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コラム

士業の独立で創業融資はいくら必要?金額設定の5つの落とし穴

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士業の独立で借りる金額は、必要額ではなく説明できる額で決まります

行政書士・税理士・社会保険労務士といった資格で独立するとき、開業までにかかる費用はある程度見えていても、「創業融資でいくら申し込むか」の一行だけがなかなか決まらない、という相談をよくいただきます。事務所の家賃や登録の費用は調べれば出てきますが、申込額そのものには相場表がないからです。

ここで多いのが、必要額を計算して終わりにしてしまう進め方です。実際の審査では、その金額が資金使途としてどこまで説明できるかが見られ、説明の裏付けが薄い部分から削られていきます。この記事では、士業の独立で申込額を決めるときに起きやすい5つの落とし穴を、日本政策金融公庫の制度の数字とあわせて整理します。数字は2026年6月1日現在のものです。制度や利率は変わりますので、申請前には申請先で最新の内容をご確認ください。

申込額は「必要額」ではなく「説明できる額」で決まります

創業融資の主力は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月までの名称は「新規開業資金」で、無担保・無保証の特例だった「新創業融資制度」は2024年3月に廃止され、現在は各融資制度に無担保・無保証の枠組みが組み込まれています。審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。

ここで押さえておきたいのは、申込書に書くのが「必要な金額」ではなく「何にいくら使うか」だという点です。金額は資金使途の積み上げの結果として出てくるもので、逆に言えば、積み上げの中身を説明できない部分は、その分だけ根拠のない金額として扱われます。以下の5つは、その説明が崩れやすい典型的なつまずき方です。

落とし穴1:総額から自己資金を引いた残りを、そのまま希望額にする

開業にかかる総額を出し、そこから手元の自己資金を引いて、残りを希望額にする。計算としては自然ですが、この出し方だと総額の中身がひとかたまりのままです。面談で「この金額の内訳は」と聞かれたときに、項目ごとの見積書や根拠に分解できないと、説明として持ちません。

先に決めるのは、何をいつ買い、何にいくら払うかのほうです。見積書が取れるものは見積書で、継続的に出ていくものは月額と月数で押さえます。そのうえで自己資金をどこに充てるかを決めると、申込額は自動的に決まります。なお自己資金については、制度上、額や割合の要件は決まっていません。よく見かける「総額の何分の1が必須」という説明は、2024年3月に廃止された旧制度の名残です。額そのものは審査の重要な判断材料になりますが、要件ではない点は分けて理解しておいてください。

落とし穴2:限度額7,200万円を必要額の目安として使う

新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額は7,200万円で、うち運転資金は4,800万円です。この数字を見て、士業の独立でもある程度は借りられるはずだと考えてしまうことがありますが、限度額はあくまで制度側の枠であって、必要額の目安ではありません。

士業の開業は、店舗を構える業種と比べて設備の金額が小さくなりやすく、資金使途に積み上げられる項目自体が限られます。枠が大きいことと、その金額まで説明が届くことは別の話です。限度額は「この範囲までなら制度として扱える」という上限として読み、申込額はあくまで自分の資金使途から出してください。

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落とし穴3:通りやすさを狙って、必要額より少なく申し込む

金額を小さくすれば通りやすいのではないか、という発想もよくあります。ただ、少なく借りて途中で足りなくなった場合、追加の融資は改めて審査を受けることになります。創業直後は事業として創業した実績がまだ積み上がっていない時期なので、当初の計画で見込んでいたはずの資金を後から足すのは、最初にまとめて説明するより手間がかかります。

手元の資金を厚くしておきたいものの、返済の負担が心配だという場合は、元金返済の据置期間を使う選択肢があります。据置は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いです。金額を削るのか、据置で当面の負担を抑えるのかは別々の判断なので、混ぜて考えないほうが整理しやすくなります。

小峰精公

💬 執筆者の小峰から一言

信用金庫で融資を出す側にいたころは、自己資金の残高そのものより、そのお金がどう貯まったのかを先に見ていました。士業の独立は準備の期間が長くなりやすく、そのぶん預金の動きも長く残ります。申込額を詰める前に、面談の時点で口座に確認できる形へ整えて、入金の経緯を順に説明できるようにしておくと、金額の話が進めやすくなります。

落とし穴5:「創業だから決算書は関係ない」と思い込む

創業融資は事業として創業した実績がなくても申し込めますが、決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていれば、その決算書が確認されます。また、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。

士業の独立では、既に別の法人を持っている方や、勤務しながら小規模に事業を始めていた方も少なくありません。申込額の説明とあわせて、既に決算が済んでいる会社があるならその内容も踏まえて話せるように整理しておくと、面談が進めやすくなります。決算の内容と審査結果が直結するわけではありませんので、あくまで説明できる状態にしておく、という位置づけで準備してください。

金額を決める前に押さえておきたい数字

申込額の検討と並行して、次の数字も見ておくと判断がしやすくなります。

2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内で設定され、据置中は利息のみの支払いとなります。なお、この引下げは担保の有無によって対象が変わるものではありません。

スケジュールは、書類提出後おおむね3週間から1か月が実行までの目安です。創業計画書や自己資金の資料、見積書などを整える時間を含めると、準備に1か月、審査と実行に1か月で、合計2か月ほどを見ておくと安全です。申込額を詰める作業は、この準備期間の中で行うことになります。

まとめ

士業の独立で創業融資の金額を決めるときは、次の順で考えると迷いが減ります。

  • 総額から逆算せず、何にいくら使うかを項目ごとに積み上げる
  • 限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)は制度の枠として読み、必要額の目安にしない
  • 足りなくなったときの追加融資は改めて審査になる前提で、削るかどうかを判断する
  • 既に決算が済んでいる会社があるなら、その内容も説明できるように整理しておく

金額は、必要額を計算した時点ではまだ半分しか決まっていません。その金額を資金使途として説明できる状態まで持っていって、はじめて申込額になります。判断に迷う部分が残るときは、申請先や専門家に相談しながら固めていくのが確実です。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

多胡藤夫

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】

税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1,000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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