
下請けから自社製品開発へ|製造業が使える補助金を目的別に整理
「下請け中心の受注構造から抜け出し、自社製品・自社ブランドを持ちたい」。数年経営してきた製造業の経営者から、こうしたご相談が増えています。試作費や量産設備、設計ソフトの導入にはまとまった資金が必要ですが、自社製品の開発は国の補助金と相性のよいテーマです。本記事では、自社製品開発に取り組む製造業が使える補助金を、開発のどの段階で何に使えるのかという視点で目的別に整理します。似た名前の枠が並ぶため、選び方を間違えやすい点も具体的に解説します。
なお、補助金は公募要領の改定で要件や金額が変わります。本記事は2026年6月時点の情報をもとにしていますので、申請前には必ず各補助金の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。
自社製品開発で補助金を選ぶときの考え方
製造業の補助金選びでつまずきやすいのは、「設備を買うための補助金」と「新しい製品・事業をつくるための補助金」を混同してしまう点です。自社製品開発は後者にあたります。まずは、自分の取り組みが次のどれに近いかを整理すると、候補が絞りやすくなります。
- 自社の技術を活かして新製品・新サービスを開発する(既存の業態の延長線上)
- これまでとは異なる新しい市場・事業に進出する(新市場・高付加価値化)
- 設計・受発注などをデジタル化して開発体制を整える
- まずは小さく試作し、展示会などで販路を開拓する
この「何を目的にするか」が、そのまま使うべき補助金の分かれ道になります。以下で、それぞれに対応する制度を見ていきます。
新製品開発の軸になる「革新的新製品・サービス枠」
自社製品開発の中心的な選択肢になるのが、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠です。この補助金は、2026年度に従来の「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が統合されてできた制度で、革新的新製品・サービス枠は「自社の技術力を活かして顧客に新たな価値を提供する新製品・新サービスの開発」を支援します。
補助上限は従業員規模によって異なり、最大で3,500万円(従業員51人以上かつ大幅賃上げ特例を適用した場合)です。規模別の上限の目安は次のとおりです。
- 従業員5人以下:750万円(特例適用時850万円)
- 6〜20人:1,000万円(同1,250万円)
- 21〜50人:1,500万円(同2,500万円)
- 51人以上:2,500万円(同3,500万円)
補助下限は100万円、補助率は中小企業者で2分の1(小規模企業者や再生事業者などは3分の2)です。試作用の専用機械や測定機器、専用ソフトの導入といった「機械装置・システム構築費」が補助対象の主軸で、単価10万円(税抜)以上の設備投資が必須になります。
注意したいのは、単なる設備更新や既存製品の生産プロセス改善は、この枠では対象外という点です。あくまで「新しい製品・サービスの開発」があることが前提で、同業ですでに相当程度普及している開発も対象になりません。設備を新しくするだけの計画に見えてしまうと、審査で評価されにくくなります。
新しい市場へ踏み出すなら「新事業進出枠」
自社製品開発が「既存の延長」ではなく「これまでと異なる新しい市場への進出」を伴う場合は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠が候補になります。下請け加工中心だった会社が自社ブランドの最終製品を新たな顧客層に売り出すようなケースは、こちらが自然なことも多いです。
補助上限は従業員規模別に、1〜20人で2,500万円、21〜50人で4,000万円、51〜100人で5,500万円、101人以上で7,000万円(いずれも大幅賃上げ特例適用時は上限が引き上がり、最大9,000万円)と、革新的新製品・サービス枠より大きく設定されています。補助下限は750万円で、機械装置・システム構築費に加えて建物費も対象になるのが特徴です(建物の単純な購入・賃貸は対象外)。
この枠で問われるのは「新市場性」または「高付加価値性」です。新たに製造・提供する製品が、申請者にとって新規性を持ち、その市場も申請者にとって新しい市場であることが求められます(日本初・世界初である必要はありません)。逆に、既存市場と同じで商圏が違うだけ、既存製品の増産やメニュー追加だけ、といった計画は対象外になりやすい点に注意が必要です。なお、この枠は最低1期分の決算書が必要で、創業から1年に満たない事業者は対象外です。
開発体制づくり・小規模の販路開拓に使える補助金
大型の設備投資までは考えていない、あるいは開発の周辺を固めたいという場合は、次の補助金も選択肢になります。
設計・受発注のデジタル化には「デジタル化・AI導入補助金」
3D CADや生産管理システム、受発注のデジタル化など、開発・製造体制をITで整えたい場合は、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)が使えます。補助上限は最大3,000万円で、対象となるのは事務局に登録されたITツールの導入費用です。自社製品開発そのものというより、開発を支える基盤づくりに向いています。
小規模事業者の試作・販路開拓には「小規模事業者持続化補助金」
従業員数の少ない小規模事業者であれば、小規模事業者持続化補助金も候補です。補助上限は250万円と大型補助金に比べれば小さいものの、試作品を持って展示会に出展する、自社製品のカタログやWebサイトを整えるといった販路開拓の取り組みに活用しやすい制度です。まずは小さく試して手応えを確かめたい段階に向いています。
省力化が主目的なら開発向けの枠とは分けて考える
ロボットや自動化設備で現場の人手を減らしたい場合は中小企業省力化投資補助金(一般型)(補助上限1億円)などが該当しますが、これは「省力化・生産性向上」が主目的の制度です。自社製品開発とは目的が異なるため、開発向けの枠と混同しないようにしましょう。1つの計画に複数の補助金で同じ経費を計上する二重計上は認められません。
製造業が申請前に押さえておきたい注意点
自社製品開発で補助金を狙う際、製造業がつまずきやすいポイントを整理します。
賃上げ・付加価値の要件を見落とさない
革新的新製品・サービス枠や新事業進出枠には、共通の基本要件があります。事業計画期間で付加価値額を年平均+4.0%以上、一人当たり給与支給総額を年平均+3.5%以上伸ばすこと、そして事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準に保つことが求められ、未達の場合は補助金の返還を求められることがあります。設備投資の内容だけでなく、賃上げを含めた事業全体の計画として組み立てる必要があります。
「開発」の中身を具体的に説明する
審査では、その取り組みに本当に「新製品・新サービスの開発」があるのかが見られます。どんな技術課題を、どう解決し、どんな新しい価値を生むのかを、自社の言葉で具体的に書けるかが重要です。事業計画は申請者自身が作成することが前提で、外部への丸投げは不採択や取消の対象になります。
スケジュールと申請準備
2026年度の第1回公募は、2026年6月29日に公募が始まり、締切は2026年9月30日18時、採択発表は2026年12月頃が目安です。電子申請にはGビズIDプライムの取得が必要で、発行にも時間がかかるため早めの準備をおすすめします。また、交付決定前に発注・契約・購入した経費は対象外になるため、着手のタイミングにも注意しましょう。
まとめ
自社製品開発に取り組む製造業では、新製品・サービスの開発が主軸なら「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠」、新しい市場への進出を伴うなら同「新事業進出枠」が中心的な選択肢になります。開発体制のデジタル化には「デジタル化・AI導入補助金」、小規模での試作・販路開拓には「小規模事業者持続化補助金」と、目的と会社規模に応じて使い分けるのがポイントです。似た名前でも支援する内容や要件は異なるため、自社の取り組みがどの目的に当てはまるかを整理したうえで選ぶことが、採択への近道になります。補助金は要件や金額が変わりやすいため、申請前には必ず最新の公募要領を確認し、計画づくりに不安がある場合は補助金申請に詳しい専門家へ早めに相談することをおすすめします。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























