
清掃業の車両と機材は創業融資に含められるか|設備資金として通すための4ステップ
清掃業・ハウスクリーニングで独立するとき、最初にまとまった金額が出ていくのが軽バンなどの車両と、高圧洗浄機・ポリッシャー・バキュームといった機材です。「これは創業融資で借りられるお金に含まれるのか」という質問は、実際に見積を取り始めた段階でよく出てきます。
結論を先に書くと、含まれる・含まれないという一律の線引きがあるわけではありません。日本政策金融公庫の案内は資金使途を設備資金と運転資金の2つに分けて示しているだけで、品目を一覧で列挙しているわけではないからです。決まるのは「その支出が事業に必要だと説明できているか」と「金額の根拠が示せているか」で、そこは申請する側の書き方の問題になります。
この記事では、開業届は出したものの本格稼働はこれから、という段階の個人事業主の方に向けて、車両と機材を資金使途に落とし込む手順を4つのステップで整理します。数字は執筆時点のもので、制度や利率は変わることがあります。
ステップ1:買うものを設備資金と運転資金に分ける
最初にやるのは、必要なお金を2つの箱に分ける作業です。繰り返し使う設備を買うためのお金が設備資金、事業を回していくためのお金が運転資金にあたります。清掃業の場合、車両と清掃機材は前者、洗剤などの消耗品や外注費は後者に置くのが素直な整理です。人件費や事業活動に必要な経費として運転資金の対象になります。
この区分にこだわる理由は、返済の条件が変わるからです。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例では、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内とされています。据置期間はいずれも5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いになります。
融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。これは上限であって目安ではないため、この枠から逆算して申込額を決める組み立てにはなりません。あくまで、必要なものを積み上げた結果がいくらか、という順番です。
なお、個別の支出が資金使途として認められるかどうかで迷う場合は、その場で判断せず申請先や専門家に確認しながら計画を整えていく形になります。
ステップ2:見積書で金額の根拠をつくる
設備資金は、見積書がそのまま金額の根拠になります。ここで抜けやすいのが、本体価格だけを並べてしまうことです。車両にしても機材にしても、買ってすぐ現場で使える状態になるとは限りません。実際に稼働させるまでに必要な費用が見積に入っていないと、資金使途の内訳に書けず、不足分は自己負担か、あらためて相談し直すことになります。
中古の車両や中古の機材を選ぶ場合も、金額の根拠になる見積は必要です。新品より安いという理由だけでは、いくら借りたいのかを説明できません。
あわせて整理しておきたいのが、開業前にすでに自費で買ったものです。創業前に自費で取得した資格や、設備・備品の購入、テストマーケティングの費用などは、みなし自己資金として一定の範囲で評価されることがあります。清掃業なら、独立を決めてから買った高圧洗浄機や作業用の機材、取得した資格の費用が該当し得ます。領収書は保管しておいてください。
ステップ3:買うかリースかを決める
車両と機材は、購入ではなくリースという選択肢もあります。初期費用を抑えられる一方で、リースには次のようなデメリットもあります。
- 連帯保証人が必要になる
- 機器の所有権が持てない
- 契約期間中の中途解約が難しい
- 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い
清掃業は機材の稼働時間が長く、現場によっては扱いも荒くなります。修理負担がどちら側になるかは、契約前に確認しておく部分です。融資とリースのどちらが有利かは、資産計上の考え方や資金繰りの状況によっても変わるため、賃貸借費用の負担も含めて税理士や金融機関に相談しながら判断する流れになります。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
審査する側から見ると、設備の話で物足りなく感じるのは、買うものの説明で止まっている計画です。この投資でどれだけ売上が上がり、収益がどれだけ出るのかまで書いてあると、話が早くなります。製造業は機械の生産能力で示しやすい一方、店舗や小売は示しにくい部分があります。清掃業の車両は、そこを説明しやすい側にある設備だと思います。
ステップ4:申請前に4つの前提を確認する
車両と機材の見積が固まったら、申請の前提そのものを確認しておきます。清掃業の開業情報には古い制度を前提にした説明が残っていることがあり、そのまま準備を進めると噛み合わなくなります。
制度の名前
公庫の主力の創業融資は、現在は「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月までの名称は「新規開業資金」で、2024年4月から現在の名称に改称・拡充されました。無担保・無保証の特例だった「新創業融資制度」は2024年3月に廃止されており、いまも現役の制度として説明している情報は時点が古いことになります。
自己資金
自己資金の額は審査の重要な判断材料ですが、制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。「総額の10分の1が必須」といった説明は、旧制度にあった要件が残っているものです。額や割合の決まりはないものの、自己資金が多いほど審査で有利になりやすい、という理解が実態に近くなります。原則として面談時点で口座に確認できる形にしておきます。
決算書
創業融資だから決算書は見ない、ということはありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていればその決算書が確認されます。代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象です。審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。
スケジュールと利率
申請から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間から1か月程度が目安です。創業計画書・自己資金のエビデンス・見積書などを整える時間を含めると、合計で2か月程度を見ておくと安全です。2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。
車両の納車時期がこのスケジュールと合っているかも、あわせて見ておく部分です。
申請前チェックリスト
ここまでを1枚に落とすと、次のようになります。
- 車両・清掃機材と、消耗品・外注費・人件費を設備資金と運転資金に分けたか
- 設備資金は、現場で使える状態になるまでの費用を含めて見積を取ったか
- 中古で揃える分にも、金額の根拠になる見積があるか
- 開業前に自費で買った機材・資格取得費の領収書を保管しているか
- 購入とリースを、賃貸借費用とデメリット4点まで含めて比べたか
- 参照している開業情報が、廃止済みの制度や旧要件を前提にしていないか
- 納車・納品の時期が、申請から実行までの期間と合っているか
まとめ
清掃業の車両と機材は、「含まれるか」という問いの立て方より、「必要だと説明できる形になっているか」で見たほうが準備が進みます。設備資金と運転資金に分け、見積で金額の根拠をそろえ、購入とリースを比べ、古い制度情報に引きずられていないかを確認する。この4つを踏んでおけば、面談で聞かれる内容ともかみ合います。
本文の数字と制度の内容は執筆時点の情報です。利率や制度は改定されることがあるため、実際の申請では日本政策金融公庫の公式情報や申請先の窓口で最新の内容を確認してください。資金使途の分け方や見積のそろえ方で迷う段階からでも、V-Spiritsでご相談いただけます。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
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- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























