
介護事業の創業融資相場と日本政策金融公庫の活用
高齢化を背景に介護事業の開業を志す方は増えていますが、デイサービスや訪問介護、グループホームなどは、開業前にまとまった資金が必要になります。そこで多くの方が活用するのが、日本政策金融公庫(以下、公庫)の創業融資です。本記事では、介護事業の創業融資はいくらくらいが相場なのか、公庫の融資がなぜ介護事業に向いているのか、そして介護事業ならではの審査のポイントを、これから起業する方にもわかりやすく整理します。なお、金利や融資限度額などの条件は改定されることがあるため、具体的な数字は申込前に公庫の公式情報で確認してください。
介護事業の創業融資、いくら借りられる?相場の考え方
「いくら借りられるか」は事業規模や自己資金によって変わるため一律には言えませんが、考え方の軸は共通しています。借入額は「必要な資金の総額」から「用意できる自己資金」を差し引いて算出するのが基本です。介護事業は、サービス形態によって必要資金の幅が大きいのが特徴です。たとえば訪問介護は事務所と人員が中心で初期費用を抑えやすい一方、デイサービスやグループホームは物件の改装・設備に相応の資金がかかります。
介護事業の開業に必要な資金の内訳
- 設備資金:物件の取得・改装費、送迎車両、介護機器、什器備品など。デイサービスや施設系では大きな割合を占めます。
- 運転資金:人件費、家賃、水道光熱費など、売上が安定するまでの運営費。介護事業はここが特に重要です(後述)。
- 指定申請・開業準備の費用:介護保険サービスの指定を受けるための準備や、当初の採用コストなど。
自己資金は多いほど審査で有利になりやすく、借入希望額とのバランスも見られます。一般に、創業時はある程度の自己資金を準備しておくことが望ましいとされています。
日本政策金融公庫が介護事業の創業融資に向く理由
公庫は政府系の金融機関で、民間金融機関がまだ取引実績のない創業期の事業者にも融資を行う役割を担っています。これから介護事業を始める方にとって、次の点でメリットがあります。
- 創業前・創業直後でも申し込める:実績がない段階でも、事業計画の中身で審査してもらえます。
- 無担保・無保証人で利用できる制度がある:要件を満たせば、代表者保証に依存しない形での借入を検討できます。
- 創業者向けの融資制度が整っている:新たに事業を始める方や事業開始後まもない方を対象とした融資制度が用意されています。
創業向けの融資制度を確認する
公庫には、新規開業・創業を予定している方や事業開始後一定期間内の方を対象とした融資制度があります。制度名・要件・限度額・金利は見直されることがあるため、検討の段階で公庫の公式サイトや窓口で最新の内容を確認することが大切です。自分のケースでどの制度が使えるか判断に迷う場合は、専門家に相談しながら進めると安心です。
介護事業ならではの融資審査のポイント
介護事業の創業融資には、他業種にはない特有の論点があります。ここを事業計画で押さえられているかが、審査の通りやすさを大きく左右します。
介護報酬の入金が遅れる前提で運転資金を厚めに
介護事業の売上の多くは介護報酬で、サービス提供月から実際の入金まで約2か月のタイムラグがあります。つまり、開業してサービスを提供しても、その分の収入が手元に入るのは2か月ほど先です。その間も人件費や家賃は発生するため、運転資金を厚めに見込んでおくことが欠かせません。この入金サイクルを理解したうえで資金計画を立てていると、審査でも「事業の特性を理解している」と評価されやすくなります。
人員基準・指定の見通しを示す
介護保険サービスを行うには、人員・設備・運営の基準を満たして指定を受ける必要があります。必要な人材(管理者・サービス提供責任者・介護職員など)を確保できる見通しや、指定申請のスケジュールを事業計画に盛り込むと、計画の実現性が伝わります。
経営者の経験と事業計画の整合性
介護や福祉、あるいは経営の経験は、計画の信頼性を高める材料になります。経験が十分でない場合でも、人員体制や外部の専門家の関与などで補える点を示すことが有効です。売上予測は「定員×稼働率×単価」のように根拠をもって組み立て、楽観的すぎない数字にすることが大切です。
創業融資を成功させるための準備
- 自己資金を計画的に準備する:通帳でお金の流れを示せると、計画的に準備してきたことが伝わります。
- 事業計画書を具体的に作り込む:誰に・どんなサービスを・どう収益化するかを、数字の裏付けとともに書きます。
- 資金使途を明確にする:設備資金と運転資金の内訳をはっきりさせ、見積書などの根拠を添えます。
- 面談に備える:公庫では面談があります。事業への理解と熱意、数字の説明ができるよう準備します。
「必ず借りられる」という性質のものではありませんが、介護事業の特性をふまえた計画と十分な準備があれば、融資の可能性は高められます。
よくある質問(FAQ)
自己資金が少なくても介護事業の創業融資は受けられますか?
自己資金が少ないと審査では不利になりやすいですが、ゼロでなければ可能性がなくなるわけではありません。事業計画の精度や経験、資金使途の妥当性など、総合的に判断されます。まずは自分のケースで何が強みになるかを整理することが大切です。
補助金や助成金と融資は併用できますか?
制度の趣旨が異なるため、要件を満たせば融資と補助金・助成金を組み合わせて活用することも考えられます。ただし補助金は後払いが基本のため、入金までの資金は融資などでつなぐ必要がある点に注意が必要です。
融資の金利や限度額はどのくらいですか?
金利や限度額は制度や情勢によって変わるため、本記事では具体的な数字を断定しません。検討時点の最新の条件を、公庫の公式情報で必ず確認してください。
まとめ
介護事業の創業融資は、サービス形態によって必要資金が大きく異なり、相場は「必要資金−自己資金」で考えるのが基本です。日本政策金融公庫は、実績のない創業期でも事業計画で審査してもらえるため、介護事業の立ち上げと相性の良い選択肢です。審査では、介護報酬の入金が約2か月遅れる前提での厚めの運転資金、人員・指定の見通し、根拠ある売上予測がカギになります。金利や限度額などの条件は変わるため最新情報を確認しつつ、準備に不安があれば早めに資金調達の専門家へ相談することをおすすめします。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























