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コラム

動物病院のICU・酸素室整備に補助金は使える?工事費が対象になる枠は1つだけ

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動物病院のICU・酸素室整備で補助金が使える条件|機器と工事で分かれる対象経費

入院を受け入れている動物病院で酸素室やICUユニットの導入を検討し始めると、必ず「補助金は使えるのか」という話になります。ところが検索して出てくるのは機器メーカーの製品ページか、補助金制度そのものの一般的な解説ばかりで、「入院できる部屋をつくる」という投資に補助金がどう当たるのかを説明したものはほとんど見当たりません。

ICU・酸素室の整備が、エコーやレントゲンといった機器単体の導入と決定的に違うのは、機器を買って終わりにならないところです。酸素配管を引く、電源容量を増やす、感染症の子を隔離できるように壁を立てる、といった工事がほぼ必ずセットになります。そして補助金の世界では、この「工事」が制度によって対象にも対象外にもなります。そこを分けないまま1本の見積書で申請してしまうと、採択されたのに補助対象として認められた金額はごくわずかだった、という着地になりかねません。

この記事では、開業5〜10年ほど、常勤獣医師2〜3名で、日中の入院は受けているものの夜間は断っている一次診療の動物病院を想定し、実際にご相談の多い順に質問形式で整理します。数字はいずれも2026年8月時点で確認できる公募要領の内容です。

前提:投資を「機器」「工事」「運用」の3つに割って考える

ICU・酸素室の整備には、性質の違う費用が混ざっています。制度選びを間違えないために、見積もりを取る前の段階で次の3つに分けておきます。

  • 機器:ICUユニット、酸素濃縮装置、酸素ケージ、生体モニター、輸液ポンプなど
  • 工事:酸素配管、電気容量の増設、間仕切り壁、床・壁の防水や消毒に耐える仕上げ、空調の分離
  • 運用:入院患者の状態を記録・共有するシステム、遠隔での見守り、夜間の連絡体制

補助金は「動物病院向け」という切り口では用意されていません。上の3つのうちどれが投資の主役かによって、筋の通る制度が入れ替わります。以下の質問と回答は、この3分類を前提に読んでください。

Q1.ICUユニットや酸素ケージそのものの購入費は、補助金の対象になりますか

機械装置として計上できるという意味では、対象になり得ます。ただし「買えば対象」ではなく、それぞれの制度が求める中身の条件を満たす必要があります。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠は、機械装置・システム構築費が主軸で、単価10万円(税抜)以上が対象になります。補助下限は100万円、補助上限は従業員規模別で1〜5人なら750万円、6〜20人なら1,000万円です(公募要領1.0版・令和8年6月時点)。金額の入り口としては入りやすい枠です。

一方でこの枠は「新製品・新サービスの開発」を伴わない単なる導入を対象外としています。既存の入院管理を続けるために古い酸素ケージを新しいものに入れ替える、という説明の仕方では、設備更新と受け取られて崩れます。

中小企業省力化投資補助金(一般型)は、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れることが要件です。こちらは後述のとおり、金額よりも「オーダーメイド性」の説明が本体になります。

Q2.入院室の内装・改修工事の費用は、補助金の対象になりますか

ここがICU・酸素室の整備で最大の分かれ目です。建物費が対象経費として認められているのは、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のなかでも新事業進出枠だけです(公募要領1.0版・令和8年6月時点)。革新的新製品・サービス枠では、建物・基礎工事といった周辺コストは対象外とされています。

つまり、酸素配管の敷設や間仕切り壁の造作にまとまった金額がかかる計画で、その工事費まで補助対象に含めたいのであれば、選択肢は新事業進出枠に絞られます。ただし新事業進出枠には補助下限750万円という条件があり、補助率が中小企業者で2分の1であることを踏まえると、補助対象経費でおおむね1,500万円規模の投資が組めていないと下限に届きません。加えて、新規設立・創業後1年に満たない事業者は対象外で、最低1期分の決算書が必要です。

小規模事業者持続化補助金にも、委託・外注費のなかに店舗改装等の工事が入ります。ただし公募要領では、建物の増築・増床や「不動産の取得」に当たる工事は対象外になりやすいとされ、外気分断性・土地への定着性・用途性の3要件で判定されます。既存の診療スペースの一角を仕切って入院室にする程度であれば検討の余地がありますが、建て増しや独立した棟の新設という形になると、この判定で外れる可能性が出てきます。

また、機器の据付に伴う軽微な工事は、機械装置・システム構築費のなかで「導入と一体の軽微な据付・改良」として扱われる場合があります。酸素配管を建物全体に引き直すのか、購入した酸素ケージを設置するために必要な最小限の工事なのかで、扱いが変わります。見積書を「機械装置」と「工事」に分けて出してもらえるかどうかが、そのまま申請書の書きやすさに直結します。

三浦高

💬 執筆者の三浦から一言

事務局で申請書を見ていた立場から申し上げると、工事を含む計画は「一式」でまとまった見積書が添付されているだけのことがあります。審査側は経費区分ごとに対象かどうかを見ますので、内訳が読めない見積書は、その部分を落として判断せざるを得ません。業者に相談する段階で区分を分けて出してほしいと伝えておくと、後の作業がまったく違ってきます。

Q3.「入院管理の省力化」という切り口で、中小企業省力化投資補助金(一般型)は使えますか

使える可能性はありますが、この制度は既存事業の省力化・生産性向上が主題である点を外すと筋が通りません。夜間に見回る回数を減らす、複数の入院動物の状態をまとめて監視することでスタッフ1人あたりの受け持ちを増やす、といった省力化の効果を計画の中心に据える必要があります。

もう一つ、対象設備の考え方に固有のハードルがあります。この制度で対象になるのは「オーダーメイド性のある設備」で、次のいずれかに当てはまることが求められます。

  • 省力化に資する汎用設備を複数組み合わせて、より高い省力化効果や付加価値を生み出す場合
  • 導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合

裏を返すと、汎用設備を単体で導入するだけの事業は対象外です。単価50万円(税抜)以上という金額要件を満たしていても、それだけでは足りません。酸素ケージを1台入れる、という計画のままでは通りにくく、酸素供給・モニタリング・記録の連携までを1つの構成として設計する発想が要ります。

要件面では、3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画が必要で、賃上げ目標が未達の場合は達成率に応じて返還が発生し得ます。従業員0名の事業者は対象外です。院長と非常勤のみで回している体制の場合は、この点を先に確認しておくと無駄がありません。

💬 無料相談のご案内

補助金専門行政書士法人は、V-Spirits元補助金審査員の三浦を中心とした専門家チームが補助金支援を行っております。「このケースは補助金の対象になるのか?」といった疑問にも、無料でお答えしております。お気軽にご相談ください。

Q4.夜間入院や24時間管理を新しく始める場合は、どの枠になりますか

投資規模が大きく、工事費も含めたいのであれば、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠が候補になります。ただしこの枠は、新たに提供する製品やサービスが申請者にとって新規性を持ち、かつその市場が申請者にとって新たな市場であることを求めます。審査では「新市場性」または「高付加価値性」のどちらかで筋が通るかが見られます。

ここで気をつけたいのが、公募要領が既存事業と同一市場、単なるメニュー追加、単に商圏が違うだけといったものを新事業進出に該当しないと明示している点です。「これまで日中だけ受けていた入院を夜間まで広げます」という説明は、診療時間を延ばしただけと読まれる余地があります。二次診療施設からの受け入れ、他院からの夜間搬送の受け皿、呼吸器疾患に特化した集中管理といった形で、既存の一次診療とは別の需要に向けたサービスとして組み立てられるかどうかが判断の分かれ目になります。

逆に、既存の入院管理の延長線上で質を上げる計画であれば、革新的新製品・サービス枠のほうが自然な場面もあります。この枠は補助下限100万円と入り口が低い代わりに、建物費が対象外である点を計画の初期に織り込んでおく必要があります。

Q5.動物病院は小規模事業者持続化補助金の対象外ではないのですか

「医療機関は対象外」と書かれた情報を見て、動物病院も同じだと考えてしまうご相談をよくいただきます。公募要領で対象外の形態として挙げられているのは、医師・歯科医師・助産師、および医療法人・社会福祉法人などです。獣医師や動物病院はこの列挙に含まれていません

もう一つの論点である「保険適用診療にかかる経費は対象外」という規定も、薬局・整骨院・鍼灸院のように公的医療保険からの診療報酬が入る事業を想定したものです。動物診療は公的医療保険の対象ではないため、この重複規定が正面から当たる場面は考えにくくなります。ただし最終的な判定は商工会・商工会議所や事務局が行いますので、事業支援計画書(様式4)の発行を依頼する段階で確認してください。

金額面では、補助上限は基本50万円、インボイス特例と賃金引上げ特例の両方を満たした場合で最大250万円、補助率は3分の2です。従業員数の要件は商業・サービス業で常時使用する従業員5人以下です(会社役員・個人事業主本人・同居の親族従業員はカウントしません)。第20回公募は申請受付が2026年11月5日、締切が2026年12月15日17時で、事業支援計画書の発行受付締切は2026年12月4日です。酸素室の整備そのものを全額まかなう規模ではありませんが、機器1台と最小限の造作という計画なら現実的な選択肢になります。

Q6.業者への発注や工事の着工は、いつしてよいのですか

いずれの制度も、交付決定前に行った発注・契約・購入は対象外です。採択通知が届いた時点ではまだ交付決定ではありません。ここを取り違えると、補助金の話が完全に消えます。

ICU・酸素室の整備が他の機器導入より危ないのは、工事が絡むぶん段取りが長いからです。現地調査、酸素配管の経路設計、電気容量の確認、複数業者からの相見積もり、着工日の調整と進むうちに、「先に工事だけ押さえておこう」という判断が起きやすくなります。獣医療の現場では、入院動物がいない時期を狙って工事日程を決める必要もあり、この誘惑はさらに強まります。

スケジュールの目安として、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募は2026年6月29日から始まり、締切が2026年9月30日18時、採択発表は2026年12月頃とされています。小規模事業者持続化補助金の第20回は採択発表が2027年3月頃の予定です。工事の見積依頼を出すタイミングと、この発表時期を逆算して並べてみると、無理のない工程かどうかが見えてきます。

まとめ

動物病院のICU・酸素室整備で補助金を検討するときは、次の順で判断すると迷いが減ります。

  • 工事費を補助対象に含めたいかで最初に分岐する。含めたいなら新事業進出枠(補助下限750万円)、機器中心なら革新的新製品・サービス枠(補助下限100万円)
  • 投資の目的が省力化かを確かめる。省力化が主題なら中小企業省力化投資補助金(一般型)だが、汎用設備の単体導入は対象外なので構成で示す
  • 小規模な整備なら小規模事業者持続化補助金。獣医師は対象外の列挙に含まれないが、商工会・商工会議所への確認は行う
  • 見積書は「機械装置」と「工事」に分けて取得し、交付決定前に発注しない

制度の要件は公募回ごとに改定されます。本記事の数字は2026年8月時点で公開されている公募要領に基づくものですので、実際の申請前には最新の公募要領で対象経費と要件をご確認ください。どの枠で組むのが自院の計画に合うか判断がつかない場合は、投資の内訳を持参のうえご相談ください。

【無料相談のご案内】

弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

フリーダイヤル 0120-335-523
お問い合わせフォーム https://v-spirits.com/contacts

三浦高

この記事を書いた人

三浦高/Takashi Miura

元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者

産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。

融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

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中野裕哲

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】

税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1,000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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