
金融機関に嫌われる決算書とは?融資が通らない理由と6つの改善ポイントを徹底解説
今回は、「金融機関に嫌われる決算書」について詳しく解説していきます。
前回は「金融機関に応援される決算書」について解説しましたが、今回はその逆――「嫌われる決算書」です。
金融機関に嫌われる決算書とは、つまり融資を受けにくい、または受けられない決算書を意味します。こうした決算書を作ってしまうと、経営者がどれほど努力しても資金繰りが安定せず、事業継続に支障をきたす可能性があります。
銀行や信用金庫などの金融機関は、数字だけでなく「経営者の信頼性」「資金管理の丁寧さ」も見ています。つまり、決算書の内容はあなたの会社の経営姿勢そのものを表す重要な資料なのです。
この記事では、金融機関が嫌う決算書の6つの特徴と、それぞれの背景・改善策を詳しく解説します。経営者として「なぜ嫌われるのか」「どうすれば改善できるのか」を理解し、信頼される決算書づくりを目指しましょう。
目次
1. 売上総利益がマイナス
通常、売上総利益(粗利益)はプラスであることが前提です。しかし、ごく稀に売上総利益がマイナスの企業が存在します。
これは、販売価格よりも仕入れや製造にかかるコストが上回っている状態、つまり「原価割れ販売」を意味します。
このような状態が続くと、どれだけ売上があっても赤字が拡大していきます。金融機関は「このビジネスモデルでは継続的に利益を出せない」と判断し、融資を見送る可能性が極めて高くなります。
改善のポイント
- 原価率の分析:商品・サービスごとの原価構造を分析し、どの取引が利益を圧迫しているのかを明確にしましょう。
- 価格戦略の見直し:過度な値引き競争を避け、自社の付加価値を高める営業戦略を構築します。
- 高収益モデルの育成:利益率の高い商品やサービスへのシフトも有効です。
金融機関は「売上よりも利益」を重視しています。
数字の裏側にあるビジネスモデルを説明できるようにしておくと、担当者からの信頼も高まります。
2. 債務超過である
債務超過とは、資産より負債が多く、純資産(自己資本)がマイナスになっている状態を指します。
この状態では、たとえ売上が伸びていても「返済能力がない」と見なされ、融資は非常に難しくなります。
金融機関は「会社を倒産させないこと」を最優先に考えています。そのため、資本が薄くリスクの高い企業への貸出は避ける傾向があります。
改善のポイント
- 黒字転換を最優先に:赤字部門の縮小・撤退を検討し、利益体質の改善を図りましょう。
- 増資・出資の検討:外部からの資本調達で自己資本比率を高めることも有効です。
- 財務改善計画の作成:中期的な財務改善計画を立て、金融機関に共有すると前向きに見てもらえます。
金融機関は「すぐに黒字にならなくても、改善に向けた行動を取っている会社」を評価します。計画性と誠実さを見せることが何より重要です。
3. 役員貸付金が多い
役員貸付金とは、会社から経営者や役員へ貸し付けたお金のことです。
これは会社の資金が私的に流用された可能性を示し、金融機関が最も嫌う項目の一つです。
金融機関は「貸したお金を会社ではなく個人で使われてしまうのではないか」と疑います。
役員貸付金が多い会社は、経営管理が甘く、資金の流れが不透明だと判断されるのです。
改善のポイント
- 役員貸付金はできるだけ早期に返済する
- 会社と個人の資金を明確に分離し、経理担当がダブルチェックする仕組みを整える
- 融資相談時には「今後は発生させない」と明確に説明できるようにしておく
経営者の姿勢が信頼回復のカギです。数字だけでなく、経営者の説明や行動が審査の印象を左右します。
4. 売掛金が多い
売掛金が多いこと自体は問題ではありませんが、過剰に多いと「回収できていない資産」と見なされます。
特に、回収期間が長期化している場合、金融機関は「不良債権ではないか」と疑念を抱きます。
また、売掛金が偏っている(特定の取引先への依存度が高い)場合、その1社が倒産しただけで資金繰りが崩れるリスクもあります。
改善のポイント
- 回収サイトを明確にし、支払い遅延がある取引先とは契約条件を見直す
- 定期的に売掛金管理表をチェックし、古い売掛金は回収のアクションを取る
- 回収不能の可能性がある債権は早期に処理し、貸倒引当金を適切に計上する
金融機関は、「現金化できる資産」を重視します。売掛金の管理体制を整えておくことで、融資審査の際にもプラスの印象を与えられます。
5. 仮払金・立替金が多い
仮払金・立替金は、使途が不明確な資金を意味します。
金融機関にとって、これほど不安を感じる科目はありません。なぜなら、「何に使われたのか分からないお金」は経営の不透明さを示すからです。
これが多い企業は、内部統制が弱く、経理処理がずさんである可能性が高いと判断されます。
改善のポイント
- 仮払金・立替金は月次決算時に必ず精算する
- 使用目的・取引先・支払日を明記して、経理ルールを社内で統一
- 会計ソフトで仕訳時にメモ欄を活用し、可視化を徹底する
「お金の流れを説明できること」が信頼を得るための基本です。日頃から資金の透明化を意識しておきましょう。
6. 税金を滞納している
税金の未納・滞納・延滞は、金融機関にとって大きな警戒サインです。
税金を滞納しているということは、「資金繰りが逼迫している」もしくは「経営姿勢に問題がある」と判断されます。
税務署には金融機関よりも優先して回収できる権限(優先弁済権)があります。つまり、融資をしても税務署が先に資金を押さえてしまう可能性があり、貸す側にとっては極めてリスクが高いのです。
改善のポイント
- 納税スケジュールを資金繰り表に組み込み、計画的に支払いを行う
- 支払いが難しい場合は税務署と「分納交渉」を行い、誠意を見せる
- 今後の資金繰りを改善し、滞納を繰り返さない体制を整える
金融機関は「税金をきちんと納める会社」を高く評価します。納税は単なる義務ではなく、信頼を得るための経営行動なのです。
まとめ:信頼される決算書を作るために
以上の6つの特徴のうち1つでも該当すれば、金融機関は融資に慎重になります。
2つ3つと重なる場合、解消しない限り融資は難しいと考えておきましょう。
逆に、利益を確保し、資金の使途が明確で、税務面も健全な企業は金融機関から「安心して貸せる」と評価されます。
つまり、決算書は「数字で語る信頼の証」なのです。
毎月の試算表やキャッシュフローを見直し、会計データを経営判断に活かす習慣をつけましょう。小さな改善の積み重ねが、融資を受けやすい会社づくりにつながります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 債務超過でも融資を受けられるケースはありますか?
はい。明確な再建計画や黒字化の見込みがあれば、例外的に融資が通ることもあります。
特に「新規大型契約の獲得」や「コスト削減計画」など、改善の根拠を示すことで前向きに評価されます。
Q2. 決算書はどのタイミングで見直すべきですか?
年に一度の決算時だけでなく、月次・四半期ごとのチェックをおすすめします。早期に課題を発見すれば、次の決算で修正が間に合います。
Q3. 金融機関が最も重視するのはどの部分ですか?
「返済能力(キャッシュフロー)」と「経営者の信頼性」です。数字と同時に、経営者がどれだけ現実を把握しているか、どのような対策を取っているかが評価されます。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。



























