
自己資金が目標額の2割に届かないとき、創業融資を申し込む前に点検したいこと
💬 独立を控えた会社員の方からのご相談
来年の独立に向けて創業融資を考えています。今の貯金は150万円ほどで、開業にはトータル800万円くらいかかりそうです。自己資金は1割あればいいという話もあれば、3分の1は必要という話もあり、どれを信じればいいのか分かりません。この金額で申し込んでも相手にされないのでしょうか?

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。
監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡からの回答
結論からお伝えすると、150万円という自己資金だけを理由に、門前払いになることはありません。「1割あればいい」「3分の1は必要」といった話は、どちらも制度上の正式な要件ではないからです。本記事の執筆時点で、日本政策金融公庫の創業融資には、自己資金の額や割合についての固定要件は定められていません。
ただし、要件がないことと、自己資金の額が見られないことは別の話です。審査する側から見ると、自己資金は重要な判断材料のひとつです。ここでは、割合の話に惑わされない考え方と、150万円という金額をどう補強していけるかを整理します。
「1割」「3分の1」は、どちらも制度の要件ではない
自己資金の割合については、過去にあった制度の名残や、人づてに聞いた経験則が、今も要件のように語られることがあります。ですが、本記事の執筆時点の制度には、自己資金について「総額の何分の1が必須」という決まりはありません。割合の数字そのものを気にして申込みをためらう必要はないということです。
一方で、自己資金の額が多いほど、審査では有利に働きやすいという実感はあります。割合の正解を探すより、今ある150万円をどう見せられる状態にしておくかに意識を向けたほうが、準備としては早いです。
自己資金は「額」だけでなく「貯め方」も見ています
審査する立場から申し上げると、私たちが自己資金を確認するときに見ているのは、金額の大きさだけではありません。毎月の給与からどのように積み立ててきたか、通帳の動きから自然な資金の積み上がりが確認できるかどうかも、あわせて見ています。急に大きな金額が入金された通帳より、時間をかけて積み立てられた通帳のほうが、同じ150万円でも説明のしやすさが変わってきます。
自己資金は、面談の時点で口座に確認できる形にしておくのが原則です。これから準備を続けるのであれば、今の積立のペースをそのまま記録として残しておくことが、150万円という金額の説得力を補う材料になります。
「みなし自己資金」になる支出も確認しておく
独立に向けて、すでに資格の取得費用や、業務に使う設備・備品の購入、テストマーケティングの費用などを自費で支払っている場合、それらは一定範囲で自己資金として評価されることがあります。いわゆる「みなし自己資金」と呼ばれる考え方です。該当しそうな支出があれば、領収書を必ず保管しておいてください。通帳の積立額だけで150万円と数えるより、実態に近い自己資金の姿を示せる可能性があります。
来年の独立まで時間があるなら、積み増しの計画も選択肢になる
ご相談の内容を見ると、独立は来年とのことなので、申込みまでにまだ時間があります。800万円に対して150万円という今の金額を前提に考えるだけでなく、申込みまでの期間で自己資金をどこまで積み増せるかも、あわせて計画しておく価値があります。毎月いくらを積み立てられるかを先に決め、そのペースで申込み時点の自己資金額を試算してみてください。積立のペースそのものが、先ほどの「貯め方」の説明材料にもなります。
もちろん、今の150万円のまま申込みを進めるという選択も、制度上は可能です。「積み増してから」か「今の金額で」かは、開業を急ぐ事情や物件の状況によっても変わるため、どちらが正しいと一概には言えません。ご自身の開業スケジュールと照らし合わせて検討してください。
自己資金だけでなく、計画全体の整合性も見られる
審査では、業務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。800万円という開業資金の内訳と、150万円の自己資金に対していくらの借入を希望するのかが、事業計画の中でどれだけ具体的に説明できているかも、あわせて見られる部分です。自己資金の割合だけを単独で気にするより、調達額全体の根拠を固めていくほうが、審査全体への備えとしては近道になります。
また、創業前で決算実績がないことは、独立を考えるどの方にも共通する前提であり、それ自体が不利になるものではありません。実績で裏づけられない分、事業計画の具体性と自己資金の積み上げ方で、準備の本気度を示していくことになります。
まとめ
150万円という自己資金は、それ単体で合否が決まる数字ではありません。割合の正解を探すのではなく、積立の経緯を説明できる状態にしておくこと、みなし自己資金になりそうな支出を拾い出しておくこと、そして800万円の内訳と調達額の整合を事業計画で説明できるようにしておくこと、この3つを並行して進めてみてください。
自己資金と希望する借入額のバランスは、ご自身の状況によって適切な形が変わります。今の数字で無理のない計画になっているか、専門家と一緒に確認しながら準備を進める方法もありますので、気になる方は相談してみてください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

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多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























