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コラム

【金融機関が行う信用格付について(前編)】 

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今回は金融機関の裏事情を少しお話したいと思います。

テーマは「信用格付(=以下、格付)」です。

格付といえば有名な信用格付会社である「スタンダード&プアーズ」や「ムーディーズ」、

もしくはテレビの特番でダウンタウンの浜ちゃんがやっている「芸能人格付チェック」(GACKTがシャキーン!ってやるやつ)が思い浮かぶかと思います。

どれも自分たちには遠い世界のように感じます。

 

しかし、経営者(個人事業主も含む)にとって「格付」とは、とても身近なものなのです。

 

中小企業者の多くの方々は金融機関から借入をしている(もしくはする予定)かと思います。
実は、借入をしている皆さんは金融機関から格付されているのです!

 

明確な順位付けをされているわけではありませんが、某番組のように「一流芸能人」「二流芸能人」「そっくりさん」「映す価値無し」などとざっくりとグループ分けしています。
当然、「一流芸能人」には好条件で積極的に融資をし、「そっくりさん」には厳しい条件が出たり、否決されたりもします。

 

今回のコラム(前編)では「格付」という作業はそもそも何のために行われているのか?について解説したいと思います。

 

そのためには日本における銀行のビジネスモデルを理解しなければなりません。
銀行(貸金)業というのはざっっっくり言うと「小売業と賃貸業」に近い性格を持っています。(多分に語弊がありますが、今回はご容赦を)
世の中の皆様から「預金」という名目で「現金を仕入れ」ています。
その仕入れた現金を事業融資や住宅ローンとして貸し出すことで「利息という売上」をあげているのです。
金融機関から見れば以下のように項目を読み替えるとわかりやすいです。
「預金」 = いつか引き出されるもの = 負債
「貸出金」 = いつか返ってくるもの = 資産
「貸出利息」 = 資産を貸すことで得られる収入 = 売上

ここで賃貸業と大きく違うのが「お金を借りた人(債務者)が倒産・破産してしまうと貸出金そのものが拐取できなくなるリスクがある」というところです。
賃貸業は未収家賃は回収できなくても建物そのものがなくなるというわけではありません。
しかし、銀行(貸金)業では、小売業で言う「売掛金や在庫(流動資産)」、賃貸業で言う「不動産(固定資産)」がある日突然返ってこなくなる状況に陥ります。
そのようなリスクと隣り合わせのため、銀行は常に貸したお金の一部は返ってこないと想定し、「貸倒引当金」を計上しています
要は引当金分が返ってこなくても(貸倒れても)大丈夫なように身構えしておく必要があるのです。

しかし、全ての債務者から「一律〇%」と引き当ててしまうと、個別の企業の業況や経営者の手腕などが考慮されないため、より正確な引当金額を算出するために資産査定(世にいう自己査定)をすることにしました。
要は、「ちゃんと返済できそうな債務者」と「返済が危うい債務者」に色分けすることで、それぞれの引当率に差を付けるのです

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

格付における債務者区分の基本イメージは以下の通りです。

【正常先】【みなし正常先】

業況が良好である先です。
黒字、資本(純資産)超過であることが前提となります。
しかし、(後編)で後述しますが銀行側の都合により小口の債務者は業況に関わらず「みなし正常先」として扱われることがあります。
また、一部の企業は直近決算が黒字・資本超過でなくても「みなし正常先」として扱われることもあります。こちらも(後編)で解説します。
結果として債務者の大部分はこの【正常先】に入ることになります。
貸倒引当率は概ね2%前後の金融機関が多いようです。
つまり、正常先に1,000万円貸した分について、20万円前後は返ってこない可能性を見越しているということです。
ちなみに、融資を申し込んだ際は基本的には前向きに検討してくれる格付水準です。

 

【要注意先】
業況が低迷している、もしくは不安定な先です。
2期以上連続での赤字や債務超過に陥っている企業が想定されます。
このコラムの(後編)で触れますが、【正常先】に返り咲くチャンスがまだ残されています。
貸倒引当率は5%前後の金融機関が多いようです。
融資を申し込んだ際には、あまり前向きには検討してもらえず、リスクの低い「保証協会付き融資(マル保)」や「有担保融資」、「他行との協調・分散融資」などを提案されます。
当然、借りられたとしても【正常先】よりも高い金利となります。

 

【要管理先】
要注意先の中でも、より丁寧な管理・監視が必要な先です。
基準は金融機関によって様々ですが、「5期以上連続赤字」や「3期以上債務超過が継続」、「継続的にリスケ(条件緩和)を実施している」などが条件だったりします。
【要注意先】は「直近決算は悪いが来期・再来期には回復しそう、もしくは努力している」という雰囲気がありますが、【要管理先】は「現状では悪化に歯止めがかからないことが実績で証明されている」といった雰囲気で判断されます。
金融機関側の譲歩(リスケ)ありきで何とか事業を継続している企業です。
貸倒比率は15%程度となることが多く、その時点で貸出金利(例えば2%×7年)が補えず全く収益化していない債権となります。
無論、融資を申し込んだとしても確かな回収原資が無ければ検討してもらえない状況といえます。

 

【破綻懸念先】
既に経営難に陥っている先です。
ここに落ちるには大きく2パターンあります。
一つ目は長らくの経営悪化から脱却できず、順当に格付が落ちてくるパターンです。
継続的な赤字計上、リスケなど既に事業として通常運転ができていない状況が長らく続き、倒産・破産が目前まで迫っているケースです。
二つ目は突発的な事故により、踊り場的に【破綻懸念先】として判定されるパターンです。
例えば、「売掛先の破産により売上代金の回収が困難になる」、「営業・経理などの全ての権限を握っていた社長が急逝したり、寝たきりになる」などにより、その企業が一時的に危機的状況に置かれるケースです。
この場合は【要注意先】や【要管理先】などの段階を飛ばして、一時的に【破綻懸念先】として認定される可能性があります。しかし、企業内での施策や金融機関との連携によりこの状況が解除されれば、格付は回復していきます。
貸倒引当率は75%前後が一般的で、この時点では金融機関は覚悟を決めているといった状況です。

 

【実質破綻先】【破綻先】
最後は2つまとめての解説となります。
2つとも既に経営は破綻状態にあり、借入金の返済は極めて困難な状況な先です。
2つの格付の違いは以下の通りです。
【実質破綻先】…延滞や回復見込みのないリスケ状態にあり、事実上返済ができていない。
また、一部の貸出について代位弁済などの処理がなされている。
しかし、破産などの法的整理の申し立てはしていない先。
【破綻先】…形式的に破綻しているか、法的整理の申し立てがされている先。
要は手続き的なことが進んでいるか否かというだけです。
いずれも貸倒引当率は100%となります。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

このように「格付」作業を行うことで、金融機関側は今期の決算でいくら貸倒引当金を計上しなければならないのかを判断しています。

当然ながら、【正常先】が大部分を占めていないと、貸倒引当金によって金融機関が赤字に陥ります。
よく新聞などで「不景気により銀行が赤字を計上」というのは、この貸倒引当金が原因です。
借入している企業の業況が悪化すれば、格付を落とさなければならず【正常先】(2%引当)が【要注意先】(5%引当)に落ちるだけで、貸倒引当金は2.5倍になってしまいます。

このような事情により、彼らには以下のようなバイアスが常にかかっているのです。
① 基本的に【正常先】にしか貸したくない
② 【正常先】→【要注意先】に落ちればその分(約3%増)は支店の収益目標から差し引かれる
例:【要注意先】になった債権額5,000万円×増額分3%=150万円
【正常先】に新たに1億円×2%で融資して6ヶ月分の利息(100万円)
銀行は6ヶ月単位で営業実績を評価します。この場合、期初に1億円の新規先を見つけても格付が落ちたダメージの方が大きいことが分かります。
実績評価上は1億円の融資が水泡に帰すのです。1億円の融資先を見つけるのはなかなか大変なのに、、、。
③ 少しのダメージで【正常先】→【要注意先】に落ちそうな企業には貸したくない。
④ むしろ【正常先】→【要注意先】に落ちたら、返済して欲しい。でも、完済したら貸したくない。
 -----!!これが雨が降ったら傘を貸さない現象!!-----
⑤ 【要注意先】に落ちそうな企業があったら、なんとか【みなし正常先】という扱いにとどめておきたい。

皆様の目の前にいる担当(支店長含む)はみんな営業員です。
支店の成績次第で、自らの人事評価が上下します。
上記のように格付が一段落ちれば、簡単に支店の収益目標が消し飛ぶ可能性もあります。
ですので、彼らは格付にとても敏感になっているのです。

とはいえ、格付を【正常先】(黒字、資産超過)に維持するのは意外と簡単ではありません。
次回の(後編)では【正常先】ないし【みなし正常先】を維持する仕組みをご紹介します。

では、次回の更新をお楽しみに!

 

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