
2号店の出店資金は、1号店で使った制度の枠がどれだけ残っているかで決まります
フランチャイズに加盟して1号店が回り始めると、本部から2号店の話が出てきます。そのとき最初に調べるのは「2号店の出店資金はいくらか」という総額でしょう。ところが同じ業態・同じ規模で出すなら、必要な総額そのものは1号店とそれほど変わりません。変わるのは、その総額をどこから引いてこられるかのほうです。
創業向けにつくられた融資や保証の制度には、店舗数ではなく「事業を始めてから何年経ったか」で線が引かれているものがあります。1号店のときにその枠をどれだけ使ったかで、2号店のために自分で用意すべき額は変わります。開業して数年以内の個人事業主が2号店を考えるとき、制度の側から必要額を逆算する順番を整理します。数字は2026年9月時点の公表内容にもとづくもので、制度は改定されることがあります。
創業向けの制度は、店舗数ではなく事業を始めてからの年数で線が引かれています
2号店を出す段階になると、自分はもう創業者ではないと感じるかもしれません。ただ、制度が見ているのは店舗が1つか2つかではなく、事業を始めてからの経過年数です。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、利用できる方を「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」としています。資金の使いみちは「新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金」と書かれており、事業開始後の投資が最初から想定されています。
融資限度額は7,200万円で、うち運転資金は4,800万円です。返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内で、据置期間はいずれも5年以内とされています。ただしこれは制度上の枠であって、実際に適用される利率や据置期間、返済期間は審査のうえ金融機関が決定します。申込者が選んで決められるものではないので、枠の数字をそのまま自分の返済計画に置かないでください。
もうひとつ見落としやすいのが、この7,200万円は1号店の分と別に用意された枠ではないという点です。1号店の借入が残っていれば、その残高を抱えた状態で2号店の話をすることになります。総額をいくら積むかを考える前に、いま何がどれだけ残っているかを先に並べてください。
💬 執筆者の小峰から一言
2号店のタイミングで法人にしたほうがよいか、とよく聞かれます。制度の当てはまりだけで言えば、法人成り(同じ事業の法人化)は原則として創業融資の対象外で、通常の融資の扱いになります。一方、いま営んでいる事業とは別の事業を行う法人を新しく設立する場合は、その法人にとっては創業にあたります。どちらに当たるかで入口が変わるので、法人の形を決める前に整理しておくと話が早いです。
信用保証協会の創業関連保証は5年未満で線が引かれ、限度額は合計で見られます
民間の金融機関から借りる場合に使われる信用保証協会の保証にも、創業を支える枠があります。創業関連保証の対象は7つ挙げられており、そのうち「事業を営んでいない個人が事業を開始してから5年未満である」「事業を営んでいない個人が設立した法人で、設立から5年未満である」「事業を営んでいない個人が開始した事業を法人化し、個人創業時から5年未満である」の3つは、すでに事業を始めている方が該当し得ます。ここでも判定の軸は店舗数ではなく年数です。
そのうえで押さえたいのが保証限度額の見え方です。全国信用保証協会連合会は、創業関連保証・再挑戦支援保証・スタートアップ創出促進保証制度は併用でき、併用した場合はその合計で3,500万円が保証限度額になるとしています。3つそれぞれに3,500万円があるわけではありません。1号店の開業時にこの枠を使っていれば、2号店で使えるのは残りの部分だけです。自己資金をいくら積むかの答えは、この残高を確かめたあとにしか出てきません。
認定特定創業支援等事業の証明書は、期限と利率の扱いを変えます
市区町村が実施する創業支援には、証明書の形で制度に効いてくるものがあります。日本政策金融公庫は、創業塾や創業セミナーなど(産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業)を受け、認定市区町村が発行する証明書を取得した方について、有効な証明書の場合に限り特別利率の対象になるとしています。対象になる資金からは原則として土地にかかる資金が除かれます。
信用保証協会の側では、証明書は期限の長さに効きます。創業関連保証は、事業を開始する具体的計画があることを1か月以内、法人を設立して事業を開始する計画なら2か月以内としていますが、認定特定創業支援等事業により支援を受けて創業する方はこれが6月以内になります。1号店のときにこの証明書を取っていたか、いま有効かどうかで、2号店の準備に使える時間が変わります。
1号店と本当に違うのは、手元に決算書や試算表があることです
制度の枠の話が片付いたら、次は見られ方です。創業前であれば実績で裏づけられない分、計画の具体性や自己資金、斯業経験で見られる比重が上がります。これに対して2号店を考える段階では、決算書または試算表が手元にあります。これは実在する評価材料として扱われ、計画どおりに推移していれば計画の実現可能性の裏づけになり、逆に赤字や計画との乖離が続いていれば説明を求められます。実績は両方向に効く材料です。
まだ決算を迎えていない時期であれば、試算表や月次の売上推移が同じ役割を果たします。1号店の数字がそろっていない段階で2号店の話をするなら、月ごとの売上と経費の推移を説明できる形にしておくところから始まります。
審査では、業務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。2号店の計画では、この「資金使途と調達額の整合」が1号店より細かく見られます。1号店の実績から2号店の売上をどう見込んだのか、その見込みで2本分の返済を賄えるのか、という順で説明が必要になるためです。
用意すべき額は、設備資金と運転資金に分けたところから決まります
総額から自己資金の割合を逆算する考え方は、いったん脇に置いてください。制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。先に決まるのは資金の区分のほうです。
設備資金は、内装工事や機器・什器のように長く使う資産に充てる資金です。土地や建物の取得も設備資金にあたる支出なので、創業融資の対象になります。取得を前提に検討する場合は、物件を押さえる前に申込先へ相談してください。運転資金は事業を回していくために必要な資金で、人件費や役員報酬は事業活動に必要な経費として運転資金の対象になります。
この区分が効いてくるのは、返済期間が設備資金20年以内、運転資金10年以内と分かれているためです。同じ金額を借りても、どちらの区分で組むかで毎月の元金返済額が変わります。2号店の見積を受け取ったら、金額の合計を見る前に、どの行が設備でどの行が運転かを分けるところから始めてください。自分で用意する額は、その内訳と、先に確かめた制度の残り枠を突き合わせたところに出てきます。
2号店の準備を動かす順番
まとめると、確かめる順番は次のようになります。第一に、事業を始めてから何年経ったかを数え、公庫のおおむね7年以内と保証協会の5年未満のどちらに当てはまるかを見ます。第二に、1号店で使った借入と保証の残高を並べ、3,500万円の枠がどれだけ残っているかを確かめます。第三に、認定特定創業支援等事業の証明書があるか、有効かを確認します。第四に、2号店の見積を設備資金と運転資金に分けます。
ここまで並べてはじめて、自分で用意すべき額が数字になります。実際に適用される利率や返済期間、据置期間は審査のうえ金融機関が決定するものなので、枠の数字を前提に計画を固めきらず、資料をそろえた段階で申込先に相談してください。個別の資金使途の判断や法人の形については、専門家に確認しながら整えると進めやすくなります。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























