
板金加工設備の導入にものづくり補助金は使える?対象になる条件と省力化補助金との違い
「レーザー加工機やベンダーを新しくしたいが、ものづくり補助金は使えるのだろうか」——板金加工業を営む経営者から、こうしたご相談をよくいただきます。結論から言うと、板金加工設備の導入にものづくり補助金(正式名称:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠)を使うことは可能です。ただし「使える」かどうかは、その設備投資が何を目的にしているかで大きく変わります。単なる設備の更新・効率化だけを目的にすると、この枠では対象外と判断されてしまうことがあるのです。
この記事では、板金加工業の経営者向けに、ものづくり補助金が使える投資と使えない投資の線引き、そして効率化・省力化が目的の場合に検討すべき制度まで整理します。なお本記事は執筆時点の情報です。制度内容や数字は変更されることがあるため、申請時は必ず最新の公募要領をご確認ください。
結論|板金加工設備に「ものづくり補助金」は使える。ただし条件がある
ものづくり補助金の正式名称は、2026年度に制度統合された「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の革新的新製品・サービス枠です。この枠が支援するのは、自社の技術力を活かして顧客に新たな価値を提供する新製品・新サービスの開発です。板金加工設備の導入であっても、この「新製品・新サービスの開発」につながる投資であれば対象になり得ます。逆に、既存の加工を今より速く・安くこなすための単純な設備更新は、この枠の対象外になりやすい点に注意が必要です。
そもそも「ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)」とは
革新的新製品・サービス枠は、自社の技術力等を活かして顧客等に新たな価値を提供する新製品・新サービスを開発する取り組みを支援する制度です。単なる設備・システム導入、既存製品・サービスの生産プロセス改善、同業で既に相当程度普及している開発は対象外とされています。
補助上限額は従業員規模によって異なり、1〜5人は750万円、6〜20人は1,000万円、21〜50人は1,500万円、51人以上は2,500万円です。大幅な賃上げ計画を盛り込んだ場合の特例では、それぞれ850万円・1,250万円・2,500万円・3,500万円まで引き上げられます。よく紹介される「上限3,500万円」は、最大規模の企業が大幅賃上げ特例まで満たした場合の最大値であり、多くの板金加工事業者にとっての現実的な上限は、自社の従業員規模に応じた金額になる点にご注意ください。補助下限は100万円です。
補助率は中小企業者で1/2、小規模企業・小規模事業者・再生事業者、地域別最低賃金引上げ特例の適用時は2/3となっています。補助事業の実施期間は交付決定日から10か月以内(採択発表日から12か月以内)です。
この枠を使うには、事業計画期間(3〜5年)で付加価値額を年平均4.0%以上、一人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上伸ばす計画を立てる必要があります。これらは交付申請時までに従業員へ表明する必要があり、未達の場合は補助金の返還が求められることがあります。事業場内最低賃金も、地域別最低賃金に毎年30円以上を上乗せする水準を維持する必要があり、これも未達なら返還対象です。
【最重要】板金加工設備の導入が「対象外」になりやすいケース
この枠で最もつまずきやすいのが、「新製品・新サービスの開発を伴わない単なる導入は対象外」という要件です。老朽化したレーザー加工機を同等品の新型に入れ替えるだけ、生産スピードを上げるためだけの更新投資は、既存製品・サービスの生産プロセス改善に当たるため、この枠では対象外とされます。同業他社で既に相当程度普及している加工方法・サービスの導入も対象外です。
経費の面でも注意点があります。機械装置・システム構築費(専用機械・装置、専用ソフト・情報システム等で単価10万円税抜以上)が必須かつ主軸の経費とされる一方、汎用パソコンやスマートフォン、車両、家賃、建物といった費用は対象外です。板金加工設備の導入では、設備の据付に伴う基礎工事や建屋の改修が発生することがありますが、こうした周辺コストは対象外になる点を資金計画に織り込んでおく必要があります。加えて、交付決定前に発注・契約・購入をしてしまうと対象外になるため、申請から交付決定までのスケジュールを見込んで動くことも欠かせません。
板金加工で「新製品・新サービス」と認められやすい投資の考え方
この枠で採択を狙うなら、「その設備投資によって、これまで自社にできなかった新しい加工・新しい提供価値が生まれるか」を軸に事業計画を組み立てることが重要です。例えば、これまで外注に頼っていた複雑な曲げ加工やレーザー切断を自社で内製化し、新しい受注価値として顧客に提示できるようにする投資、従来の設備では実現できなかった精度・形状の製品を新たに開発し、新規の販路や顧客層の獲得につなげる投資などは、単なる効率化ではなく「新製品・新サービスの開発」として説明しやすくなります。
事業計画は自社で作成することが前提とされており、外部への丸投げは不採択や採択取消の対象になり得ます。国や他の公的制度との二重受給も認められないため、他の補助金・助成金と重複する経費を計上していないか確認しておきましょう。
効率化・人手不足対応が目的なら「省力化投資補助金」が選択肢になる
板金加工設備の導入目的が「新製品・新サービスの開発」ではなく、人手不足への対応や生産工程の効率化そのものである場合は、中小企業省力化投資補助金の活用を検討する方が制度として合いやすくなります。この補助金には、事業内容に合わせて設備を組み合わせる「一般型」と、公的に登録された製品からそのまま選ぶ「カタログ注文型」の2つの枠があります。
中小企業省力化投資補助金(一般型)|自社工程に合わせた作り込み
一般型の補助上限は1億円です。対象になるのは「オーダーメイド性のある設備」で、通信技術・センサー・人工知能・ロボット等を活用した専用設備等が想定されています。汎用設備であっても、複数の設備を組み合わせることでより高い省力化効果や付加価値を生み出す場合や、導入環境に応じて周辺機器・構成機器の数や搭載機能が変わる場合は、オーダーメイド設備とみなされ対象になります。逆に、単に汎用設備を単体で導入するだけの事業は対象外です。単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ導入する要件を満たしていても、それだけでは足りず、複数設備の組み合わせなどでオーダーメイド性を示す事業計画が必要になる点に注意してください。
板金加工の現場でいえば、加工機本体に加えて自動搬送装置・自動ローダー・検査装置などを組み合わせた自動化ラインは、この「複数設備の組み合わせ」の考え方に合致しやすい投資です。3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画も必要で、賃上げ目標の未達時は達成率に応じた返還が発生し得ます。
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)|既製品を即効導入
カタログ注文型は、公的に登録された省力化製品(汎用機器・ロボット・センサー機器等)の中から選んで導入する枠で、補助上限は大幅な賃上げ計画を盛り込んだ場合で1,500万円です。中小企業等が販売事業者と共同で申請することが前提で、単独申請は原則できません。労働生産性を年平均3.0%以上向上させる計画が必要で、一般型の4.0%より要件がやや軽い点も違いです。導入したい板金加工設備・周辺機器がカタログに登録された製品であれば、この枠のほうが即効性のある選択肢になります。
3制度の使い分け早見表
| 制度 | 主な目的 | 補助上限 | 生産性・賃上げ要件 |
|---|---|---|---|
| ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠) | 新製品・新サービスの開発 | 750万〜2,500万円(特例時最大3,500万円) | 付加価値額年平均+4.0%、給与総額年平均+3.5% |
| 省力化投資補助金(一般型) | 自社工程に合わせた省力化(オーダーメイド性が必要) | 1億円 | 労働生産性年平均+4.0% |
| 省力化投資補助金(カタログ注文型) | カタログ登録製品の即効導入 | 1,500万円(大幅賃上げ時) | 労働生産性年平均+3.0% |
迷ったときは「その投資で新製品・新サービスが生まれるか」「複数設備を組み合わせるオーダーメイドな計画か」「カタログ登録品をそのまま入れるだけか」の3つの問いから、自社の投資がどの制度の趣旨に近いかを整理してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. レーザー加工機を新型に買い替えるだけでも、ものづくり補助金は使えますか?
A. 新型への単純な入れ替えで、新製品・新サービスの開発を伴わない場合は、既存製品・サービスの生産プロセス改善に当たるため、革新的新製品・サービス枠では対象外になりやすい投資です。効率化・生産性向上が主目的であれば、省力化投資補助金の活用を検討してください。
Q. 板金加工の自動化ライン(加工機+搬送装置+検査装置)は対象になりますか?
A. 複数の設備を組み合わせることで省力化効果や付加価値を高める投資は、省力化投資補助金(一般型)が想定するオーダーメイド性のある設備に該当しやすいケースです。単体の汎用設備だけの導入は対象外になるため、組み合わせ全体で事業計画を組み立てる必要があります。
Q. 賃上げ目標を達成できなかった場合はどうなりますか?
A. ものづくり補助金・省力化投資補助金のいずれも、賃上げや生産性向上の目標が未達の場合は、返還や減額の対象になり得ます。計画段階で無理のない数値を設定することが重要です。
Q. 交付決定前に設備を発注してもよいですか?
A. いずれの制度でも、交付決定前の発注・契約・購入は対象外となるのが原則です。申請から交付決定までのスケジュールを見込んで、発注のタイミングを計画してください。
Q. ものづくり補助金と省力化投資補助金は同時に使えますか?
A. 国の公的制度との二重受給は認められていません。同一の設備・経費について複数の補助金を重複して申請することはできないため、どちらの制度が自社の投資目的に合うかを先に見極める必要があります。
まとめ
板金加工設備の導入にものづくり補助金(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠)を使えるかどうかは、その投資が「新製品・新サービスの開発」につながるかどうかで決まります。単なる設備更新・効率化が目的であれば、省力化投資補助金の一般型やカタログ注文型のほうが制度の趣旨に合いやすくなります。上限額・賃上げ要件・対象経費はいずれも細かく定められており、判断を誤ると採択後の返還リスクにもつながります。自社の投資がどの制度に当てはまるか判断に迷う場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























