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コラム

建設業の設計DXに使える補助金|CAD・BIM導入で対象になる費用とならない費用

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建設業の設計DX投資、補助金の対象になる費用とならない費用の分かれ目

2D CADや手描きの図面を中心に回してきた設計・積算の現場を、BIMや3Dモデルに切り替えたい。そう考えて「建設業 設計DX 補助金」と検索すると、出てくるのはCADメーカーやソフト販売会社のページばかりではないでしょうか。「当社の製品は補助金の対象です」という案内は分かりやすい一方で、その制度に自社の投資がまるごと乗るのかどうかは、読んでも判断がつきません。

設計DXの投資は、ソフトだけで完結しないところに難しさがあります。BIMを動かす高性能なワークステーション、A1サイズの大判プリンタ、現場を計測する3Dレーザースキャナー。これらを「設計DX一式」としてまとめて考えると、制度の選び方を間違えます。ここでは投資を費目ごとに分けたうえで、どこまでが補助金の土俵に乗り、どこから外れるのかを整理します。なお本記事は執筆時点(2026年8月)で公表されている情報に基づいており、申請の際は必ず最新の公募要領をご確認ください。

設計DXの投資は「4つの費目」に分けてから制度を選ぶ

まず、これから入れようとしているものを紙に書き出し、次の4つに仕分けてください。この仕分けをしないまま制度を選ぶと、後から「その費用は対象外でした」と分かって計画を組み直すことになります。

  • ① ソフトウェア:建築CAD、BIMソフト、構造計算ソフト、積算ソフトのライセンス購入費
  • ② クラウド利用料:サブスクリプション型のBIM、図面共有・進捗管理のクラウドサービス利用料
  • ③ ハードウェア:高性能ワークステーション、大型モニタ、大判プリンタ、タブレット端末
  • ④ 計測・現場機器:3Dレーザースキャナー、トータルステーション、測量用ドローンなど

費目ごとに、乗る制度が変わります

①と②が投資の主役であれば、まず候補になるのはデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)です。この制度は、事務局に登録されたITツール(ソフト・クラウド等)を導入して業務効率化やDXを進める投資を支援するもので、対象経費にはソフトウェア購入費のほか、クラウド利用料(最大2年分)、設定・研修・マニュアル作成・保守サポートといった導入関連費が含まれます。設計業務のソフト刷新は、この制度の想定にもっとも近い形です。

一方、③や④が投資額の大半を占めるなら、話は変わります。中小企業省力化投資補助金(一般型)は、事業内容やレイアウトに合わせた設備・システム導入を支援する制度で、補助上限は1億円です。ただし設備投資が必須で、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れる必要があります。3Dレーザースキャナーのように単価が張る計測機器を軸に、ソフトや現場端末と組み合わせて設計・施工の工程そのものを作り替える計画であれば、この制度の趣旨に沿います。

登録済みの省力化製品をそのまま導入するタイプであれば中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)、従業員規模が小さく販路開拓と一体で進めるのであれば小規模事業者持続化補助金という選択肢もあります。設計DXという一語でくくらず、投資の中身で制度を選び分けるのが出発点です。

CADメーカーのページだけを見ると起きやすい4つの誤解

ここからが、上位に並ぶベンダー各社のページでは触れられにくい部分です。よく見かける4つの誤解を、順番に整理します。

誤解1:上限3,000万円だから、CAD一式を大きく賄える

デジタル化・AI導入補助金の補助上限は枠によって異なり、通常枠は450万円、インボイス枠は350万円、複数者連携デジタル化・AI導入枠は3,000万円です。3,000万円という数字が一人歩きしがちですが、これは商店街や複数社が共通基盤を一緒に入れる場合の枠であって、1社で自社のCADを刷新する話には当てはまりません。自社単独の設計DXであれば、通常枠450万円が現実的な上限線と考えて資金計画を組んでください。

誤解2:ソフトを買うだけで、省力化投資補助金の1億円枠が使える

中小企業省力化投資補助金(一般型)の上限1億円は目を引きますが、対象になるのは「オーダーメイド性のある設備」です。判定の基準は、省力化に資する汎用設備を複数組み合わせることでより高い省力化効果や付加価値を生み出す場合、あるいは導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合とされています。逆に、単に汎用設備を単体で導入する事業は対象外です。市販のCADソフトを1本入れるだけでは、単価50万円以上という要件をクリアしていても、この制度の土俵には上がりません。

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誤解3:サブスク型なら、毎年ずっと補助される

クラウド型のBIMや図面共有サービスは月額・年額のサブスクリプションが主流ですが、デジタル化・AI導入補助金でクラウド利用料が対象になるのは最大2年分です。3年目以降の利用料は自社負担に戻ります。補助を受けられる2年間で運用を定着させ、3年目からの固定費を織り込んだ収支で判断しておかないと、補助期間が終わったタイミングで「維持できないので解約」という残念な結果になりかねません。

誤解4:BIM用のワークステーションも一緒に買える

ここが設計DXでもっとも見落とされやすい境界線です。デジタル化・AI導入補助金の対象はITツール(ソフト・サービス)が中心で、PC・タブレット等のハード単体購入は対象外です。対象ソフトとセットになる類型で一部が対象になる場合はありますが、その類型でも上限が設定されています。BIMを快適に動かすには相応のスペックのワークステーションが要りますが、「ソフトと同じ制度で機材もまとめて」という前提で見積もりを組むと、自己負担が想定より膨らみます。

賃上げ要件と、達成できなかったときの重さ

制度を選ぶときは、上限額と同じくらい「達成できなかったときに何が起きるか」を見てください。中小企業省力化投資補助金(一般型)は、3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画が必要で、賃上げ目標が要件になっており、未達の場合は達成率に応じて返還が発生しうる設計です。カタログ注文型も労働生産性を年平均3.0%以上向上させる計画が必要で、計画未達時には減額規定があります。

設計DXは、図面作成や積算にかかる時間を減らす投資です。ところが労働生産性は付加価値額を従業員数で割って測るため、「残業が減った」という実感だけでは指標が動きません。削減した工数で受注できる案件を何件増やすのか、外注していた図面のどれを内製に戻すのか。工数削減を売上・付加価値の増加まで翻訳できるかどうかが、制度選択の分かれ目になります。翻訳しきれないと感じるなら、返還リスクの重い制度を無理に狙わない判断も現実的です。

従業員規模が小さい設計事務所・工務店には別ルートがあります

常時使用する従業員が製造業その他で20人以下、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で5人以下であれば、小規模事業者持続化補助金の対象範囲に入ります。補助率は3分の2、補助上限は基本50万円で、インボイス特例で50万円、賃金引上げ特例で150万円が上乗せされ、両方の要件を満たす場合は最大250万円です。

ただしこの制度は「販路開拓」が主題です。設計DXそのものより、3Dパースを使った提案力の強化やウェブサイトでの施工事例発信といった売り方の改善に軸足を置く計画のほうが筋が通ります。経費区分にも注意が必要で、ウェブサイト関連費は補助金交付申請額の上限が30万円(税込)で、ウェブ関連費のみの申請はできません。広報費も同様に30万円(税込)上限かつ単独申請は不可です。

順番を間違えると、制度そのものが使えなくなります

最後に、時間軸の話をします。ここを外すと、どれだけ良い計画を書いても申請できません。

  • 登録ベンダー経由が前提:デジタル化・AI導入補助金は、事務局に登録されたIT導入支援事業者の支援を受けて申請する前提で、導入するツールも登録品であることが前提です。「使いたいCADが決まっている」なら、そのツールと販売店が登録されているかを先に確認してください。登録されていなければ、その制度では入りません。
  • 交付決定前の発注は対象外:採択の通知だけでは事業を始められません。小規模事業者持続化補助金では、交付決定日前に行った発注・契約・支払は対象外と明記されています。年度末の納品に間に合わせようとして先に発注すると、その費用がまるごと対象外になります。
  • 商工会・商工会議所の書類は締切が別:小規模事業者持続化補助金の第20回公募では、申請受付開始が2026年11月5日、申請受付締切が2026年12月15日17時ですが、事業支援計画書(様式4)の発行受付締切は2026年12月4日です。この締切以降の発行依頼は、いかなる理由でも受け付けられません。
  • GビズIDプライムの取得:小規模事業者持続化補助金は電子申請のみで、GビズIDプライムのアカウントが必須です。取得には日数がかかるため、制度を検討し始めた段階で並行して手続きを進めておくと安全です。

よくある質問

Q. 構造計算ソフトや積算ソフトも対象になりますか

デジタル化・AI導入補助金は、事務局に登録されたITツールを導入することが前提の制度です。したがって「構造計算ソフトだから対象/対象外」という切り分けではなく、そのソフトが登録ツールとして掲載されているかどうかで判断します。導入目的が生産性向上(業務効率化・DX)に結びついていることも要件です。

Q. 新しい設計サービスを立ち上げる場合はどうなりますか

点群データを使った測量代行や、BIMモデルの作成受託など、これまでやっていなかったサービスを新たに事業化するなら、既存業務の効率化とは制度の趣旨が変わります。この場合は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の各枠が検討対象になります。ただし新事業進出枠は補助下限が750万円、革新的新製品・サービス枠は補助下限が100万円と設定されており、補助上限も従業員規模によって変わります。投資規模が下限に届かない計画では申請できないため、まず金額感を確認してください。

Q. 補助金を受け取ったときの経理処理はどうすればよいですか

補助金の入金時期や会計・税務上の取り扱いは、事業年度や導入資産の内容によって結論が変わります。個別の判断が必要になる領域ですので、顧問税理士や税務の専門家にご確認ください。V-Spiritsグループにも各分野の専門家が在籍しています。

まとめ

建設業の設計DXで補助金を検討するときは、「設計DXに使える補助金はどれか」ではなく、「自社が買おうとしているものを費目に分けたとき、それぞれどの制度に乗るか」という順番で考えると迷いません。ソフトとクラウドが主役ならデジタル化・AI導入補助金、計測機器を軸に工程を作り替えるなら中小企業省力化投資補助金(一般型)、従業員規模が小さく販路開拓と一体で進めるなら小規模事業者持続化補助金、というのが大まかな見取り図です。

そのうえで、通常枠450万円という現実線、クラウド利用料は最大2年分という期間の壁、ハード単体購入の扱い、そして賃上げ要件と返還リスク。この4点を先に押さえておけば、ベンダーの案内を読むときにも「自社の場合はどこまでか」を自分で判断できるようになります。制度は年度ごとに見直されますので、実際に動かす前には必ず最新の公募要領で確認しながら進めてください。

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三浦高

この記事を書いた人

三浦高/Takashi Miura

元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者

産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。

融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

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この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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