
採用と定着、どちらを先に改善すべき?中小企業が成果を出す優先順位の決め方
「人を採っても採っても辞めていく」「求人を出しても応募が来ない」。人手不足に悩む中小企業の経営者から、よくこんな相談を受けます。そして決まって出てくるのが、「採用と定着、どちらを先に手をつければいいのか」という問いです。
限られた人手とお金で両方を一度に完璧にするのは難しいもの。だからこそ、優先順位を間違えると、せっかくの努力が空回りしてしまいます。この記事では、中小企業・個人事業主の経営者向けに、採用と定着のどちらを先に改善すべきかを見極める判断基準と、よくある失敗、現実的な進め方を整理します。なお、雇用や労働に関する制度は変わりやすいため、具体的な制度活用を検討する際は執筆時点の最新情報をご確認ください。
結論:多くの場合「定着」から手をつける
先に結論をお伝えすると、多くの中小企業では「定着」から改善するほうが効果が高いケースが目立ちます。理由はシンプルで、辞める人が多い状態のまま採用を強化しても、「採っては辞める」の繰り返しになり、採用コストばかりが膨らんでいくからです。
バケツに穴が空いたまま水を注ぎ続けるようなもので、まず穴をふさぐ(=定着を改善する)ほうが、結果的に必要な採用人数も減り、現場の負担も軽くなります。ただし、これはあくまで「多くの場合」であって、すべての会社に当てはまるわけではありません。自社がどちらのタイプかを見極めることが大切です。
自社の状況を見極める判断基準
採用と定着のどちらを優先すべきかは、次の観点で考えると整理しやすくなります。
「定着」を優先したほうがよいサイン
- 入社1年以内、とくに3カ月以内で辞める人が多い
- 採用してもすぐ欠員が出て、常に求人を出し続けている
- 退職理由に「人間関係」「教育不足」「聞いていた話と違う」が多い
- ベテランや中心メンバーが辞め始めている
「採用」を優先したほうがよいサイン
- 既存社員は長く定着しており、離職率は低い
- そもそも応募がほとんど来ず、母集団が形成できていない
- 事業拡大・新店舗などで純粋に人員を増やす必要がある
- 特定のスキルを持つ人材が不足している
離職が多いのに採用ばかり強化すると消耗戦になり、逆に定着は良いのに人が足りないなら採用に投資すべきです。まずは直近1〜2年の入社・退職の人数と理由を書き出し、自社が「穴が空いている」のか「そもそも水が足りない」のかを把握しましょう。
採用と定着はつながっている
もう一つ大切なのは、採用と定着は別々の問題ではなく、地続きだという視点です。たとえば採用の段階で「仕事内容や働き方を実態よりよく見せて」入社してもらうと、入社後のギャップで早期離職につながります。逆に、求人票の段階で自社の働き方・評価・キャリアを正直に伝えておけば、ミスマッチが減り、結果として定着率が上がります。
つまり「採用の質を上げること」が「定着の改善」にもなるのです。どちらを先にといっても、完全に切り離して考えるのではなく、採用の入口から定着までを一本の流れとして設計する意識が成果につながります。
優先順位を決めたあとの進め方
定着を改善する場合の打ち手
- 入社後30日・90日のタイミングで面談し、不安や不満を早期に拾う(オンボーディング)
- 新人が「何を・いつまでにできればよいか」が分かる育成の流れを用意する
- 退職者に率直な退職理由をヒアリングし、現場の課題を特定する
- 給与・評価が地域や同業と比べて極端に見劣りしていないか点検する
採用を改善する場合の打ち手
- 求人票のターゲットを絞り、「誰に来てほしいか」を明確にする
- 仕事内容・働き方・キャリアを実態どおり正直に書く
- 応募が来たら24時間以内に対応し、初動の早さで取りこぼしを防ぐ
- 自社の魅力(働きやすさ・成長機会など)を言語化して発信する
どこから着手すべきか整理がつかない、自社の現状分析を専門家の目で見てほしいという場合は、採用課題の整理から定着の仕組みづくりまでを一貫して支援するサービスを活用する方法もあります。
採用課題の整理から定着の仕組みづくりまで、専門家がご支援します
「業績は好調なのに採用ができない・定着しない」という悩みは、採用市場の構造的な変化が背景にあるため、現状分析と施策の優先順位付けから始めるのが近道です。V-Spiritsの採用定着支援士は、一般社団法人採用定着支援協会と連携した全国500以上の専門家ネットワーク、累計2,000社超の支援実績をもとに、労務・財務まで含めた総合的な視点で伴走します。
よくある失敗
- 離職原因を放置して採用だけ強化する:穴をふさがないまま採用しても消耗する
- 給与だけが原因と思い込む:実際は人間関係・教育・評価への不満も大きい
- 採用も定着も一度に全部やろうとする:中小企業のリソースでは分散して中途半端になる
- 「うちは特別」と現状把握を飛ばす:数字と退職理由を見ずに感覚で動いてしまう
まとめ
採用と定着のどちらを先に改善すべきかは、自社の状況によって変わります。多くの中小企業では、離職という「穴」をふさぐ定着改善から着手するほうが効果的ですが、既存社員が定着していて人員が足りない場合は採用が先になります。まずは直近の入社・退職の人数と理由を把握し、自社がどちらのタイプかを見極めること。そのうえで採用の入口から定着までを一本の流れとして設計すれば、限られた人手とコストでも着実に成果につながります。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧婚状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。
同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。
大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。
ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、数々の実績を残しています。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。
- 経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一
- 補助金・助成金支援実績600件超
- ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版(累計25万部超)
- 無料相談件数は全国から累計3,000件超
この記事を書いた人
坂井 優介(Yusuke Sakai)
起業コンサルタント® / 採用定着士 / 行政書士法人V-Spirits 補助者
1988年東京都生まれ。転勤族の父の影響で幼少期を愛知・長野・岩手・埼玉で過ごす。転入するたびに方言や文化の違いをからかわれつつも、1週間もあれば現地に溶け込む適応力を身につける。
大学在学中に公認会計士試験にチャレンジするも挫折し、アルバイト先だった埼玉の大手学習塾に就職。塾業界特有の過酷な労働環境の中でも10年間勤務を続けるが、成果を上げても給与が変わらない状況に限界を感じ、在職中に会計士試験に再挑戦。再び挫折するも、学んだ会計知識を活かせる職場を求めて転職活動を開始。2021年にV-Spiritsグループに参画し、2022年よりV-Spirits総合研究所の常務取締役に就任。
現在は、中小企業の経営者向けに補助金・助成金の支援から採用定着の仕組みづくりまで幅広く担当。「制度を使いこなす中小企業を増やす」をテーマに、現場に寄り添ったサポートを行っている。
役職:V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役 / 税理士法人V-Spirits 業務部長 / 社会保険労務士法人V-Spirits 業務部長
担当業務:経済産業省系補助金支援・厚生労働省系助成金支援・マーケティング・人事労務・採用定着支援




























