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コラム

工場移転・生産ライン増設で使える補助金4制度|増産では通らない理由と申請スケジュールの逆算

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工場移転・生産ライン増設の補助金|対象になる投資と対象外になる費用の境界線

受注が増えて工場が手狭になった、老朽化したラインを入れ替えたい、別の敷地に移って生産能力を上げたい。こうした場面で「補助金が使えないか」と考える製造業の経営者の方は多いです。

ただ、実際に公募要領を読み込んでいくと、工場移転や生産ライン増設のうち補助対象になる部分は、思っているよりも狭いことがわかります。とくに「移転そのもの」にはお金が出ないケースがほとんどです。

この記事では、2026年度(令和8年度)に候補となる主要な制度を投資の中身ごとに整理したうえで、現場でつまずきやすい「対象になる/ならない」の境界線をQ&A形式で切り分けます。なお、記載している数字・要件は執筆時点(2026年7月)の公募要領等にもとづくものです。制度は改定されることがあるため、申請前には必ず最新の公式情報をご確認ください。

前提:補助金は「移転」ではなく「投資の中身」を見ている

まず押さえておきたいのは、「工場移転補助金」という名前の制度は存在しないという点です。経済産業省・中小企業庁系の補助金は、拠点をどこに置くかではなく、その投資によって何が変わるのか(生産性が上がるのか、新しい製品・市場が生まれるのか)を評価しています。

そのため、移転に伴って発生する費用のうち、次のようなものは基本的に補助対象になりません。

  • 引越し業者への支払い、既存設備の解体・運搬・移設にかかる費用
  • 移転先の土地・建物を取得する費用、賃借する費用(家賃・敷金)
  • 汎用のパソコン・スマートフォン・車両など、その事業専用とは言えないもの

裏を返すと、移転や増設を機に「新しく導入する設備」「新たに立ち上げる製品や市場」の部分に、補助金を当てにいく設計が基本になります。移転計画そのものを補助金でまかなうのではなく、移転を機に行う投資のどこが制度の趣旨に合うかを切り出す、という考え方です。

工場移転・生産ライン増設で候補になる4つの補助金

投資の主軸がどこにあるかで、候補になる制度は変わります。ここでは代表的な4つを、判断の軸とあわせて整理します。

1. 中小企業省力化投資補助金(一般型)|既存ラインの省力化・自動化が主軸なら

人手不足のなかで既存の生産工程を作り替える、搬送や検査を自動化するといった投資に向いた制度です。補助上限は1億円で、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ導入することが必要とされています。

注意したいのは、対象になるのは「オーダーメイド性のある設備」だという点です。省力化に資する汎用設備を複数組み合わせてより高い省力化効果を生む場合や、導入環境に応じて周辺機器・機器の数・搭載機能等が変わる場合はオーダーメイド設備とみなされますが、単に汎用設備を単体で導入する事業は対象外とされています。単価要件を満たしていても、それだけでは足りません。

また、3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画が求められ、賃上げ目標が未達の場合は達成率に応じて返還が発生しうる点も、計画づくりの前に押さえておきたいところです。

2. 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠|建物費を見てもらえる枠

2026年度から、従来の「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」は統合され、公募要領上の正式名称は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」になりました。そのうち新事業進出枠は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。

工場移転・増設との関係で重要なのは、この枠では機械装置・システム構築費だけでなく建物費も必須経費(いずれか)として認められている点です。ただし建物の単なる購入・賃貸、不動産購入費等は対象外とされています。

補助上限は従業員規模別で、1〜20人は2,500万円、21〜50人は4,000万円、51〜100人は5,500万円、101人以上は7,000万円です。大幅賃上げ特例を適用した場合はそれぞれ3,000万円・5,000万円・7,000万円・9,000万円まで引き上がります。よく見かける「最大9,000万円」という表記は、最大規模かつ特例適用時の数字である点に注意してください。補助下限は750万円、補助率は中小企業者で1/2(地域別最低賃金引上げ特例の適用時は2/3)です。

3. 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠|新製品開発を伴う設備投資なら

自社の技術力を活かして新製品・新サービスを開発する取組を支援する枠です。補助上限は従業員1〜5人で750万円、6〜20人で1,000万円、21〜50人で1,500万円、51人以上で2,500万円(大幅賃上げ特例適用時は850万円・1,250万円・2,500万円・3,500万円)、補助下限は100万円です。

ただし、この枠は建物・基礎工事・家賃などの周辺コストが対象外で、機械装置・システム構築費が必須かつ主軸になります。さらに、既存製品・サービスの生産等プロセス改善は本枠では対象外とされているため、「ラインを増やして今の製品をたくさん作る」という組み立てでは筋が通りません。

💬 無料相談のご案内

補助金専門行政書士法人は、V-Spirits元補助金審査員の三浦を中心とした専門家チームが補助金支援を行っております。「このケースは補助金の対象になるのか?」といった疑問にも、無料でお答えしております。お気軽にご相談ください。

4. 中小企業成長加速化補助金|売上100億円を目指す大型投資なら

売上高100億円超を目指す中小企業の大胆な投資を支援する制度で、補助上限は5億円です。対象経費には建物費(事務所・生産施設・倉庫等の新設・増改築・中古取得)が含まれており、拠点整備を伴う投資と相性があります。

一方で、単なる老朽化設備の更新投資は対象外とされており、賃上げ要件も補助事業完了後3事業年度の従業員1人あたり給与支給総額の年平均上昇率4.5%以上と高めです。目標未達の場合は返還を求められることがあります。「100億円を目指す」という方向性の明確さが審査の軸になるため、成長ストーリーを描けるかどうかが分かれ目です。

対象になる/ならないの境界線をQ&Aで整理する

Q1. 工場の引越し費用や、既存設備の移設費は補助対象になりますか?

原則として対象になりません。補助金が見ているのは新たに行う投資の中身であり、すでに保有している設備を運んで据え付け直す行為は、生産性向上や新規性の根拠になりにくいためです。移転を機に新しく購入する設備や、新設するラインの部分を切り出して申請を検討するのが現実的です。

Q2. 生産ラインを増設して既存製品の生産量を増やしたい。新事業進出枠は使えますか?

難しいケースが多いです。公募要領では、既存事業と同一市場、既存製品の増産・再製造、単なる製法変更、単なるメニュー追加、単に商圏が違うだけ等は「新事業進出」に該当せず対象外と明記されています。増産そのものを目的にする場合は、省力化の観点(中小企業省力化投資補助金(一般型))で組み立てられないかを先に検討したほうが自然です。

Q3. 工場の新築・増改築費用を見てもらえる制度はどれですか?

今回取り上げた4つのなかでは、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠と、中小企業成長加速化補助金が建物費を対象経費に含んでいます。革新的新製品・サービス枠は建物の単なる購入等が対象外なので、建物費を軸に考えるなら枠選びの段階で分かれます。いずれの制度でも、土地の取得や単純な賃借は対象外である点は共通です。

Q4. カタログに載っているような汎用の設備を1台だけ導入する場合はどうなりますか?

中小企業省力化投資補助金(一般型)では、汎用設備を単体で導入するだけの事業は対象外とされています。複数設備の組み合わせや、自社の環境に合わせて構成が変わることをもって、オーダーメイド性を事業計画のなかで示す必要があります。既製品をそのまま導入したい場合は、中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)のほうが制度設計に合うこともあります。

Q5. 物件の契約や設備の発注は、いつ進めればよいですか?

ここが工場移転でもっとも事故が起きやすいポイントです。いずれの制度でも、交付決定前の発注・契約・購入は補助対象外とされています。移転はテナント確保や工事の段取りが先行しがちですが、補助金を使う予定の設備については、交付決定を待たずに発注してしまうとその経費が丸ごと対象外になります。移転スケジュールと公募スケジュールは、必ず並べて確認してください。

Q6. 投資額があまり大きくない場合でも申請できますか?

制度ごとに補助下限があります。新事業進出枠は補助下限750万円、革新的新製品・サービス枠は補助下限100万円です。小規模な増設で投資額が下限に届かない場合は、そもそも枠が合っていない可能性があります。金額の規模から先に候補を絞るほうが、検討の手戻りが減ります。

制度選びで失敗しないための3つのチェックポイント

賃上げ要件は「取れるか」ではなく「守れるか」で見る

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、基本要件として付加価値額の年平均成長率4.0%以上、一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の水準といった条件が設定されており、未達の場合は返還の対象になります。上限額を伸ばす大幅賃上げ特例(給与支給総額の年平均6.0%以上かつ事業場内最低賃金+50円以上)も同様です。上限額の大きさだけで枠を選ぶと、数年後に返還リスクを抱えることになります。

二重受給になっていないかを確認する

国や公的制度との二重受給は認められていません。同じ設備・同じ経費を複数の制度に計上していないか、また同じ事業計画で別の補助金に申請していないかは、枠をまたいで検討するときほど注意が必要です。

創業直後は申請できない枠がある

新事業進出枠では、新規設立・創業後1年に満たない事業者は対象外とされており、最低1期分の決算書が必要です。新会社を設立して工場を立ち上げるようなケースでは、申請主体をどこにするかで結論が変わります。

スケジュールから逆算して準備する

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の2026年度第1回公募は、公募開始が2026年6月29日、申請受付が2026年8月31日から、締切は2026年9月30日18時、採択発表は2026年12月頃とされています。電子申請にはGビズIDプライムが必要です。

GビズIDの取得には日数がかかりますし、事業計画は申請者自身が作成することが求められています(外部への丸投げは不採択・取消の対象です)。工場移転は物件探しから稼働まで1年以上かかることも珍しくありません。「移転が決まってから補助金を探す」のではなく、投資の輪郭が見えた段階で制度の候補と締切を並べ、交付決定のタイミングを工程表に組み込んでおくことをおすすめします。

まとめ

工場移転・生産ライン増設で補助金を活用するときのポイントを整理します。

  • 移転そのもの(引越し・移設・土地建物の取得や賃借)は原則として補助対象外
  • 既存ラインの省力化・自動化が主軸なら中小企業省力化投資補助金(一般型)、新市場への進出なら新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠、新製品開発なら革新的新製品・サービス枠、売上100億円を目指す大型投資なら中小企業成長加速化補助金が候補
  • 建物費を見てもらえるのは新事業進出枠と中小企業成長加速化補助金。既存製品の増産は新事業進出枠の対象外
  • 交付決定前の発注・契約・購入は対象外。移転工程と公募スケジュールを並べて逆算する
  • 賃上げ要件は未達時に返還がありうるため、上限額ではなく実行可能性で枠を選ぶ

自社の投資がどの枠に当てはまるのかは、設備の内容と事業計画の書き方で結論が変わることも少なくありません。判断に迷う場合は、投資の中身が固まりきる前の段階で専門家に相談し、制度選びと工程の組み立てを同時に進めるのが安全です。

【無料相談のご案内】

弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

フリーダイヤル 0120-335-523
お問い合わせフォーム https://v-spirits.com/contacts

三浦高

この記事を書いた人

三浦高/Takashi Miura

元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者

産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。

融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

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この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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