
ICT施工の補助金申請は、5つの工程のどこを自社に持つかで決まります
公共工事でICT活用工事の指定が増え、ICT建機や測量機の見積を取り始めた土木・舗装工事会社の経営者から、「ものづくり補助金は使えるのか」という相談をいただきます。制度の候補までは調べていて、次に何を決めればよいかで止まっている段階です。
ここで見積から入ると話が戻ります。ICT施工は機械を1台入れて終わる取り組みではなく、測量からデータ納品までの工程の束だからです。どこを自社に持ち、どこを外に出すのかが決まっていないと、申請する枠も見積の中身も成果目標も定まりません。この記事では工程の切り分けを起点に、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の申請の組み立て方を整理します。数字は2026年度第1回公募の公募要領1.0版(令和8年6月)に基づく執筆時点の情報です。
ICT施工は「機械1台」ではなく、5つの工程で定義されています
発注機関がICT活用工事として扱う範囲は、機械の種類ではなく工程で定義されています。愛知県が公表しているICT活用工事の資料では、「施工プロセスの全ての段階もしくは一部の段階において、次の(1)〜(5)に示すICT施工技術を全面的に活用する工事」として次の5つが列記されています。
- (1) 3次元起工測量
- (2) 3次元設計データ作成
- (3) ICT建設機械による施工
- (4) 3次元出来形管理等の施工管理
- (5) 3次元データの納品
発注方式にも区分があり、同資料では発注者指定型・発注者指定簡易型・受注者希望型1型・受注者希望型が挙げられています。指定されて受けるのか自社から手を挙げるのかで、体制を作る期限が変わります。
5工程を全部そろえないとICT施工ではない、という枠組みではありません。一部の段階だけでも成立するので、自社がどこを担うかには幅があります。その幅が、補助金の申請書を書くときの最初の分岐になります。
切り分けが決まると、申請する枠が決まります
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金には複数の枠があり、ICT施工の投資で候補になるのは革新的新製品・サービス枠と新事業進出枠です。どちらに乗るかは、工程の切り分けが示す「何が新しくなるのか」で分かれます。
革新的新製品・サービス枠は、自社の技術力等を活かして顧客等に新たな価値を提供する新製品・新サービスを開発する取組が対象です。単なる設備・システム導入、既存製品・サービスの生産プロセス改善、同業で既に相当程度普及している開発は対象外とされています。パターンAのように施工の効率化にとどまる説明では、この枠の入口に立ちにくくなります。
新事業進出枠は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。新たに提供する製品等が申請者にとって新規性を持ち、その市場も申請者にとって新たな市場であることが求められます。日本初・世界初ではなく申請者にとっての新規性という基準なので、パターンCまで進めて他社の現場向けに測量やデータ処理を外販するなら、この枠で説明を組み立てやすくなります。
どちらの枠でも事業計画は申請者自身が作成するものとされ、外部への丸投げは不採択・取消の対象です。工程の切り分けを自社で言語化することが、そのまま計画書の骨格になります。
💬 執筆者の三浦から一言
事務局で申請書を見ていた立場から順番の話をひとつ。見積を集めてから枠を選ぶと、革新的新製品・サービス枠の下限100万円、新事業進出枠の下限750万円という床に届かない、あるいは届きすぎる、という手戻りが起きます。工程の切り分けを先に決めると、投資額の輪郭が先に出るので、床と天井のどちらに当たるのかを見積を頼む前に判断できます。
見積の重心が変わると、下限と上限に当たる位置も変わります
枠が決まると金額の当てはめに進みます。補助率は両枠とも中小企業者で1/2、小規模企業・小規模事業者・再生事業者や地域別最低賃金引上げ特例の適用時は2/3です。上限と下限は枠で異なります。
- 革新的新製品・サービス枠:補助下限100万円。補助上限は従業員規模別で、1〜5人750万円/6〜20人1,000万円/21〜50人1,500万円/51人以上2,500万円(大幅賃上げ特例の適用時は各850/1,250/2,500/3,500万円)
- 新事業進出枠:補助下限750万円。補助上限は1〜20人2,500万円/21〜50人4,000万円/51〜100人5,500万円/101人以上7,000万円(大幅賃上げ特例の適用時は各3,000/5,000/7,000/9,000万円)
公表されている3,500万円・9,000万円は最大の従業員規模に大幅賃上げ特例を重ねた最大値で、無条件の上限ではありません。自社の規模で読み替えると見える金額は変わります。
経費の側にも枠組みがあります。機械装置・システム構築費は単価10万円(税抜)以上が対象で、両枠ともこの区分が主軸です。技術導入費・知的財産権等関連経費は各1/3、外注費は1/4、専門家経費は1/5が上限で、外注費は主たる内容の外注が認められていません。クラウドサービス利用費や運搬費も対象経費に含まれます。
💬 執筆者の三浦から一言
事務局で申請書を見ていた立場から順番の話をひとつ。見積を集めてから枠を選ぶと、革新的新製品・サービス枠の下限100万円、新事業進出枠の下限750万円という床に届かない、あるいは届きすぎる、という手戻りが起きます。工程の切り分けを先に決めると、投資額の輪郭が先に出るので、床と天井のどちらに当たるのかを見積を頼む前に判断できます。
成果目標の数字は、内製した工程から出てきます
両枠に共通する基本要件として、事業計画期間(3〜5年)で付加価値額の年平均成長率が+4.0%以上、一人当たり給与支給総額の年平均成長率が+3.5%以上、事業場内最低賃金が毎年地域別最低賃金+30円以上の水準、という3つが置かれています。賃上げと事業場内最低賃金は未達の場合に返還の対象となります。上限を引き上げる大幅賃上げ特例は、給与支給総額が年平均+6.0%以上かつ事業場内最低賃金が+50円以上という条件です。
ここで工程の切り分けが効きます。付加価値額が伸びる理由を、機械の稼働時間ではなく内製した工程から説明できるかどうかです。起工測量や設計データ作成を自社に取り込むなら、社外に出ていた費用が社内に残る構造として書けます。施工工程だけを担う形なら、同じ人数で施工できる面積や工期の変化として書きます。根拠の数字は自社の直近の実績から拾います。
補助事業実施期間も枠で異なり、革新的新製品・サービス枠は交付決定日から10か月以内(採択発表日から12か月以内)、新事業進出枠は交付決定日から14か月以内(同16か月以内)です。機器の納期と現場の繁忙期を並べ、期間内に導入と稼働が収まるかを確認します。
よくある質問
まだICT活用工事を受注していない段階でも申請できますか
受注実績の有無より、事業計画として説明が成り立つかで見られます。受注者希望型で手を挙げる方針なら、対象工種と体制づくりの段取りを計画に書き込みます。ただし新事業進出枠は、新規設立・創業後1年に満たない事業者が対象外とされ、最低1期分の決算書が必要です。
3次元設計データ作成を外注する費用は対象になりますか
外注費という区分はありますが、補助対象経費総額の1/4が上限で、主たる内容の外注は認められていません。設計データ作成が事業の中心である計画で、その工程を丸ごと外注する組み立てにすると、この条件に触れる可能性があります。
先に発注してから申請してもよいですか
交付決定前の発注・契約・購入は対象外とされています。国や公的制度との二重受給も同様です。機器の納期が読みにくい時期でも、発注の順番は動かさない前提で工程表を引きます。
まとめ
ICT施工への投資で新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を検討するときは、制度の比較より前に、3次元起工測量から3次元データの納品までの5工程のどこを自社に持つかを決めます。切り分けが決まれば、どちらの枠で説明するかが決まり、見積の重心と補助下限・上限の当たり方が決まり、成果目標の数字の出どころも決まります。
なお、記載した金額・要件・スケジュールは公募要領1.0版(令和8年6月・第1回公募)に基づく執筆時点の情報です。回次により変更されるため、申請前に最新の公募要領で確認してください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























