
飲食店のWeb広告・LP制作に使える補助金|対象経費の境界と申請の落とし穴
飲食店のWeb広告・LP制作は補助金で戻せる?対象になる経費の線引きと申請でつまずかないための注意点
「集客が伸び悩んできたので、LP(ランディングページ)やWeb広告にまとまった予算を投じたい。どうせなら補助金で少しでも取り戻せないだろうか」——数年お店を続けてきた飲食店オーナーの方から、こうしたご相談が増えています。結論からお伝えすると、飲食店のWeb広告・LP制作費に使える可能性のある補助金はあります。ただし「広告費が丸ごと戻る」と思い込んで先に発注してしまうと、対象外・上限オーバーで、想定していた金額の数分の一しか受け取れないという失敗が起きがちです。
この記事では、2026年の執筆時点の情報をもとに、対象になる経費とならない経費の境界、そして申請でつまずきやすい落とし穴を、数年経営の飲食店オーナー向けに実務目線で整理します。補助金は制度改正や公募回次によって金額・要件が変わるため、実際の申請前には必ず最新の公募要領をご確認ください。
結論:飲食店のLP・Web広告は「小規模事業者持続化補助金」が主軸になります
飲食店が販路開拓のために行うホームページ・LP制作やネット広告の費用は、小規模事業者持続化補助金の対象経費に該当し得る、中心的な制度です。この補助金は、小規模事業者が販路開拓(新たな顧客を増やす取り組み)に使った経費の一部を補助するもので、Web集客の費用と相性がよいのが特徴です。
まず対象になる事業者かどうかを確認しましょう。対象は「小規模事業者」で、業種ごとに常時使用する従業員数の上限が決まっています。商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は従業員5人以下、宿泊業・娯楽業は20人以下、製造業その他は20人以下です。一般的な飲食店は「商業・サービス業」にあたり、多くの場合は従業員5人以下の枠での判定になります。なお、会社役員や個人事業主本人、同居の親族従業員などは従業員数にカウントされません。
補助率は原則2分の1ではなく3分の2で、賃金引上げ特例のうち赤字事業者にあたる場合は4分の3です。補助上限は基本で50万円。ここにインボイス特例や賃金引上げ特例の要件を満たした場合の上乗せが加わり、両方の特例要件を満たすと最大250万円まで広がります。ただしこの250万円は、あくまで特例要件をすべて満たした場合の「最大値」であり、無条件の上限ではない点に注意してください。基本の上限は50万円だという前提で資金計画を立てるのが安全です。
対象になりやすい経費(ウェブサイト関連費・広報費の例)
飲食店のWeb集客に関わる経費は、主に次の2つの区分に整理されます。
- ウェブサイト関連費:ウェブサイト・ECサイトの制作や更新、ネット広告、バナー、PR配信、ECモール利用料、SEO、商品画像・動画の制作など。LP制作やWeb広告はこの区分に入ることが多いです。
- 広報費:チラシ、広告掲載、看板、DM発送、デジタルサイネージ広告など。紙媒体や店頭の販促はこちらに整理されます。
「Web広告だから広報費」と考えてしまいがちですが、インターネット上の広告はウェブサイト関連費の側に入るのが一般的です。区分を取り違えると次に説明する上限計算がずれてしまうため、経費の割り振りは慎重に行いましょう。
【落とし穴1】Web広告・LP制作「だけ」では申請できず、30万円の上限があります
ここが、この記事でもっともお伝えしたいポイントです。ウェブサイト関連費には、補助金の交付申請額のうち上限30万円(税込)という区分ごとの上限が設けられており、しかもウェブサイト関連費のみでの申請はできません(第20回公募で明確化されています)。以前は「ウェブ関連費は交付申請額の4分の1・最大50万円まで」というルールでしたが、現在は定額30万円(税込)の上限に変わっています。制作会社などのやや古い解説記事では旧ルールのまま書かれていることがあるので、金額の思い込みには注意してください。
広報費についても同様に、上限30万円(税込)で、広報費のみの申請は不可です。つまり「LP制作費やWeb広告費だけで持続化補助金を申請する」という計画は、そもそも成立しません。Web集客の費用を補助金の対象にしたい場合は、店舗の他の販路開拓の取り組み(例えば新メニュー開発に伴う販促や、店舗の改装を伴う集客強化など)と組み合わせ、その全体の中でウェブサイト関連費を位置づける設計が必要になります。
【落とし穴2】対象になる経費と、対象外になりやすい経費の境界
飲食店では販促の投資と設備の投資が入り混じりやすく、「これは対象だろう」と思ったものが対象外だった、というズレが起きがちです。境界を押さえておきましょう。
対象になりやすいもの
ホームページ・LPの制作や更新、ネット広告の出稿、SEO対策、集客用のバナーや商品写真・動画の制作などは、販路開拓を目的とした取り組みとして対象になり得ます。いずれも「新たな顧客を増やすための取り組み」であることが前提です。
対象外・注意が必要なもの
- キッチンカーなどの車両:自動車やフォークリフト、キッチンカーといった車両は原則として対象外です。
- 不動産の取得扱いになる工事:建物の増築・増床など「不動産の取得」に当たる工事は対象外になりやすく、外気分断性・土地への定着性・用途性の3要件で判定されます。
- 通常の営業活動と見なされる経費:日常的に続けている広告出稿など、通常の営業活動の範囲と判断されると、販路開拓の「新たな取り組み」に該当せず対象外になりやすいです。
- 交付決定日より前の発注・契約・支払:採択の通知が届いただけでは事業を始められません。交付決定日より前に発注・契約・支払をした経費は対象外です。ここは特に事故が多いポイントです。
あわせて、支払は原則として銀行振込で行う必要があり、1取引で税抜10万円を超える現金払いは認められません。また、税込50万円を超える発注では2者以上の相見積もりが求められます。Web制作を1社に相見積もりなしで発注してしまうと、金額によっては後から問題になることがあるため、発注前に見積もりの取り方まで確認しておきましょう。
【落とし穴3】予約・CRMなどITツール導入なら別の補助金も。ただし広告・LP単体は筋が違います
「Web関連の投資」とひとくくりにされがちですが、予約管理システムやCRM(顧客管理)、ECの仕組みなど、ITツールの導入が主目的の場合は、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)という別の制度が候補になります。枠によって上限は異なり、通常枠で450万円などが設定されています(金額に触れる際は枠名とあわせて確認してください)。
ただし、この制度は事務局に登録されたIT導入支援事業者(ベンダー等)の支援を受けて、登録されたITツールを導入することが前提で、導入の目的が生産性向上(業務効率化やDX)に結びついている必要があります。対象になるのはソフトウェア購入費やクラウド利用料(最大2年分)、設定・研修などの導入関連費が中心です。そのため、Web広告の出稿費やLP制作「単体」は対象になりにくいと考えておくのが現実的です。集客のためのLP・広告そのものが目的であれば持続化補助金、業務を効率化するシステム導入が目的であればデジタル化・AI導入補助金、と目的で切り分けると迷いにくくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. ネット広告の出稿費そのものは補助金で戻りますか?
ネット広告はウェブサイト関連費に含まれ得ますが、この区分は上限30万円(税込)で単独申請ができません。また、日常的に続けている広告出稿は通常の営業活動と見なされ、販路開拓の新たな取り組みに該当しないと対象外になりやすい点にも注意が必要です。
Q. 交付決定の前に依頼した制作費は対象になりますか?
対象外です。交付決定日より前の発注・契約・支払は補助の対象になりません。採択の通知が来ても、交付決定を待ってから発注するのが原則です。
Q. 個人経営の飲食店でも使えますか?
個人事業主も対象になり得ます。従業員規模などの小規模事業者の要件を満たすことが前提で、電子申請にはGビズIDプライムが必要です。また、商工会・商工会議所の支援を受けて事業支援計画書(様式4)を発行してもらう手続きも必要になります。
Q. 他の補助金と併用できますか?
同じ経費を複数の制度で二重に補助してもらうことはできません。国が助成する他の制度と重複する経費は対象外となるため、経費ごとにどの制度を使うかを整理しておきましょう。
まとめ:先に発注しない・単独申請にしない・最新の上限で計算する
飲食店のLP制作・Web広告に補助金を使う際は、次の3点を押さえておくと失敗を避けやすくなります。1つ目は、交付決定を待ってから発注すること。先に発注した費用は対象外になります。2つ目は、Web関連費だけの単独申請はできないため、他の販路開拓の取り組みと組み合わせて計画を組むこと。3つ目は、ウェブサイト関連費の上限を最新の30万円(税込)で計算し、古い情報のまま過大な期待をしないことです。
参考までに、小規模事業者持続化補助金の第20回公募のスケジュールは、申請受付開始が2026年11月5日、事業支援計画書(様式4)の発行受付締切が2026年12月4日、申請受付締切が2026年12月15日17時、採択発表が2027年3月頃(予定)とされています。様式4は受付締切を過ぎるといかなる理由でも発行されないため、商工会・商工会議所への相談は早めに動き出すことをおすすめします。ここで挙げた金額・要件・スケジュールはいずれも執筆時点・第20回公募のものです。実際の申請前には、必ず最新の公募要領で最新の情報をご確認ください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























