請締切の日付だけを見て動くと間に合わないため、窓口には余裕を持って相談してください。申請は電子申請のみで、GビズIDプライムのアカウントを事前に取得しておく必要があります。
4. 開業前の販促物には使えない
申請時点で未開業の創業予定者は、この補助金の対象外とされています。開店前に用意するメニュー表や看板の費用を当て込んでいた場合は、前提から見直しが必要です。開業準備段階の資金は融資で組み立て、開業後に販路開拓の取組として補助金を検討する、という順番が現実的です。
対象から外れやすい販促物・工事
販促物まわりで判断が分かれやすいのは、看板の設置が「工事」に近づいたときです。建物の増築・増床や、不動産の取得にあたると判断される工事は対象外になりやすく、外気分断性・土地への定着性・用途性の3要件で判定されます。自立式の大型看板や、建物と一体になる造作は、この線引きに近づくことがあります。
金額面では、単価50万円(税抜)を超える機械装置等や、50万円(税込)を超える発注は2者以上の相見積が必要です。看板1基でこの金額に届くことは珍しくないため、見積は最初から複数社に依頼しておくと手戻りがありません。支払も銀行振込が原則で、1取引10万円(税抜)を超える現金払いは認められません。
このほか、補助事業期間内に配り終えられなかったチラシは対象外とされます。「刷ってあるだけ」では実績として認められないため、配布までを含めた期間設計にしておく必要があります。
よくある質問
Q. 看板とチラシだけで申請することはできますか
A. できません。広報費のみの申請は認められていないため、機械装置等費や展示会等出展費、新商品開発費など他の区分の取組と組み合わせる必要があります。販促物は「販路開拓の計画の一部」として位置づけてください。
Q. 広報費とウェブサイト関連費を両方使えば60万円もらえますか
A. 区分ごとの上限はそれぞれ30万円(税込)ですが、補助金全体の上限(基本50万円、特例適用時は最大250万円)が別途かかります。区分の上限を足し合わせた金額がそのまま受け取れるわけではありません。
Q. 補助金はいつ受け取れますか
A. 補助金は事業を実施し、実績報告を経てから支払われる精算払いが基本です。制作費はいったん自社で立て替える形になるため、手元資金の余裕も含めて計画してください。
まとめ
看板・チラシ・メニュー表の制作費は、小規模事業者持続化補助金の広報費として対象になります。ただし押さえるべき点は次の4つです。
- 広報費の補助金額は上限30万円(税込)で、広報費だけの申請はできない
- 飲食店・小売店の従業員数の目安は20人ではなく5人以下
- 交付決定日より前の発注・契約・支払は対象外
- 様式4の発行締切(2026年12月4日)は申請締切より前にある
販促物は金額が読みやすく、効果も測りやすい投資です。だからこそ「補助金が使えるかどうか」だけでなく、どの経費区分にどう振り分け、どの取組と組み合わせて計画にまとめるかで、受け取れる金額も採択の可能性も変わってきます。制度の内容は公募回ごとに更新されるため、実際の申請にあたっては最新の公募要領と商工会・商工会議所の窓口で必ずご確認ください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























