
テラス席・個室化に飲食店が使える補助金は?対象外になる工事の境界線と制度3つ
テラス席の増設と客席の個室化、補助金の対象は「建物か」で分かれます
席を増やしたい、あるいは席を区切って落ち着ける空間にしたい。飲食店の改装でよく出てくるこの2つは、工事としては似ていても、補助金の世界では別の扱いになることがあります。分かれ目は工事の見た目ではなく、その工事が「建物をつくる(広げる)工事」と読まれるかどうかです。
この記事は、開業から数年が経ち、客席のレイアウトを変えて売上を伸ばしたいと考えている飲食店の方に向けて、テラス席の増設と客席の個室化のどこで対象判定が割れるのかを一問一答で整理したものです。数字と要件は2026年度の公募要領にもとづく執筆時点の情報です。
Q1. テラス席を増設する工事は補助金の対象になりますか
同じ「テラス席」でも、構造によって扱いが変わります。小規模事業者持続化補助金では、店舗改装やバリアフリー化工事を委託・外注費として計上できる一方で、建物の増築・増床や「不動産の取得」にあたる工事は対象外になりやすい、という線引きがあります。
この判定に使われるのが、外気分断性・土地への定着性・用途性という3つの見方です。屋根と支柱だけで組んだ開放的なテラスは、外気を分断していないため建物として扱われない方向に傾きます。反対に、壁と屋根で四方を囲い、基礎で地面に固定し、客席として継続的に使う形になるほど、増築とみなされる方向へ近づきます。
つまり「テラス席だから対象外」でも「テラス席だから対象」でもありません。どこまで囲うか、どう固定するかという設計上の選択が、そのまま対象判定に効いてきます。最終的な判定は事務局が公募要領にもとづいて行うため、設計を固める前に商工会・商工会議所の窓口へ図面を持ち込んで相談する進め方が現実的です。
なお、屋外に構造物を設ける場合は、建築関係の法令や自治体の取扱いにかかわる確認が別途必要になることがあります。補助金の対象判定とは別の話なので、施工会社や所管の窓口とあわせて整理してください。
Q2. 客席を個室化する間仕切り工事はどうですか
既存の建物の内側で間仕切りを立てる工事は、床面積が増えるわけではないため、増築・増床の論点には基本的に触れません。持続化補助金であれば、委託・外注費の店舗改装として組み立てやすい工事にあたります。
ただし、こちらには別の関門があります。持続化補助金は「販路開拓」が主題の制度で、通常の営業活動の延長と読まれる取組は対象外になりやすい設計です。傷んだ内装を直す、古くなった仕切りを入れ替えるといった現状回復の色が濃いと、販路開拓の取組としては説明しづらくなります。
個室化を販路開拓として説明するなら、「いま誰に売れていないのか」から書き起こす順番になります。接待や少人数の会食など、現状の席配置では取りこぼしている客層を具体的に置き、その層に届けるために区切られた席が要る、とつなげます。席を区切ること自体が目的になっている計画は、工事としては通っても計画としては弱くなります。
Q3. 候補になる制度はどれですか
客席まわりの工事で候補に挙がるのは次の3つです。投資の規模と工事の中身で、入口がほぼ決まります。
小規模事業者持続化補助金
補助率は3分の2、補助上限は基本50万円で、インボイス特例で50万円、賃金引上げ特例で150万円が上乗せされ、両方の要件を満たすと最大250万円になります。飲食店は「商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)」に当たり、常時使用する従業員5人以下が対象です。申請は電子申請のみで、GビズIDプライムのアカウントを事前に取得しておく必要があります。第20回公募は申請受付が2026年11月5日から、締切が2026年12月15日17時、採択発表は2027年3月頃の予定です。
上乗せ部分だけでなく、通常枠・特例の要件を1つでも満たさないと全体が交付対象外になる設計なので、上限額から逆算して工事の規模を決める組み立てとは相性がよくありません。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠
3つのうち唯一、建物費が対象経費に入る枠です(単価10万円税抜以上。建物の単なる購入・賃貸は対象外)。ただし補助下限が750万円あるため、補助率2分の1なら1,500万円規模の投資が前提になります。補助上限は従業員規模別で、1〜20人なら2,500万円です。新規設立・創業後1年に満たない事業者は対象外で、最低1期分の決算書が要ります。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠
こちらは機械装置・システム構築費が必須かつ主軸で、建物・基礎工事・家賃は対象外です。厨房機器や専用装置の導入が投資の中心なら候補になりますが、内装工事が費用の大半を占める計画とはかみ合いません。
💬 執筆者の三浦から一言
事務局で申請書を見ていた立場から言うと、制度選びで後回しにされやすいのが、要件を外したときの重さです。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の各枠は、賃上げの基本要件を満たせないと補助金の返還が生じます。同じ未達でも、返還になる制度と減額にとどまる制度があります。見積が枠に収まるかだけでなく、数年先まで守れる要件かどうかで選び分けてください。
Q4. 席を増やすだけで「新事業」として申請できますか
新事業進出枠は、新たに提供する製品やサービスが申請者にとって新規性を持ち、その市場も申請者にとって新しいことを求めます。既存事業と同一市場、既存製品の増産、単なる製法変更、単なるメニュー追加、商圏が違うだけといったものは、この枠の「新事業進出」に該当しないと公募要領で整理されています。
席数を増やす、席を区切るという投資は、そのままでは「いまの商売をもう少し広く回す」話として読まれます。この枠で通すなら、席そのものではなく、その席で何を新しく売るのかを事業の中心に置き直す作業が要ります。そこまでの絵が描けないのであれば、投資規模を落として持続化補助金の販路開拓の取組としてまとめるほうが、制度との相性は素直です。
Q5. いつ工事を発注してよいですか
どの制度でも共通するのは、交付決定日より前に行った発注・契約・支払は対象外になるという点です。採択の通知が届いただけでは事業を始められません。持続化補助金では、商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)の受付締切が2026年12月4日で、この日を過ぎた発行依頼はいかなる理由でも受け付けられないとされています。
支払方法の決まりもあります。支払は銀行振込が原則で、1取引10万円(税抜)を超える現金払いは使えません。単価50万円(税抜)を超える機械装置等や、50万円(税込)を超える発注には2者以上の相見積が要ります。改装工事はこの金額帯に入りやすいため、施工会社を1社に決めてから制度を調べる順番だと、見積の取り直しが発生します。
Q6. テラスに置くパラソルやヒーター、可動式の仕切りはどう扱いますか
工事ではなく備品として買うものは、持続化補助金では機械装置等費の店舗備品として整理できます。中古品を使う場合は条件があり、単価50万円(税抜)未満で、かつ2者以上の見積が要ります。
ここで見積を分けておく意味があります。同じテラス席まわりの投資でも、囲いをつくる部分は建物かどうかの判定に引っかかり得る一方、置くだけの什器はその論点に触れません。見積書を「工事」と「備品」で分けておけば、どこまでが対象になるのかという相談が具体的にできます。
まとめ
テラス席と個室化は、工事の規模より先に、次の順番で整理すると判断が早くなります。
- その工事が建物を広げる工事と読まれるか(外気分断性・土地への定着性・用途性)
- その工事で誰に何を売るのかを、販路開拓または新規性として説明できるか
- 投資額が制度の下限・上限に収まるか(持続化補助金は最大250万円、新事業進出枠は補助下限750万円)
- 交付決定より前に発注していないか
ここまでの数字と要件は執筆時点の公募要領にもとづくものです。公募回ごとに見直される部分があるため、実際の申請では最新の公募要領と申請先の窓口で確認してください。どの制度で組み立てるかという入口の段階からでも、V-Spiritsでご相談いただけます。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























