
鍼灸整骨院を複数施術メニューで開業するときの創業融資|単科の院と変わる点・変わらない点
柔道整復と鍼灸の両方を提供する、いわゆる複数施術ができる鍼灸整骨院で開業を考えると、「施術メニューが多い院は、単科の整骨院より創業融資の受け方が変わるのだろうか」と気になる方は多いはずです。設備も増え、内装も広くなりがちなので、融資額や審査の見られ方が違ってくるのではと不安になるのも自然なことです。
この記事では、これから複数施術のできる鍼灸整骨院の開業を目指す有資格者の方に向けて、単科の院と複合的な院とで創業融資の「変わる点」と「変わらない点」を整理します。あわせて、必要資金が増えやすい理由や、準備しておきたい書類までを、比較しながら解説します。なお、金利や制度の数字は変わりやすいため、本文は執筆時点の情報である点をご了承ください。
そもそも融資「制度」は複数施術できる院でも変わる?
結論から言うと、利用できる融資制度そのものや基本的な条件は、施術メニューの数で変わりません。開業時の代表的な選択肢は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在はこの制度が主力となっています。
この制度は、原則として無担保・無保証人での借入が可能で、融資限度額は最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)程度です。基準利率は2026年6月1日現在、無担保で創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%が目安です。創業期に無担保で利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。これらの枠組みは、単科の整骨院でも複数施術のできる院でも共通です。
つまり、「複数施術ができるから特別な融資制度がある」「メニューが多いと金利が変わる」といったことは基本的にありません。変わってくるのは、制度そのものではなく必要になる資金の規模と、事業計画書での見せ方です。
単科の院と複合的な院で「変わる点」「変わらない点」
整理すると、次のように分けて考えると分かりやすくなります。
変わらない点
- 利用する融資制度(新規開業・スタートアップ支援資金など)
- 無担保・無保証人が原則という枠組み
- 金利・限度額・据置期間などの基本条件
- 審査で事業計画書と自己資金などが重視されること
変わりやすい点
- 必要になる開業資金の総額(設備・内装が増えやすい)
- そのため申請する融資希望額の目安
- 事業計画書で説明する収益の組み立て方
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。この点は単科でも複合的な院でも変わりません。有資格者としての施術経験は強みになりますが、それだけで結果が決まるわけではなく、あくまで計画全体の説得力が見られます。
複数施術のできる院で必要資金が増えやすい理由
複数施術のできる鍼灸整骨院は、単科の院に比べて開業資金が大きくなりやすい傾向があります。主な理由は次のとおりです。
- 設備が増える:柔道整復に使う物療機器に加えて、鍼灸で使う備品や電療機器など、扱う施術に応じた設備が必要になります。施術ベッドの台数も増えがちです。
- スペースが広くなる:施術メニューが多いほど、施術スペースや待合を広く取ることになり、物件取得費や内装工事費が上がりやすくなります。
- 運転資金を厚めに見ておく必要がある:保険診療を行う場合、施術料の保険請求分は入金までに一定の時間がかかります。開業初期に患者数が安定するまでの人件費などを含め、運転資金には余裕を持たせておくことが大切です。
必要資金が増えれば、その分だけ申請する融資希望額も大きくなります。金額が大きくなるほど、なぜその設備・その規模が必要なのかを事業計画書で丁寧に説明できるかどうかが重要になります。
複数施術のできる院は審査で有利になりますか?
「メニューが多いほうが審査に通りやすいのでは」と考える方もいますが、必ず有利になるとは言い切れません。ただし、計画書の作り方によっては、複数施術ができることを強みとして示せる場面があります。
たとえば、柔道整復による保険診療と、鍼灸などの自費メニューという複数の収益の柱を持つことは、季節や患者層の変化に対して収益が偏りにくいという説明につなげられます。一つのメニューだけに頼らない収益構成を、根拠のある数字とともに示せると、事業の安定性を伝えやすくなります。
一方で、メニューを増やすほど設備投資が重くなり、回収に時間がかかるという側面もあります。売上の見込みが設備規模に見合っているか、開業当初から複数メニューを全開で始める必要が本当にあるのかは、冷静に検討しておきたいところです。強みと負担の両面を踏まえて計画を組むことが、結果的に説得力につながります。
開業融資に向けて準備しておきたいこと
複数施術のできる鍼灸整骨院の開業融資では、次のような準備が中心になります。
- 創業計画書:提供する施術メニュー、ターゲットとする患者層、価格設定、売上の見込みと根拠を具体的に書きます。複数メニューがある場合は、それぞれの収益の見込みを分けて示すと分かりやすくなります。
- 自己資金の確認できる資料:自己資金は制度上の額や割合の決まりはありませんが、審査の重要な判断材料になります。面談時点で口座に確認できる形にしておきましょう。開業前に自費で購入した設備や備品などは、みなし自己資金として評価されることがあるため、領収書を保管しておくと安心です。
- 設備・内装の見積書:導入する機器や内装工事の見積りをそろえ、資金使途を具体的に示せるようにします。
- 資格を証明する書類・本人確認書類:柔道整復師やはり師・きゅう師などの資格を確認できる書類を用意します。
また、施術所の開設にあたっては保健所への届出など、融資とは別の手続きも parallelで進める必要があります。融資の申請から実行までは書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安ですが、書類準備を含めると合計で約2か月を見込んでおくと余裕を持って進められます。経営面の経験に不安がある場合は、事業運営に直接関わる経験者を体制に加えるなど、計画書で補う工夫も有効です。
よくある質問(FAQ)
Q. 複数施術ができると、融資限度額の上限も上がりますか?
A. 融資制度の限度額そのものは、施術メニューの数で変わるものではありません。ただし、複数施術に必要な設備や広い物件の分だけ必要資金が増えるため、結果として申請する融資希望額が大きくなることはあります。その場合は、なぜその金額が必要かを計画書で説明できるようにしておくことが大切です。
Q. 柔道整復師・鍼灸師の資格があれば、審査で有利になりますか?
A. 施術に関する国家資格や経験は強みとして示せますが、それだけで審査結果が決まるわけではありません。審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに総合的に判断されます。資格はあくまで計画の説得力を高める一つの要素と考えておきましょう。
Q. 自己資金はどのくらい必要ですか?
A. 制度上、自己資金の額や割合に決まった要件はありません。ただし自己資金が多いほど審査で有利になりやすい傾向があります。金額の目安は開業規模によって変わるため、必要資金の全体像を出したうえで、専門家に相談しながら整えることをおすすめします。
まとめ
複数施術のできる鍼灸整骨院で開業する場合でも、利用できる創業融資の制度や基本条件は単科の院と変わりません。変わるのは、設備や内装が増えることによる必要資金の規模と、事業計画書での収益の見せ方です。複数の収益の柱を持てることは強みになり得ますが、その分の設備負担も大きくなるため、売上の見込みと投資のバランスを踏まえた計画づくりが欠かせません。
金利や制度の内容は変わることがあるため、申請前には日本政策金融公庫などの最新情報を確認してください。開業規模や資金計画に迷う場合は、早めに専門家へ相談しながら準備を進めていきましょう。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























