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コラム

建設用3Dプリンターの補助金|規模別の上限額と補助下限で見る本当の自己負担

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建設用3Dプリンターに補助金は使える?使い道で分かれる3制度と2026年度の上限額

建設用3Dプリンターは、セメント系の材料を積層して壁や基礎、型枠、外構部材などを造形する大型の設備です。人手不足と職人の高齢化が同時に進むなかで、「導入したいが本体だけで数千万円かかる。補助金は使えるのか」という相談が増えています。

結論から言うと、建設用3Dプリンターの導入は補助金の対象になり得ます。ただし「3Dプリンターだから対象」ではありません。同じ1台でも、何のために使うのかによって申請すべき制度が変わります。ここを取り違えると、書類が揃っていても評価されずに終わります。

この記事では、型枠工事や土木、コンクリート二次製品などを手がける中小の建設会社を想定して、使い道ごとの制度の振り分け方、実際に手元に残る金額の考え方、建設用3Dプリンターならではのつまずきどころを整理します。なお、記載の制度内容は2026年7月時点の公募要領に基づくものです。申請時は必ず最新の公募要領をご確認ください。

2026年度から制度の名前が変わっています

最初に押さえておきたいのが、制度の再編です。設備投資の補助金として広く知られていた「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」は、2026年度(令和8年度)に統合され、公募要領上の正式名称は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」になりました。

3Dプリンターと補助金を扱う解説記事の多くは、まだ旧制度の名前と枠組みのままです。検索して出てきた情報をそのまま前提にすると、枠の選び方も上限額もずれます。2026年度は、この補助金のなかに「革新的新製品・サービス枠」と「新事業進出枠」があり、それぞれ狙いも金額も別物だと理解してください。

第1回公募は2026年6月29日に開始し、申請締切は2026年10月30日18時、採択発表は2027年1月頃とされています。電子申請にはGビズIDプライムが必要で、取得には日数がかかります。

使い道で振り分ける:建設用3Dプリンターの3つの位置づけ

建設用3Dプリンターは、導入の狙いによって次の3通りの位置づけになります。自社の投資がどれに当たるかを先に決めてください。

①既存の施工・製造工程を省力化したい場合

いま人手でやっている型枠づくりや部材成形を機械に置き換え、少ない人数で同じ量をこなせるようにする。これが目的なら中小企業省力化投資補助金(一般型)が軸になります。補助上限は1億円で、3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画が必要です。設備は単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れることが要件になります。

ただし、この制度には「オーダーメイド性」という関門があります。汎用の設備を単体で買うだけの事業は対象外です。逆に、省力化に資する汎用設備を複数組み合わせてより高い効果を出す場合や、導入環境に応じて周辺機器・構成する機器の数・搭載する機能が変わる場合は、オーダーメイド設備とみなされます。建設用3Dプリンターであれば、造形機本体に材料の供給・撹拌ユニット、位置決めや制御のシステム、現場条件に合わせた架台やレールなどを組み合わせる構成が一般的です。この構成が自社の現場条件に応じて変わることを、事業計画で具体的に説明できるかが分かれ目になります。

②3Dプリント技術で新しい製品・サービスを開発したい場合

従来工法では作れなかった曲面壁や複雑形状の部材を新商品として出す、あるいは3Dプリントによる施工を新しいサービスメニューとして立ち上げる。開発の要素が主役なら新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠が候補です。

この枠は「新製品・新サービスの開発」を伴わない単なる設備導入を対象外としています。既存製品・サービスの生産プロセス改善も、この枠では対象外です。さらに、同業ですでに相当程度普及している開発も対象外とされています。「うちにとっては新しい」ではなく「同業のなかで見てもまだ普及していない」ラインをどう説明するかが、この枠の山場です。

③別の市場・別の事業として立ち上げたい場合

これまで請負施工しかしてこなかった会社が、3Dプリントした部材の製造販売や造形受託という新しい事業を始める。既存事業とは違う市場に出ていくなら新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠が視野に入ります。

この枠で問われるのは、新たに提供する製品等が申請者にとって新規性を持ち、かつその市場が申請者にとって新たな市場であることです。日本初・世界初である必要はありません。一方で、既存事業と同一市場、既存製品の増産、単なる製法変更、単に商圏が違うだけといったケースは該当しないとされています。「工法を3Dプリントに変えただけ」では、新事業進出とは認められにくいということです。なお、新規設立・創業後1年に満たない事業者は対象外で、最低1期分の決算書が必要です。

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上限額は「最大値」で見ないでください

制度の紹介記事では「上限3,500万円」「上限9,000万円」という数字が目立つ形で載っています。ここが読者を一番惑わせる部分です。これらは最大の従業員規模かつ大幅賃上げ特例を適用した場合の最大値であって、無条件の上限ではありません。実際は従業員規模で次のように変わります。

  • 革新的新製品・サービス枠:5人以下750万円/6〜20人1,000万円/21〜50人1,500万円/51人以上2,500万円(大幅賃上げ特例の適用時は各850万円/1,250万円/2,500万円/3,500万円)
  • 新事業進出枠:20人以下2,500万円/21〜50人4,000万円/51〜100人5,500万円/101人以上7,000万円(同特例の適用時は各3,000万円/5,000万円/7,000万円/9,000万円)

建設業の中小企業は従業員20人以下の会社が多く、革新的新製品・サービス枠なら現実的な上限は750万〜1,000万円です。補助率は中小企業者で2分の1、小規模企業・小規模事業者などは3分の2とされているため、本体価格が数千万円規模の建設用3Dプリンターでは、自己負担が相当額残る前提で資金計画を組む必要があります。

見落とされやすいのが補助下限です。革新的新製品・サービス枠は補助下限100万円、新事業進出枠は補助下限750万円が設定されています。新事業進出枠は、補助率2分の1で下限750万円ということは、補助対象経費が1,500万円規模に届かない投資は入口で外れる計算になります。小さく試したい会社ほど、この下限で枠を選び直すことになります。

建設用3Dプリンターならではの3つのつまずきどころ

1.交付決定前に発注すると全部が対象外になる

いずれの制度も、交付決定前の発注・契約・購入は補助対象外です。建設用3Dプリンターは受注生産に近い設備で、納期が長く、商談から搬入まで時間がかかります。「早く押さえたいから先に発注書を出す」という判断が、そのまま補助金を消してしまいます。逆算すると、締切から採択発表、交付決定までの期間を織り込んだ発注スケジュールを、メーカーとあらかじめ共有しておく必要があります。

2.賃上げ要件は「達成できなかったとき」まで見て決める

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の基本要件には、事業計画期間で付加価値額を年平均4.0%以上、一人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上伸ばすこと、事業場内最低賃金を地域別最低賤金プラス30円以上の水準に保つことが含まれます。これらが未達の場合は返還の対象になり得ます。省力化投資補助金(一般型)も賃上げ目標が要件で、未達なら達成率に応じた返還が生じ得ます。

建設業は受注量の波が大きく、単年度の売上変動が給与原資に直結しやすい業種です。上限額の大きさだけで枠を選ぶと、数年後に返還リスクを抱え込むことになりかねません。手元に残る金額と、要件を満たし続けられる確度の両方で判断してください。

3.「作れること」を計画で説明できるか

建設用3Dプリンターで造形した構造物を実際の建築物に使う場合、材料や構造の適合性について、設計者や所管行政庁との事前確認が欠かせません。ここが固まっていないと、事業計画の実現可能性そのものが弱く見えます。着手時点で、外構部材や仮設・型枠など確認のハードルが低い用途から始めて実績を作るのか、最初から構造部材を狙うのかで、計画の書き方も必要な検証期間も変わります。補助金の書類より前に、この技術的な段取りを決めておくことが実質的な準備になります。

よくある質問

Q. 3Dプリンター本体だけを買う計画でも申請できますか

制度によります。省力化投資補助金(一般型)は、汎用設備を単体で導入するだけの事業を対象外としているため、本体を1台買うだけの計画では要件を満たしません。革新的新製品・サービス枠は機械装置・システム構築費が必須かつ主軸ですが、設備導入そのものではなく新製品・新サービスの開発があることが前提です。いずれにせよ「何を作れるようになるのか」まで含めた計画が必要になります。

Q. 建物の工事費は補助対象になりますか

建物費が対象経費になるのは新事業進出枠だけです。それでも建物の単純な購入や賃貸は対象外とされています。革新的新製品・サービス枠では、建物・基礎工事・家賃などの周辺コストは対象外です。設備を据えるための建屋や土間の工事を当てにしていると、想定より対象経費が小さくなります。

Q. 複数の補助金に同時に申請してもよいですか

国や公的制度との二重受給は認められていません。同じ事業計画・同じ経費を複数制度に計上することはできないため、どの投資をどの制度に載せるかを最初に切り分けておく必要があります。

Q. 事業計画は専門家に作ってもらえますか

事業計画は申請者自身が作成することが求められており、外部への丸投げは不採択や採択取消の対象とされています。支援機関の役割は、制度選びの整理、要件と自社の投資内容の突き合わせ、計画の書き方の助言までです。中身を語るのは経営者自身、という前提で準備を進めてください。

まとめ

建設用3Dプリンターの導入は補助金の対象になり得ますが、決め手になるのは設備の種類ではなく投資の目的です。既存工程の省力化なら中小企業省力化投資補助金(一般型)、新製品・新サービスの開発なら新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠、新しい市場への進出なら同 新事業進出枠、という振り分けが出発点になります。

そのうえで、宣伝されている最大値ではなく従業員規模ごとの実際の上限額と補助下限で手元に残る金額を確かめ、交付決定前の発注、賃上げ要件の返還リスク、技術的な実現可能性の3点を先に潰しておくことが、採択にも導入後の安定にもつながります。制度の内容は公募回ごとに見直されるため、申請前には必ず最新の公募要領で確認してください。

【無料相談のご案内】

弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

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三浦高

この記事を書いた人

三浦高/Takashi Miura

元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者

産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。

融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

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この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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