
新事業進出補助金をサービス業・IT業で活かす:対象経費・補助上限・採択される事業計画の作り方
「既存の事業が頭打ちになってきたので、新しい分野に踏み出したい」。そう考える中小企業やサービス業の経営者にとって、設備投資や開発費の負担は大きな壁です。その挑戦を後押しするのが新事業進出補助金です。製造業のイメージが強い補助金ですが、実際には卸・小売業、飲食業、IT・サービス業まで幅広く活用されています。
この記事では、サービス業・IT業が新事業進出補助金をどう使えるのか、活用のイメージ、対象になる経費、補助上限額、そして審査を通すための事業計画のポイントを、起業直後の個人事業主・中小企業にもわかりやすく整理します。制度は変更されやすいため、最新の公募要領とあわせて確認してください(本記事は2026年6月時点の情報です)。
新事業進出補助金とは何か
新事業進出補助金は、既存事業とは異なる新たな分野・事業へ進出するための設備投資や開発費を支援する制度です。2025年に創設された比較的新しい補助金で、単なる設備更新ではなく「これまでと違う製品・サービス・市場に挑戦する」ことが前提になっています。
支援の対象は製造業に限りません。卸・小売業、建設業、飲食業、そしてIT・サービス業まで、新分野への挑戦であれば幅広い業種が利用しています。たとえば次のようなケースが想定されます。
- 飲食店が、店舗運営のノウハウを活かしてセントラルキッチン+EC(冷凍食品販売)に進出する
- 受託開発中心のIT企業が、自社SaaS(サブスク型サービス)の開発・提供に乗り出す
- 美容サロンが、店舗事業に加えて化粧品の自社ブランドを立ち上げる
- 士業・コンサル系のサービス業が、対面支援からオンライン研修プラットフォーム運営へ広げる
いずれも「今やっている事業の延長線上の効率化」ではなく、新しい収益の柱をつくる取り組みである点が共通しています。ここが審査でも重視されます。
補助上限額・補助率の目安
補助上限額は従業員数の区分に応じて2,500万円〜9,000万円の範囲で設定されています。賃上げに関する特例を満たした場合に上限が引き上げられ、最大で9,000万円まで広がる設計です。補助率は原則1/2で、地域別最低賃金の引上げに関する特例を満たすと2/3になります。
サービス業・IT業の場合、製造業ほど大型の機械を入れないケースが多く、実際の申請額は上限いっぱいまで届かないことも珍しくありません。それでも、システム開発費や店舗・拠点の整備費を含めれば数百万円〜数千万円規模の投資になることが多く、その半額が補助されるインパクトは小さくありません。
なお、補助金は原則として後払い(精算払い)です。先に自己資金や融資で経費を支払い、後から補助金が入金されます。採択されても手元資金がなければ事業は進められないため、資金繰りの設計はセットで考える必要があります。
サービス業・IT業で対象になりやすい経費
補助対象経費は公募要領で複数の区分に整理されています。サービス業・IT業が新事業に進出する場面では、次のような経費が中心になりやすいです。
システム・ソフトウェア関連
新サービスを動かすためのシステム構築費、アプリ・SaaSの開発外注費、専用ソフトウェアの導入費などが対象になり得ます。受託開発から自社サービスへ転換するIT企業にとっては、開発投資が補助対象になるかが大きなポイントです。
店舗・拠点の整備費
新事業のための新店舗・新拠点の内装や設備に関する費用が対象になるケースがあります。サロンや飲食が新業態の店舗を出すような場合に該当しやすい区分です。
その他の経費
新事業に必要な機械装置、外注費、専門家経費、広告宣伝・販売促進費などが区分として用意されています。ただしパソコンやタブレットなどの汎用品は原則対象外になりやすく、「新事業に固有で必要な投資か」という観点で判断されます。何が対象になるかは年度・公募回ごとに細かく変わるため、必ず最新の公募要領で確認してください。
審査で見られるポイント
新事業進出補助金は申請すれば必ず採択されるものではなく、事業計画書の内容で評価されます。サービス業・IT業の申請で特に意識したいのは次の点です。
1. 「新規性」を客観的に示せているか
既存事業との違いが曖昧だと、「単なる延長・効率化では」と見られてしまいます。製品・サービス、提供方法、対象顧客、市場のいずれが新しいのかを具体的に書き分け、自社にとって新しい挑戦であることを明確にします。
2. 事業計画の数値要件を満たしているか
新規事業に関しては、その事業の売上高が総売上高の10%以上、または付加価値額が総付加価値額の15%以上になる事業計画(収支計画)を求められます。「新事業を会社の中でどの程度の柱に育てるのか」を数字で示す要件であり、売上予測と費用の積み上げに根拠が必要です。
3. 賃上げの方針が描けているか
補助上限の引き上げにつながる賃上げ特例では、補助事業の実施期間内に給与支給総額を年平均6.0%以上増加させ、事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げるといった水準が問われます。無理のある賃上げは後で自社を苦しめますが、新事業で生まれる付加価値をどう人件費に還元するかをセットで描けると、計画の説得力が増します。
4. 実現可能性(誰が・どうやってやるか)
サービス業・IT業の新事業は、設備よりも「人」と「集客」で成否が決まります。開発体制、運営人員、販路・集客の見通しまで踏み込めているかが評価を左右します。絵に描いた餅にならないよう、自社の既存資産(顧客基盤・ノウハウ・人材)と新事業のつながりを丁寧に説明しましょう。
2026年度の統合について
制度面の大きな動きとして、2026年度以降は新事業進出補助金とものづくり補助金が統合され、「新事業進出・ものづくり補助金」として実施される見通しです。新事業進出補助金としては第4回公募(公募期間2025年12月23日〜2026年3月26日18:00、申請受付2026年2月17日〜)が一つの区切りとされています。
統合後は申請枠や要件が再編される可能性があります。これから新分野進出を考えている場合は、「新事業へ進出する」という方向性(新分野進出型)と、「生産性を高める設備投資」という方向性(生産性向上型)のどちらに自社の計画が近いかを早めに整理しておくと、統合後の枠選びにもスムーズに対応できます。最新の公募要領・スケジュールは必ず公式情報で確認してください。
まとめ
新事業進出補助金は、サービス業・IT業が新しい収益の柱をつくる挑戦を、設備投資・開発投資の面から後押しする制度です。補助上限は従業員数区分に応じて2,500万円〜9,000万円、補助率は原則1/2(特例で2/3)。採択のカギは、①新規性を客観的に示すこと、②売上高10%/付加価値15%の数値要件を満たす計画、③賃上げの方針、④実現可能性を、事業計画書で一貫して描けるかにあります。
2026年度からはものづくり補助金との統合が見込まれ、制度は移行期にあります。「自社のこの取り組みは対象になるのか」「どの枠で申請すべきか」と迷ったら、早めに専門家に相談しながら計画を固めていくのが、限られた公募期間を逃さないための近道です。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。
この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























