
動物病院のCT・MRI導入で使える補助金|対象経費と交付決定前発注NGの申請ステップ
「そろそろCTかMRIを院内に入れたいが、ものづくり補助金という名前をよく聞くけれど、実際に何が対象になり、どんな順番で進めればよいのか分からない」——開業から数年が経ち、経営が安定してきた動物病院の院長からよくいただくご相談です。本記事では、CT・MRIのような高額な画像診断機器を導入する場面を想定し、使える補助金の種類、対象経費、そして申請の実務ステップと注意点を整理します。なお制度・金額は変わりやすいため、本記事は執筆時点(2026年)の一般的な解説です。申請時は必ず最新の公募要領をご確認ください。
動物病院のCT・MRI導入に使える補助金はどれか
本命は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠」
CT・MRIのような高度画像診断機器の導入で本命になるのが「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠」です。この枠は、自社の技術力等を活かして顧客に新たな価値を提供する新製品・新サービスの開発を支援する制度で、単なる設備・システムの導入や、既存製品・サービスの生産プロセス改善、同業で既に広く普及している取り組みは対象外とされています。つまりCT・MRIを「ただ買う」のではなく、これまで院内でできなかった検査・診断サービスを新たに立ち上げる計画として組み立てることが前提になります。
診療領域を本格的に新設するなら「新事業進出枠」も選択肢
二次診療や画像診断センター機能のように、既存の一般診療とは異なる新しい市場・診療領域へ本格的に進出する場合は、同じ制度の「新事業進出枠」も検討対象になります。この枠は、新たに提供する製品・サービスが申請者にとって新規性を持ち、その市場も申請者にとって新たな市場であることが条件で、日本初・世界初である必要はなく「自院にとっての新規性」で判断されます。ただし新事業進出枠は創業後1年に満たない事業者は対象外で、最低1期分の決算書が必要とされているため、数年経営されている動物病院であれば要件はクリアしやすい形です。
動物病院は自由診療、人間の保険診療のような重複制限は基本的に生じにくい
経済産業省・中小企業庁系の補助金では、公的医療保険(診療報酬)と重複する経費・機器は原則として補助対象外とされる整理があります。これは人間の保険診療を念頭に置いた考え方で、動物病院の診療は公的医療保険の対象外である自由診療にあたるため、この重複による対象外ロジックは基本的には当てはまりにくいと考えられます。ただし「動物病院なら無条件でOK」と断定できるものではなく、最終的な可否は最新の公募要領・FAQで確認することが欠かせません。
補助額・補助率・対象経費の全体像
従業員規模別の補助上限・下限・補助率
革新的新製品・サービス枠の補助上限は従業員規模によって、5人以下750万円、6〜20人1,000万円、21〜50人1,500万円、51人以上2,500万円が目安です。大幅な賃上げ特例(後述)を適用した最大規模のケースでは、それぞれ850万円、1,250万円、2,500万円、最大3,500万円まで引き上げられます。よく紹介される「上限3,500万円」は、あくまで最大規模かつ特例適用時の最大値であり、無条件の上限ではない点に注意してください。補助下限は100万円です。新事業進出枠は20人以下2,500万円〜101人以上7,000万円が目安で、特例適用時は最大9,000万円、補助下限は750万円です。補助率はいずれの枠も中小企業者1/2、小規模事業者等は2/3が基本です。
対象になる経費・ならない経費
対象経費の中心は機械装置・システム構築費で、単価10万円(税抜)以上の専用機械・装置や専用ソフト・情報システムが該当します。CT・MRI本体はもちろん、それと一体で導入する読影・院内システムなども対象になり得ます。技術導入費や知的財産権等関連経費は補助対象経費総額の1/3、外注費は1/4、専門家経費は1/5がそれぞれ上限です。一方で、汎用PCやスマートフォン、車両、家賃、建物の単なる購入といった経費は対象外とされています。なお建物費が対象になるのは新事業進出枠のみで、革新的新製品・サービス枠では建物工事費は対象になりません。院内改装を伴う場合は、どの経費区分に入るのかを事前に切り分けておく必要があります。
申請の前提となる「新しい検査・処置サービス」の作り方
「単なる設備導入」では通らない
革新的新製品・サービス枠では、新製品・新サービスの開発を伴わない単なる導入や、既存製品・サービスの生産等プロセスの改善は対象外と明記されています。CT・MRIを導入する動機が「古い機器の単なる買い替え」のように見えてしまうと、新規性の評価が弱くなり、採択の可能性が下がります。
動物病院での新規性の示し方
採択されやすい計画に近づけるには、CT・MRI導入によって「これまで院外の二次診療施設に紹介していた検査・診断を院内で完結できるようになる」「新たに画像診断による早期発見・専門的な処置サービスを立ち上げる」といった、新しい価値提供として計画を描くことが重要です。事業計画書は申請者自身が作成する必要があり、外部への丸投げは不採択・交付決定取消の対象になり得るとされているため、院長自身が新サービスの中身を言語化しておくことが欠かせません。
申請ステップとチェックリスト
はじめて申請する院長がイメージしやすいよう、対象経費の整理から発注までの流れをステップで整理します。
STEP1 対象経費の切り分けと見積・仕様書の準備
CT・MRI本体、周辺システム、据付工事などを経費区分ごとに切り分け、複数の販売代理店から見積・仕様書を取得します。機械装置・システム構築費が主軸になるよう、対象外になりやすい建物工事費や汎用品と混同しないよう整理しておきます。
STEP2 GビズIDプライム取得・事業計画の作成
電子申請にはGビズIDプライムが必須のため、早めに取得を進めます。事業計画書は、新規性・収益性の見通し・賃上げ計画を盛り込み、院長自身が作成することが原則です。
STEP3 申請〜採択〜交付決定
2026年度第1回公募は2026年6月29日に公募開始、申請締切は2026年9月30日18時、採択発表は2026年12月頃が目安とされています(執筆時点)。締切・回次は必ず最新の公募要領で確認してください。
STEP4 交付決定後に発注(CT・MRIの長納期・据付工事の順序に注意)
採択後、交付決定の通知を受けてから発注・契約・購入という順番を必ず守ります。CT・MRIのような高額機器は納期が長く、電源工事や遮蔽工事、据付工事を伴うことが多いため、交付決定を待たずに販売代理店へ発注書を出してしまう、内装業者と契約してしまうといったミスが起きやすいポイントです。補助事業の実施期間は交付決定日から10か月以内(採択発表日から12か月以内)が目安とされており、機器の納期・工事期間を見込んだ逆算スケジュールを組んでおくことが重要です。
見落としやすい注意点・返還リスク
交付決定前の発注・契約は一発アウト
理由を問わず、交付決定より前に発注・契約・購入したものは補助対象外です。「見積だけ取っておく」のは問題ありませんが、注文書や契約書を取り交わす行為は交付決定後まで待つ必要があります。
賃上げ・付加価値・最低賃金要件と未達時の返還
基本要件として、付加価値額は事業計画期間(3〜5年)で年平均+4.0%以上、一人当たり給与支給総額は年平均+3.5%以上、事業場内最低賃金は地域別最低賃金+30円以上の水準を維持することが求められ、いずれも未達の場合は補助金の返還が生じ得るとされています。大幅な賃上げ特例(給与支給総額年平均+6.0%以上かつ最低賃金+50円以上)を使うと補助上限が引き上げられますが、その分未達時の返還リスクも大きくなります。従業員数名規模の動物病院では、一人の昇給が全体の平均に与える影響が大きいため、無理のない賃上げ計画を設計しておくことが大切です。
二重受給・他補助金との経費重複
国や自治体の他の補助制度と同一経費で重複して受給することはできません。CT・MRIの導入費用について、他の制度からも支援を受けようとしていないか、申請前に必ず確認しておきましょう。
よくある質問
Q. 個人開業の動物病院でも申請できますか?
中小企業・小規模事業者であれば、個人開業でも検討対象になり得ます。ただし要件は公募ごとに細かく定められているため、自院が対象に当てはまるかは最新の公募要領と計画内容で確認するのが確実です。
Q. CT・MRIの購入費だけで補助金は使えますか?
補助金は経費の一部を補助する仕組みで、自己負担分は必ず発生します。また原則として後払いのため、導入時の支払いは融資などで手当てし、後から補助金で補う組み合わせが現実的です。
まとめ
動物病院がCT・MRIを導入する場面では、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠」を軸に、診療領域を本格的に新設するなら「新事業進出枠」も選択肢になります。ポイントは、単なる設備更新ではなく新しい検査・処置サービスの立ち上げとして計画を描くこと、そして交付決定前の発注は絶対に避けることです。金額や要件、公募スケジュールは変わりやすいため、検討の際は必ず最新の公募要領を確認し、機器の納期を踏まえた早めの計画づくりを専門家に相談することをおすすめします。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。
この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























