
補助金を複数同時に進める資金繰り|重なる月の合計額で判断する考え方
複数の補助金に同時にエントリーしようとすると、まず気になるのは「何件まで申請していいのか」という点かもしれません。ですが実務上もっと大事なのは、件数そのものではなく、立替が重なる月の合計額が、自社の手元資金で払える範囲に収まるかどうかです。補助金は採択されたあとも、基本的には事業者が先に支出し、そのあとで実績報告や確認を経てから入金される仕組みになっています。この順番を押さえておけば、同時に進めてよい件数は自然と見えてきます。本記事では、「重なる月の合計額」で判断する考え方と、入金時期のズレへの対処、現実的に同時に進められる件数の目安を整理します。
なぜ採択後も資金が先に出ていくのか
補助金の多くは、交付が決定したあとすぐに事業者の手元にお金が入るわけではありません。基本的な流れは、交付決定を受けたあとに設備や外注などの契約・発注を行い、支払いを済ませ、事業が終わったら実績報告を提出し、確認が済んだあとに補助金が支払われるという順番です。採択されたこと自体はゴールではなく、そこから先に自社でお金を払う期間が始まるというのが実際の構造です。交付決定より前に契約や発注を済ませてしまうと、その分は補助の対象から外れてしまう制度もあり、採択後の動き方には守るべき順番があります。この前提は、複数の補助金を並行して進めるときにも共通してあてはまります。
一部の制度では、事業の途中でまとまった支払いが発生する場合に、入金のタイミングを早める扱いが用意されていることもありますが、どの制度にその扱いがあるか、どこまで認められるかは制度ごとに異なります。利用できるかどうかは、申請先の事務局に確認するのが確実です。この記事では個別の制度名や細かい条件には立ち入らず、「基本は後払い」という前提のもとで、資金繰りをどう組むかを考えていきます。
立替が重なる月の合計額で見る
1件の補助金だけを進めているときは、先に支払って後から戻ってくるという流れも、資金繰りの中で吸収しやすいものです。ところが2件、3件と同時に動かしていると、それぞれの支払いのタイミングが同じ月に集まってしまうことがあります。このときに効いてくるのは、件数の多さそのものではなく、その月にいくら払わなければならないかという合計額です。
考え方としては、進めている補助金ごとに、契約や発注が始まる時期から入金が予定される時期までを横に並べてみることです。それぞれの支払いの山がどの月に来るかを書き出し、重なっている月があれば、その月の金額をすべて足し合わせます。この合計額が、自社の手元資金や当面使える資金でまかなえる範囲に収まっていれば、同時に進めても大きな問題は起きにくいといえます。逆に、合計額が明らかに手元資金を超えてしまう月があるなら、そこが資金繰りの詰まりやすいポイントになります。件数を増やす前に一度、今動いている案件とこれから動かそうとしている案件のすべてについて、支払いの山がどの月に来るかを並べてみることをおすすめします。
💬 執筆者の三浦から一言
同時に進める件数を考えるとき、下限額があることは見落とされがちです。補助金の多くには、小さすぎる投資では申請自体の対象にならない下限が設けられています。資金を分散させて小口で何件も出そうとすると、そもそも対象にならない案件が混ざってしまうこともあるので、重なる月の合計額だけでなく、1件あたりの投資規模も合わせて確認しておくとよいと思います。
入金時期のズレにどう対応するか
複数の補助金を進めていても、入金はほぼ同時にはやってきません。採択の時期がそもそも違いますし、実績報告を出すタイミングや確認にかかる期間も案件ごとに変わるため、入金までの時間には差が出ます。この前提を踏まえておくと、進め方の順番を工夫する余地が見えてきます。
たとえば、立替額が大きい案件や、支払いから入金までの期間が長い案件は、資金的な負担が重い時期を後ろにずらせるよう、着手のタイミングを調整するという考え方があります。反対に、立替額が小さく入金までの期間も短い案件を先に動かしておけば、早めに資金が戻ってくるため、その後の案件の立替に回しやすくなります。すべての案件を同じタイミングで動かす必要はなく、自社の資金の出入りを見ながら、着手する順番を組み立てるという発想が役に立ちます。それでも重なる月の合計額が手元資金を超えそうだとわかった場合は、自己資金を積んでおく、売上の見込みと支払いの時期をずらす、既存の調達手段を早めに検討しておくなど、資金が足りなくなる前に打てる手を考えておくことが大切です。
現実的に同時に進められる件数の目安
「何件まで同時に進めてよいか」という問いに、制度側から決まった答えが用意されているわけではありません。ただ、実務の感覚としては、件数よりも、重なる月の合計額が自社の資金体力に収まるかどうかで考えるほうが現実的です。
目安を考えるときのポイントは3つあります。1つ目は、手元資金や当面使える資金に対して、重なる月の合計額がどの程度の割合になるかです。資金のほとんどを使い切ってしまうような重なり方であれば、件数を減らすか着手の時期をずらす必要があります。2つ目は、実績報告や書類のやりとりにかかる事務の負担です。案件が増えるほど、申請ごとの書類作成や事務局とのやりとりに時間がかかるため、自社の経理・事務の体制で無理なくこなせる件数かどうかも考えておく必要があります。3つ目は、立替のピークに対してどこまで耐えられるかという、資金面での余裕です。これらを踏まえると、まずは1件から2件程度を確実に資金化してから次の案件に着手するという進め方が、無理のない件数の目安になりやすいといえます。件数を先に決めてから案件を当てはめるのではなく、資金の動きを見ながら進める件数を後から調整していく姿勢が、資金繰りを崩さないためには有効です。
申請前に確認しておきたいこと
複数の補助金を同時に進める前に、次の点を確認しておくと資金繰りの見通しが立てやすくなります。まず、進めようとしている案件ごとに、支払いが始まる時期と入金が予定される時期をおおまかに仮置きしておくことです。次に、その仮置きをもとに、重なる月の合計額を一度計算してみることです。そして、合計額が手元資金を超えそうな月があれば、着手の順番を調整するか、資金を用意する方法を早めに考えておくことです。
なお、複数の補助金を併用できるかどうかや、同じ経費を重複して申請できるかどうかといった扱いは、制度ごとにルールが異なります。この部分は本記事では扱わず、申請先の事務局に必ず確認するようにしてください。
まとめ:件数ではなく重なる月の合計額で判断する
補助金を複数同時に進めるときに資金繰りで見ておきたいのは、件数そのものではなく、立替が重なる月の合計額です。採択後も基本は後払いという構造を踏まえ、案件ごとの支払いと入金の時期を並べて重なりを把握し、合計額が手元資金で収まるかどうかで着手する順番や件数を判断していくことが、資金繰りを崩さないための現実的な進め方になります。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























