
重機購入にものづくり補助金は使えるか|計画・金額・成果目標・採択後の4つの分かれ目
建設機械・重機の購入で補助金の対象から外れる4つの分かれ目
バックホーや高所作業車、大型ダンプの入れ替え時期が重なると、見積の合計は数千万円になります。その金額を前に「重機の購入に補助金は使えないか」と調べ始めた土木・専門工事会社の経営者の方へ向けた記事です。
結論から申し上げると、重機そのものを買うための補助金という制度はありません。制度の側が見ているのは、その重機で何を新しく始めるのかという事業の中身です。そして計画の書き方、投資額、成果目標、採択された後の管理という4つの段階に、それぞれ別の分かれ目があります。この記事では、2026年度から名称が変わった「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」を中心に、その4か所を順に見ていきます(本記事は2026年8月時点の公募要領などの公開情報にもとづいています)。
分かれ目1:「入れ替える・台数を増やす」と書いた計画は入口に立てません
まず制度の名前から整理します。従来「ものづくり補助金」と呼ばれてきた制度と「新事業進出補助金」は、2026年度に統合され、公募要領上の正式名称は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」になりました。重機の購入で検討することになるのは、このうち革新的新製品・サービス枠と新事業進出枠の2つです。
革新的新製品・サービス枠は、自社の技術力等を活かして顧客等に新たな価値を提供する新製品・新サービスを開発する取組を支援する枠です。公募要領は、単なる設備・システム導入、既存製品・サービスの生産プロセス改善、同業で既に相当程度普及している開発を対象外として明記しています。
新事業進出枠のほうは、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。こちらも、既存事業と同一市場、既存製品の増産・再製造、単なる製法変更、単に商圏が違うだけといった取組は対象外とされています。
つまり「古くなった重機を同等の機種に入れ替える」「受注が増えたので同じ機械をもう1台持つ」という計画は、どちらの枠でも入口の手前で止まります。工事の対応力が上がることと、制度が求める新製品・新サービスの開発や新市場への進出は、別の話として扱われるためです。
逆に、その重機で今まで受けてこなかった工種を取れるようになる、外注していた工程を自社に取り込んで別の商品として売り出す、といった変化があるなら、どちらの枠を選ぶかという議論に進めます。書き出す前に、その重機で何が新しくなるのかを1行で言えるかを確かめてみてください。
分かれ目2:枠を決める前に、見積の総額を下限と規模別の上限に当てます
2つの枠は、金額の設計がかなり違います。革新的新製品・サービス枠は補助下限100万円で、補助上限は従業員規模別に1〜5人750万円、6〜20人1,000万円、21〜50人1,500万円、51人以上2,500万円です。大幅賃上げ特例を適用した場合は、それぞれ850万円、1,250万円、2,500万円、3,500万円まで上がります。
新事業進出枠は補助下限750万円で、補助上限は1〜20人2,500万円、21〜50人4,000万円、51〜100人5,500万円、101人以上7,000万円、特例適用時は3,000万円、5,000万円、7,000万円、9,000万円です。補助率はいずれも中小企業者で2分の1が基本になります。
よく見かける「上限3,500万円」「上限9,000万円」という数字は、最大の従業員規模かつ大幅賃上げ特例を適用した場合の最大値であって、無条件の上限ではありません。従業員10人の専門工事会社が革新的新製品・サービス枠で計画を立てるなら、上限は1,000万円の側になります。重機1台の見積が2,000万円を超えるのは珍しくないので、投資額の大きさだけで枠を選ぶと、後から計画を組み直すことになります。
逆方向の外れ方もあります。新事業進出枠は補助下限が750万円なので、投資額の合計が小さい計画はこの枠には出せません。小型の建機1台だけを想定していた場合、金額の下側で候補から外れることがあります。なお対象経費の中心になる機械装置・システム構築費は、単価10万円(税抜)以上という条件が付いています。
💬 執筆者の三浦から一言
下限額は、上限額ほど話題になりません。ただ申請書を見る側からすると、下限は「この金額まで投資しないと受け付けない」という制度からの線引きです。新事業進出枠の下限750万円(2026年度第1回公募時点)は、機械1台を入れる規模の計画だと届かないことがあります。見積を集める順番より先に、どちらの側の線に自社が近いかを見ておくと、途中でやり直す回数が減ります。
分かれ目3:成果目標を重機の稼働で説明すると、返還の対象になり得ます
この制度には、枠を問わず満たすことが求められる成果目標があります。付加価値額は事業計画期間で年平均成長率4.0%以上、一人当たり給与支給総額は年平均成長率3.5%以上、事業場内最低賃金は毎年、地域別最低賃金プラス30円以上の水準です。給与支給総額と事業場内最低賃金は、未達の場合に返還の対象になると公募要領に定められています。
重機の投資計画で崩れやすいのはここです。稼働率が上がる、施工日数が短くなる、といった機械側の効果は説明しやすい一方で、それが付加価値額や一人当たりの給与にどうつながるのかを書かないまま提出してしまうことがあります。制度が見ているのは機械の性能ではなく、事業としての数字の伸び方です。
特に給与の目標は、計画を書く時点で社内の人数や賃金の水準と突き合わせておきます。数年にわたって毎年上げ続ける前提になるため、繁忙期の応援や一人親方への外注が多い会社では、誰を従業員として数えるかで計画の姿が変わります。従業員規模は先ほどの上限額の区分にも直結するので、この2つはまとめて確認すると手戻りが減ります。
なお大幅賃上げ特例で上限を引き上げる場合は、給与支給総額が年平均6.0%以上、事業場内最低賃金が地域別最低賃金プラス50円以上と、水準がさらに上がります。上限額の大きさだけで特例を選ぶと、達成の負担が数年間残ります。
分かれ目4:採択された後も、発注日と機械の扱いに制約が残ります
4つ目は採択された後の話です。まず発注のタイミングで、交付決定前の発注・契約・購入は対象外とされています。納期の長い建機は先に押さえておきたくなりますが、交付決定を待たずに注文書を出すと、要件を全部満たしていても経費として認められません。
そしてもう一つ、建設業だからこそ効いてくるのが、補助事業で取得した財産の扱いです。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)第22条は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産について、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならないと定めています。
重機は、数年で下取りに出す、稼働の谷間に他社へ貸す、資金調達の場面で担保として差し入れる、といった動かし方をする資産です。同じ法律の施行令第13条は、処分が制限される財産の一つとして「機械及び重要な器具で、各省各庁の長又は補助実施法人の代表者が定めるもの」を挙げており、どの機械が該当するか、どのくらいの期間制限がかかるかは、制度ごとの交付規程で定まります。
実務では、補助金で入れた機械を台帳で分けて管理し、売却や貸与を検討する段階で交付規程を確認して事務局に相談する、という順番になります。数年で入れ替える前提の会社ほど、申請の段階でこの制約を計画に織り込んでおきたいところです。
省力化や販路開拓が目的なら、別の制度のほうが自然なことがあります
ここまで読んで「新製品の開発でも新市場への進出でもない」と感じた場合、無理に2つの枠へ寄せる必要はありません。既存の現場の省力化が主目的なら中小企業省力化投資補助金(一般型)が候補になりますが、こちらは単価50万円(税抜)以上の機械装置等を1つ以上入れたうえで、汎用設備を単体で導入するだけでは対象外という判定を通ります。投資規模が小さく販路開拓が中心であれば、小規模事業者持続化補助金という選択肢もあります。いずれの制度でも、事業計画は申請者自身が作成することが公募要領で求められています。
まとめ
建設機械・重機の購入で新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を検討するときは、次の4か所を順に確認してみてください。第一に、入れ替え・増車のままの計画は革新的新製品・サービス枠にも新事業進出枠にも入口がないこと。第二に、補助下限と従業員規模別の上限に見積の総額を当ててから枠を決めること。第三に、成果目標を機械の稼働ではなく付加価値額と給与の数字で説明すること。第四に、交付決定前の発注と、取得した機械の処分制限という採択後の制約を計画に織り込んでおくことです。
2026年度第1回公募の申請締切は2026年9月30日18時とされています。回次によって条件が変わるため、申請の際は最新の公募要領で確認し、判断に迷う部分は専門家にご相談ください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
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