
学習塾・個別指導塾の開業融資|必要資金と申請の流れ
「学習塾を開きたいが、自己資金だけでは足りない」「個別指導塾の開業に創業融資は使えるのか」——独立を考える指導者の方から、こうしたご相談を多くいただきます。学習塾は在庫を抱えず比較的少ない資金で始められる業種ですが、それでも物件取得や内装、開業前の運転資金を合わせると数百万円規模の準備が必要になります。本記事では、起業直後の個人・中小規模での開業を前提に、学習塾・個別指導塾の開業にかかる費用の目安、創業融資でいくら借りられるか、自己資金の考え方、申請の流れまでを実務目線で解説します。
※本記事の制度内容は2026年6月時点の情報です。融資制度は改定されることがあるため、申請前に必ず日本政策金融公庫など公式の最新情報をご確認ください。
学習塾・個別指導塾の開業にかかる費用の目安
学習塾の開業資金は、自宅の一室を使うのか教室を賃貸するのか、自分で立ち上げるのかフランチャイズ(FC)に加盟するのかで大きく変わります。一般的な目安は次のとおりです。
- 自宅開業・個人立ち上げ:50万〜150万円程度(机・椅子・教材・最低限の広告)
- 賃貸教室・個人立ち上げ:200万〜500万円程度
- フランチャイズ加盟:500万〜800万円程度
賃貸で個別指導塾を開く場合の主な内訳は、物件取得費(保証金・礼金・仲介手数料)が100万円前後、机や仕切り・パソコン・コピー機などの備品設備費が100万〜200万円、教材費が20万〜40万円、開業時の広告宣伝費が50万円程度です。フランチャイズの場合はこれに加盟金100万〜300万円、保証金50万円前後、研修費60万円ほどが上乗せされます。
見落としがちなのが開業後の運転資金です。学習塾は生徒が集まり月謝収入が軌道に乗るまで数か月かかるため、その間の家賃・人件費・広告費を回す資金を初期費用とは別に確保しておく必要があります。半年分の固定費を運転資金として見込んでおくと安心です。
学習塾の開業で創業融資はいくら借りられる?
学習塾の開業資金を自己資金だけでまかなえない場合、まず検討したいのが日本政策金融公庫(公庫)の創業融資です。公庫は民間金融機関が貸しにくい創業期の事業者に積極的に融資する政府系金融機関で、実績のない開業時でも申し込めるのが特徴です。
かつての「新創業融資制度」は2024年3月で廃止され、現在は「新規開業・スタートアップ支援資金」に引き継がれています。この制度の主なポイントは次のとおりです。
- 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
- 返済期間:設備資金は最長20年以内、運転資金は最長10年以内(2024年度の改正で7年から延長)
- 据置期間:最長5年以内(従来の2年から延長)
もちろん限度額いっぱいを借りられるわけではなく、実際の融資額は事業計画の妥当性と自己資金の額によって決まります。学習塾のような小規模開業では、数百万円〜1,000万円程度の融資が一つの目安になります。据置期間を活用すれば、開業直後の生徒がまだ少ない時期は元金返済を据え置き、利息のみの支払いにとどめることもできるため、資金繰りの面で大きな助けになります。
創業融資は申請から着金まで1〜1.5か月程度かかります。物件契約のタイミングと融資実行のタイミングがずれると資金がショートしかねないため、スケジュールには余裕を持たせましょう。
学習塾の創業融資で自己資金はどのくらい必要か
新規開業・スタートアップ支援資金では、かつての「融資希望額の10分の1以上の自己資金」という要件は撤廃されました。制度上は自己資金ゼロでも申し込めます。ただし実際の審査では、自己資金の額は依然として重要な判断材料です。
日本政策金融公庫総合研究所の調査では、開業時の資金調達額に占める自己資金の割合は平均で2割前後とされています。学習塾の場合も、開業資金総額の2〜3割程度の自己資金を用意できると審査で説得力が増します。たとえば500万円の開業資金なら、100万〜150万円程度の自己資金が一つの目安です。
注意したいのは、自己資金は「コツコツ貯めてきたお金」であることが評価される点です。家族から一時的に借りて口座に入れただけの、いわゆる「見せ金」は通帳の動きから見抜かれます。毎月の積立履歴が通帳に残っている自己資金が、最も評価されます。開業を決めたら、計画的に自己資金を準備し始めることが融資成功の近道です。
学習塾の創業融資申請の流れ(5ステップ)
創業融資はおおむね次の流れで進みます。
- ステップ1:事業計画・資金計画の作成……どんな塾を、どこで、どのくらいの規模で運営し、いつ黒字化するかを数字に落とし込みます。
- ステップ2:創業計画書・必要書類の準備……公庫所定の創業計画書、見積書、物件資料、自己資金を示す通帳のコピーなどを揃えます。
- ステップ3:公庫へ申し込み……窓口またはインターネットで申し込みます。
- ステップ4:面談(審査)……担当者と面談し、事業内容・返済の見通し・自己資金の経緯などを説明します。
- ステップ5:融資決定・契約・着金……審査通過後、契約手続きを経て指定口座に入金されます。
申し込みから着金まで1か月前後が目安です。物件の契約や内装工事の発注は、融資の見通しが立ってから進めると安全です。
事業計画書で公庫の担当者が見るポイント
学習塾の創業融資では、事業計画書(創業計画書)の完成度が結果を大きく左右します。担当者が特に重視するのは次の点です。
教育・指導の経験
公庫は申込者がその事業を遂行できるかを重視します。学習塾なら、塾講師・教員・家庭教師など教育に携わった経験は強い加点材料です。経験を具体的な年数や指導実績として書きましょう。
立地と地域ニーズの裏付け
「なぜこの場所で開くのか」を、商圏内の小中学生の人口、競合塾の数、近隣校の状況などのデータで示せると説得力が高まります。地域に必要とされている事業だと伝えることが重要です。
生徒数・月謝に基づく現実的な売上計画
売上は「生徒数×月謝」で決まります。開業初月から満席を前提にした計画は信用されません。1年目は控えめな生徒数から始まり、徐々に増えていく現実的な推移を示し、その根拠(チラシ・紹介・体験授業からの入会率など)を添えましょう。
よくある質問(FAQ)
自己資金なしでも学習塾の創業融資は受けられますか?
制度上は自己資金ゼロでも申し込めますが、審査では自己資金の有無・経緯が見られます。現実的には開業資金の2〜3割程度の自己資金があると有利です。
フランチャイズ加盟金は創業融資の対象になりますか?
事業に必要な設備資金として、加盟金や研修費も融資対象に含められるのが一般的です。FC本部の契約内容や見積書を揃えて申請しましょう。
創業融資と補助金は併用できますか?
融資(借入)と補助金(原則返済不要)は性質が異なり、併用は可能です。ただし補助金は後払いが基本のため、つなぎ資金として融資が必要になるケースもあります。
まとめ
学習塾・個別指導塾の開業は、業態によって50万円程度から800万円程度まで幅がありますが、自己資金で足りない部分は日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」などの創業融資で補えます。融資を成功させる鍵は、教育経験・立地の裏付け・現実的な売上計画を盛り込んだ事業計画書と、計画的に積み上げた自己資金です。開業スケジュールと資金繰りには余裕を持たせ、融資の見通しが立ってから物件契約を進めましょう。資金計画や事業計画書の作り方に不安がある場合は、創業融資に詳しい専門家に早めに相談することをおすすめします。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























