
QRオーダーとセルフオーダー端末、補助金で見られる費目はどう違うのか
「セルフオーダーを入れたいのですが、補助金は使えますか」という問い合わせは、飲食店でも小売店でもよく届きます。ところが同じ言葉で語られていても、卓上に貼った二次元コードをお客様が自分のスマートフォンで読み取る方式と、店側がタブレットや据置端末を各テーブルに置く方式とでは、店が買うものがまるで違います。そして補助金の制度は、店が何を買うのかを見て対象かどうかを判定します。
この記事では、QRオーダーと端末型のセルフオーダーを導入方式で割り、それぞれどの制度の入口に立てるのかを整理します。数字はいずれも2026年8月時点の情報で、申請時は最新の公募要領をご確認ください。
同じ「セルフオーダー」でも、店が買うものは同じではありません
まず言葉を割ります。QRオーダーは、テーブルに二次元コードを掲示し、来店客が自分の端末でメニューを開いて注文する仕組みです。店が用意するのは注文システムの利用契約と卓上の掲示物、店内の通信環境くらいで、機械らしい機械はほとんど増えません。
一方、端末型のセルフオーダーは、店がタブレットや専用の注文端末を購入または借り、テーブルの数だけ配置します。厨房側のプリンターや会計システムとの接続機器が伴うこともあります。こちらは見積書に「機械装置」と読める行がはっきり並びます。
この差は、店内の運用だけでなく申請できる制度を左右します。公募要領は「QRオーダー」「セルフオーダー」といった商品名では書かれておらず、ソフトウェア購入費、クラウド利用料、機械装置・システム構築費といった経費区分で書かれているためです。どちらの方式を選ぶかを先に決めると、制度の候補は自然に絞られていきます。
比較軸1:費目がソフト寄りなら、デジタル化・AI導入補助金から見ます
QRオーダーのように、買うものがシステムの利用権に寄っている投資では、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)が最初の候補になります。この制度の対象経費には、ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、設定・研修・マニュアル作成・保守サポートなどの導入関連費が含まれます。月額課金型の注文システムを入れる計画とは、経費の形が素直にかみ合います。
補助上限は通常枠が450万円、インボイス枠が350万円、複数者連携デジタル化・AI導入枠が3,000万円です(2026年8月時点)。前提として、事務局に登録されたIT導入支援事業者の支援を受けて申請し、導入するツールも登録品であることが求められます。使いたいシステムが登録されているかどうかは、方式を決める段階でベンダーに確認しておくと手戻りが減ります。
気をつけたいのはハードウェアの扱いです。PCやタブレット単体の購入は対象外で、対象ソフトとセットになる類型で一部が対象になるという整理です。端末型を「タブレット代だけこの制度で」と考えると、想定した金額が出ないことがあります。
💬 執筆者の三浦から一言
「QRオーダーの補助金はどれですか」という探し方をされることがありますが、公募要領の側にその商品名は載っていません。制度が見ているのは、見積書の費目がソフトウェア購入費なのか機械装置費なのかという区分です。読者側の呼び名と制度側の呼び名はそろっていないので、商品名から制度を探すより、見積の内訳を先に確定させるほうが候補は早く絞り込めます。
比較軸2:省力化投資補助金(一般型)は、機械装置とオーダーメイド性の両方を見ます
端末型で機械装置が並ぶ場合、中小企業省力化投資補助金(一般型)が視野に入ります。ただしこの制度には、通り抜けにくい要件が2つあります。
1つ目は、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れる必要があるという条件です。テーブル用のタブレットは1台あたりの単価がこの線を下回ることが多く、台数を増やして総額を積み上げても、単価の条件は満たせません。
2つ目はオーダーメイド性です。対象になるのは、ICT・IoT・AI・ロボット等を活用した専用設備等で、省力化に資する汎用設備を複数組み合わせることでより高い省力化効果や付加価値を生み出す場合、または事業者の導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合には、汎用設備でもオーダーメイド設備とみなされます。逆に、単に汎用設備を単体で導入する事業は対象外です。単価50万円の条件を満たしていても、それだけでは足りないという整理になっています。
端末型であっても、卓数分のタブレットをそろえるだけの計画では入口に立ちにくく、注文端末・厨房側の出力機器・会計側の仕組みをどう組み替えるのかまで含めた設計が要ります。さらに3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画が求められ、賃上げ目標の未達時には達成率に応じて返還が発生しうる制度です。ここまで踏み込む投資かどうかは、方式の選択と同じ場面で判断しておきたいところです。
比較軸3:カタログ注文型には、登録製品と共同申請という前提があります
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は、公的に登録された省力化製品から選んで導入する制度です。一般型のように計画で独自性を示す必要がない分だけ進め方は簡素ですが、前提が2つあります。
1つは、カタログに登録された省力化製品を導入することが前提である点です。使いたい注文システムや端末がカタログに載っていなければ、この入口は選べません。もう1つは、中小企業等が販売事業者と共同で申請するという点で、単独申請は原則としてできません。
補助上限は賃上げ計画の内容や従業員規模によって変わるため、金額を先に当てにせず最新の公募要領で確認してください。労働生産性を年平均3.0%以上向上させる計画が必要で、計画未達の場合は減額の規定がある点も、一般型(未達時は返還がありうる)との違いになります。
比較軸4:小規模事業者持続化補助金は販路開拓から入ります
QR方式で機械装置がほとんど出てこない場合、もう1つの選択肢が小規模事業者持続化補助金です。ただしこの制度の主題は販路開拓であり、省力化そのものが主役の申請とは相性が変わります。
第20回公募(公募要領 第7版・2026年5月27日公開)では、補助率2/3、補助上限50万円が基本で、インボイス特例で50万円、賃金引上げ特例で150万円が上乗せされ、両方の要件を満たすと最大250万円になります。対象は小規模事業者で、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員5人以下、製造業その他は20人以下という線が引かれています。会社役員・個人事業主本人・同居の親族従業員はこの人数に含めません。
経費の割り振りには上限があります。広報費とウェブサイト関連費は、それぞれ補助金交付申請額の上限が30万円(税込)で、しかもどちらも単独での申請はできません。二次元コードから開くメニューページの制作費や卓上の掲示物をこの2区分に寄せて計画を組むと、思ったより出ない形になります。申請は電子申請のみでGビズIDプライムが必要になり、商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)も要ります。第20回は申請受付開始が2026年11月5日、締切が2026年12月15日17:00、様式4の発行受付締切は2026年12月4日です。
制度を選ぶ前に、手元で決めておきたい4項目
- 方式:来店客の端末を使うQR方式か、店が端末を置く方式か。ここが決まらないと費目が決まりません
- 見積の内訳:ソフトウェア購入費、クラウド利用料、機械装置・システム構築費、工事費に分けて出してもらう。合計額だけの見積では制度の判定ができません
- 単価と台数:機械装置に1台50万円(税抜)以上のものが含まれるか。含まれない場合、省力化投資補助金(一般型)は入口から外れます
- 常時使用する従業員数:持続化補助金を候補に残すかどうかがこの数字で決まります
発注のタイミングも共通の論点です。交付決定日より前に行った発注・契約・支払は対象外という扱いは、ここで挙げたどの制度にも当てはまります。採択の連絡だけで設置を進めると、その分が補助の対象から外れます。
まとめ
QRオーダーと端末型のセルフオーダーは、店頭での見え方は近くても、補助金の世界では別の投資として扱われます。買うものがシステムの利用権に寄っていればデジタル化・AI導入補助金、機械装置が並ぶなら中小企業省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型)、販路開拓の文脈で小さく始めるなら小規模事業者持続化補助金という順に候補を当てていくと、無駄な検討が減ります。
どの制度も要件や上限額は公募回ごとに更新されます。方式と見積の内訳を先に固め、そのうえで最新の公募要領に当てるという順番でお進めください。制度の選び分けで迷われる場合は、投資の中身が固まる前の段階でご相談いただくほうが、選べる制度は多く残ります。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























