
ジム開業と行政書士|許認可の有無で変わる依頼の価値と費用の考え方
「ジムを開業するなら行政書士に相談したほうがいいのだろうか」と検索すると、行政書士になる側の開業費用や、業種を問わない行政書士報酬の相場を紹介する記事が目立ちます。しかし、ジムを開業する側が行政書士に何を頼めて、それがいくらの対価になるのかを説明した情報は多くありません。
結論から言うと、ジムは業態によって、そもそも許認可の手続き自体が発生しないケースが少なくありません。行政書士=許認可の代行という一般的なイメージのまま依頼を検討すると、費用の対価が何なのか分からなくなってしまいます。この記事では、まず自分のジムが許認可の対象になる業態かどうかを見極め、そのうえで行政書士に依頼する価値をどこに置くべきかを整理します。
ジムの行政書士費用の相場が調べにくい理由
行政書士の報酬は自由化されており、事務所ごとに設定が異なります。そのため業種横断の「相場」を一律の金額で示すことは難しく、公的な統計として確認できる一次情報も限られています。この記事では確認できない金額を断定的に示すことはせず、費用がどのような構成要素に分かれるのか、何に対して支払うお金なのかという構造から説明します。
また、上位に並ぶ記事の多くは「行政書士として独立開業する側の費用」を扱ったものと、業種を問わない一般的な報酬紹介のいずれかに偏っています。ジムという業態特有の事情、つまり「そもそも手続きが要るのかどうか」という入口の整理がされていないため、依頼を検討する側からすると的外れな情報に当たりやすくなっています。
そもそも「自分のジム」は許認可が必要な業態か
ジムの開業を検討する際にまず確認すべきは、自分の業態が許認可の対象になるかどうかです。マシンやスタジオを中心とした一般的なフィットネスジムは、多くの場合、開業にあたって特別な許認可を必要としません。一方で、次のような要素を含む業態は、個別の法令に基づく手続きが必要になることがあります(2026年8月11日時点で公式情報を確認できた範囲です)。
- 浴室やサウナを設ける場合:公衆浴場法上の「その他の公衆浴場」に該当することがあり、該当する場合は都道府県知事(保健所を設置する市や特別区では市長・区長)の許可が必要です(所管:厚生労働省)。
- 飲食を提供する場合:プロテインドリンクや軽食などの調理・提供を伴う場合、食品衛生法に基づく飲食店営業許可が必要になることがあります(現行制度は令和3年5月31日施行の見直しに基づくものです。所管:厚生労働省)。
これらはいずれも、該当するかどうかの判断基準や窓口・様式が自治体によって異なるため、実際に該当するかは所管の窓口に確認する必要があります。また、上記3つ以外にも個別の条例等で手続きが必要になる可能性はありますが、この記事では公式情報で確認できた範囲にとどめています。
許認可が必要な業態の場合──行政書士に依頼できる範囲と費用の考え方
上記のような許認可が発生する業態であれば、その申請書類の作成・提出は行政書士の本来の業務範囲にあたります。ただし、行政書士がどこまでの業務を扱っているかは事務所によって差があるため、依頼する前に対応範囲を確認しておくことをおすすめします。
費用は大きく「報酬」と「法定費用」の2つに分かれます。報酬は行政書士に手続きの代行を依頼する対価であり、事務所ごとに設定が異なります。法定費用は許可・届出の手続き自体にかかる実費(申請手数料など)で、こちらは制度側で決まっている部分です。この記事では確認できていない具体的な金額を提示することはしませんが、見積もりを取る際はこの2つを分けて聞くと、何に対していくら払っているのかが分かりやすくなります。
許認可が不要な業態の場合──行政書士に依頼する価値はどこにあるか
浴室・サウナの設置や飲食提供、深夜の酒類提供のいずれにも当たらない一般的なジム業態の場合、許認可の代行という業務自体が発生しません。この場合、行政書士に依頼する価値は「許認可を取ってもらうこと」ではなく、別のところに置く必要があります。
候補として現実的なのは、創業融資を申し込む際の事業計画書など、申請書類の作り込みをサポートしてもらうことです。日本政策金融公庫の創業融資は、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断される仕組みになっており(2026年6月1日現在)、実績で語れない分だけ計画書の説得力が問われます。書類作成に慣れた専門家に整理を手伝ってもらうことで、伝えたい内容を過不足なく形にできる可能性があります。
創業融資の審査で「専門家に頼んで変わること・変わらないこと」を切り分ける
ここで注意したいのは、行政書士に依頼したからといって、創業融資の審査結果そのものが有利になるとは限らないという点です。専門家に依頼して変わり得るのは、書類の完成度や準備の段取りであり、審査そのものの結果を約束するものではありません。
審査で見られる部分の多くは、依頼の有無にかかわらず共通しています。たとえば自己資金については、制度上、額や割合の要件は決められていませんが、金額が多いほど審査で有利になりやすいという評価軸自体は変わりません。創業前に自費で取得した資格や設備・備品の購入、テストマーケティング費用などは「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがあるため、領収書を保管しておくとよいでしょう。
また、創業融資だからといって決算書を見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていればその決算書が確認されますし、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。こうした審査の仕組み自体は、行政書士に依頼しても変わるものではありません。

💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
融資の審査では、行政書士に依頼したかどうかより、事業計画そのものの中身が見られます。減額を避けるための工夫という発想ではなく、自分の計画がどうなのかを具体的に示すことが本質だと感じています。書類を整える作業と、計画の中身を練る作業は分けて考えるとよいでしょう。
金利面についても同様です。2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いとなります。これらの数字は制度側で決まっているもので、行政書士に依頼したかどうかで変わるものではありません。
行政書士費用の内訳(報酬と法定費用)と、見積もりで確認すべきこと
行政書士に依頼する場合の費用は、繰り返しになりますが「報酬」と「法定費用」に分かれます。許認可が発生しない業態で事業計画書の作成支援のみを依頼する場合は、法定費用にあたるものがなく、報酬のみが対価になります。見積もりを受け取る際は、次の点を確認しておくと費用の対価がはっきりします。
- 依頼する業務の範囲(許認可申請の代行なのか、事業計画書などの書類作成支援なのか)
- 報酬と法定費用が分かれて示されているか
- 登記や税務、労働・社会保険の手続きが必要になった場合、それぞれ別の専門家への相談が必要になること
登記手続きは司法書士、税務処理は税理士、労働・社会保険の手続きは社会保険労務士の専門領域です。ジムの開業では法人設立や従業員の雇用に伴ってこれらの手続きが必要になる場面もありますが、この記事では具体的な手続きの進め方には触れません。該当する場合は、それぞれの専門家に早めに相談することをおすすめします。
まとめ──依頼を検討する前に、自分のジムの業態を先に見極める
ジム開業で行政書士への依頼を検討するときは、まず自分の業態が許認可の対象になるかどうかを確認することが出発点になります。浴室・サウナの設置、飲食の提供といった要素があれば、該当する許認可の手続きが必要になることがあり、その場合の行政書士費用は許認可代行の対価として整理できます。
一方、これらに当たらない一般的なジム業態であれば、許認可代行という業務自体が発生しません。その場合に行政書士へ依頼する価値があるとすれば、創業融資の事業計画書など申請書類の作り込みをサポートしてもらう点にあります。ただし、専門家に依頼することで変わるのは書類の準備や段取りであり、審査の結果そのものを約束するものではない点は押さえておく必要があります。まずは自分の業態を整理したうえで、何を目的に依頼するのかをはっきりさせることが、費用に見合った依頼につながります。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
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- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
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