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コラム

実店舗なしのEC専業で創業融資は通るか

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実店舗なしのEC専業で創業融資は通る?落ちる理由と通すための準備

ネットショップやD2C、越境ECなど、実店舗を持たずにEC専業で起業しようとするとき、多くの方が「店舗がないと審査で不利なのでは」「自分のような個人でも創業融資は通るのか」と不安を感じます。結論からいえば、実店舗がないこと自体が直接の不利になるわけではありません。むしろ家賃などの固定費が軽い点はプラスに評価され得ます。ただしEC専業ならではの「落とし穴」があり、そこでつまずくと審査に通りにくくなります。この記事では、執筆時点(2026年時点)の情報をもとに、EC専業で創業融資が通らない理由と、通すための準備を具体的に解説します。なお融資の制度・金利は変わりやすいため、最新情報は必ず申請先でご確認ください。

実店舗がないと創業融資で不利になるのか

まず大前提として、日本政策金融公庫の創業融資は、店舗の有無で対象を線引きしているわけではありません。審査の軸は「事業計画書」と「自己資金」であり、事業の実態と返済できる見込みがあるかが見られます。EC専業だから門前払い、ということはありません。

むしろ実店舗がない分、家賃・内装・保証金といった大きな固定費がかからないため、毎月の出費が軽く、計画上の損益分岐点を低く保ちやすいという利点があります。これは返済能力の観点でプラスに働き得る要素です。

一方で、店舗型のビジネスと違って「目に見える事業の実態」が伝わりにくいという、EC専業特有の弱点もあります。融資担当者から見ると、店舗があれば立地や設備で事業の本気度がある程度わかりますが、ネットショップは画面の向こうにあるため、実態や継続性が伝わりづらいのです。ここを計画書でどう補うかが、通るか通らないかの分かれ目になります。

EC専業で創業融資が通らない、よくある理由

1. 売上の見込みに客観的な根拠がない

最も多いつまずきが、売上見込みの根拠の弱さです。店舗なら「商圏人口」「通行量」といった説明ができますが、EC専業ではそれが使えません。にもかかわらず「月商100万円を見込む」とだけ書くと、希望的観測と受け取られ、計画全体の信頼性を落とします。

売上は「商品の平均単価×想定販売数」で組み立て、その販売数の根拠を客観的に示すことが重要です。たとえばモール出店時の想定アクセス数と購入率、広告1件あたりの獲得単価、後述する事前のテスト販売の実績などを使って、数字に裏づけを持たせます。

2. 在庫仕入と入金タイムラグを甘く見ている(運転資金の不足)

EC、とくに物販は「先に仕入れて、後から売れて入金される」構造で、資金繰りに独特の時間差があります。商品を仕入れる時点で現金が出ていく一方、売上が決済代行会社を通じて入金されるまでには締め日からのタイムラグがあります。この間の運転資金を計画に織り込んでいないと、黒字でも資金がショートします。

運転資金は融資担当者が最も厳しく見る項目のひとつです。仕入・送料・決済手数料・倉庫保管料・広告費などEC特有の費用を内訳として具体的に積み上げ、事業が軌道に乗るまでの数か月分を見込んでおくと、計画の説得力が増します。

3. 自己資金が不足している

自己資金は、本人がどれだけ準備と覚悟をしてきたかを示す指標として重視されます。日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、開業時の資金に占める自己資金の割合は平均で2割強でした。EC専業は初期費用が比較的抑えられる業種ですが、だからといって自己資金がほとんどない状態は、計画性を疑われやすくなります。自己資金は面談時点で口座に確認できる形にしておきましょう。

なお、創業前に自費でそろえた撮影機材や備品、テスト販売にかけた費用などは、一定範囲で「みなし自己資金」として評価されることがあります。領収書は必ず保管しておきましょう。

4. 事業の経験・実態が伝わらない

扱う商材やECの経験がまったくないと、「本当に運営できるのか」という不安を持たれます。逆に、副業で小さくネットショップを運営してきた実績や、前職での販売・仕入れの経験があれば、それは強力な裏づけになります。実績がある場合は、開業届や売上の記録など、説明できる材料を用意しておきましょう。

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EC専業で創業融資を通すための準備ポイント

事前にテスト販売をして「売れる根拠」をつくる

計画書の説得力を一気に高めるのが、小規模でも実際に売ってみた実績です。フリマアプリや既存モールで少量を販売し、「どんな商品が、どの価格で、どれくらい売れたか」を数字で示せると、売上見込みが単なる予測ではなく実績の延長として語れます。実店舗の試運転にあたるものを、ECでは事前のテスト販売で代替できると考えるとよいでしょう。

事業の実態を「見える化」する

実店舗がない弱点は、実態が伝わる材料で補えます。作業場所や保管スペース、撮影した商品画像、仕入先とのやり取り、出荷の体制など、事業が現実に動いている(動かせる)ことが伝わる情報を準備しましょう。ネットショップであっても「きちんと事業として回す体制がある」ことを示せれば、店舗がない不安は和らぎます。

資金使途と返済計画を具体的に書く

「いくら借りて、何に使い、どう返すか」を具体的に示します。運転資金として認められるのは事業に必要な支出で、人件費や役員報酬は対象になりますが、創業者自身の生活費は対象になりません。生活費を運転資金に混ぜると計画の信頼性を損なうため避けましょう。資金使途は仕入・広告・システム費など費目ごとに分けて書くと、計画の解像度が上がります。

参考:創業融資の主な数字(2026年時点)

EC専業の方が利用を検討しやすいのが、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。執筆時点(2026年時点)の主な目安は次のとおりです。制度・金利は改定され得るため、最新は公式情報でご確認ください。

  • 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
  • 基準利率:2026年6月1日現在、無担保・創業期(税務申告2期未了)で年3.45〜5.15%。税務申告2期を迎えていない方の場合は原則0.65%(雇用拡大を図る場合0.9%)の引下げが適用される可能性があります。
  • 担保・保証人:原則として無担保・無保証人で利用可能
  • 据置期間:元金返済の据置を最大5年以内で設定可(据置中は利息のみ)。仕入が先行するEC初期の資金繰りに役立ちます
  • 申請から実行までの目安:書類提出後おおむね3週間〜1か月。準備を含めると合計約2か月を見込むと安全です

よくある質問(FAQ)

Q. 実店舗がなくても創業融資は申し込めますか

はい、申し込めます。審査は店舗の有無ではなく、事業計画書と自己資金、返済の見込みを軸に判断されます。EC専業であることを前提に、売上の根拠と運転資金の計画を具体的に示すことが大切です。

Q. 自己資金は面談時点で全額入金しておくべきですか

はい、原則として面談時点で口座に確認できる形にしておきます。創業前にそろえた機材やテスト販売費用などは、一定範囲でみなし自己資金として評価されることがあるため、領収書を保管しておきましょう。

Q. 副業で運営していたネットショップの実績は使えますか

運営や売上の実績は、事業の経験と継続性を示す材料になり得ます。売上の記録や開業届など、客観的に説明できる資料を整理しておくとよいでしょう。

まとめ

実店舗がないこと自体は、EC専業の創業融資で不利になるわけではありません。固定費が軽い点はプラスに働き得ます。ただし、売上見込みの根拠の弱さ、在庫仕入と入金タイムラグを軽視した運転資金不足、自己資金不足、経験・実態が伝わらないことが、通らない主な理由になります。逆にいえば、テスト販売で売れる根拠をつくり、事業の実態を見える化し、資金使途と返済計画を具体的に示せば、通る可能性は十分に高められます。なお融資の制度・金利は変わりやすいため、本記事は執筆時点(2026年時点)の情報であり、最新は申請先や日本政策金融公庫の公式情報でご確認ください。創業計画書の作り込みに不安がある場合は、専門家に相談しながら進めるのも有効です。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。


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多胡藤夫
監修
多胡藤夫 / 元日本政策金融公庫 支店長
現場で融資審査 約63,000件。その審査基準を診断ロジックと特典に反映しています。

小峰精公 / 元朝日信用金庫 融資担当営業
金融機関の現場目線で、創業者がつまずきやすい点を踏まえて設計。

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