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コラム

動物病院の分院展開で使える補助金は2つ|持続化補助金と省力化投資の判断基準

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動物病院の分院展開に補助金は使える?持続化補助金と省力化投資補助金の対象・対象外を整理

「今の病院の評判がいいうちに、2院目を出したい」——数年経営が軌道に乗った動物病院の院長であれば、一度は分院展開を考えたことがあるのではないでしょうか。ただし分院展開は、内装・医療機器・人員採用のすべてに初期投資がかかる大きな意思決定です。補助金をうまく活用できれば、自己資金や融資だけに頼らずに投資負担を抑えられます。

この記事では、動物病院の分院展開で実際に使える可能性がある補助金を2つに絞り込み、「どちらを選ぶべきか」の判断軸を中心に解説します。あわせて、補助金だけでまかなえない部分を融資でどう組み立てるかについても整理します。

動物病院の分院展開で候補になる補助金は実質2つ

動物病院の分院展開というテーマで名前が挙がりやすい補助金はいくつかありますが、実際に候補として筋が通るのは次の2つです。

  • 小規模事業者持続化補助金(分院の開院告知・ウェブ整備・店舗改装・備品など、販路開拓の取組として申請するルート)
  • 中小企業省力化投資補助金(一般型)(既存院・新分院の人手不足解消や業務自動化のための設備投資として申請するルート)

先に押さえておきたいのは、分院の土地・建物の取得そのものを丸ごとまかなえる補助金は存在しないという点です。分院展開の資金計画は融資が主役で、補助金は「その一部を軽くする道具」と考えるのが実態に近くなります。そのうえで、自院の投資の性格がどちらの制度に近いかを見極めていきます。

動物病院は自由診療。保険診療向けの対象外規定に当たらない

小規模事業者持続化補助金の公募要領では、補助対象外となる経費として「保険適用診療にかかる経費」がはっきり明記されています。薬局や整骨院・鍼灸院などが保険診療で使用する機械、保険診療の宣伝も兼ねるチラシなどがその例です。国が助成するほかの制度(公的医療保険)と重複する経費は補助対象にしない、という考え方によるものです。

一方、動物病院の診療(獣医療)は日本の公的医療保険の対象外で、すべて自由診療です。したがって、この「保険適用診療にかかる経費は対象外」という規定に当たる心配がありません。人の医療機関がつまずきやすい論点を最初から気にしなくてよいのは、動物病院ならではの有利な前提です。なお、公募要領が補助対象になりにくい事業者として挙げているのは医師・歯科医師・助産師であり、獣医師は列挙されていません(第20回公募要領・2026年5月27日公開時点)。個別の判定は申請先の商工会・商工会議所や事務局に確認しておくと安心です。

判断軸:分院展開の「販路開拓」か「既存業務の省力化」か

2つの補助金は狙っている投資の性格が違います。次の軸で自院の状況を整理してみましょう。

開院告知・ウェブ整備・改装など販路開拓が主題の場合 → 小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自社で作った経営計画に基づいて行う販路開拓と、それとセットで行う業務効率化の取組を支援する制度です。分院展開でいえば、新しい商圏に向けた開院告知のチラシや看板、分院用のウェブサイト・予約ページの制作、待合スペースの改装、診療に使う備品の購入といった「新しい患者さんに届けるための投資」が守備範囲になります。分院そのものの建築費ではなく、分院を軌道に乗せるための打ち手に効く制度だと考えてください。

人手不足解消・業務自動化が主題の場合 → 省力化投資補助金(一般型)

中小企業省力化投資補助金(一般型)は、現場の人手不足や工程のムダを減らすために、自社の課題に合わせた設備・システムを導入する投資を支援する制度です。「動物看護師の採用難を前提に、受付・会計・検査業務を自動化して少人数でも回せる分院にする」というような投資が主題であれば、こちらが基本の選択肢になります。

小規模事業者持続化補助金の要点

まず「小規模事業者」に当たるかどうかが入口

この制度は名前のとおり小規模事業者向けで、業種ごとに従業員数の上限が決まっています。商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員5人以下、宿泊業・娯楽業と製造業その他は20人以下です。動物病院は商業・サービス業に当たるため、5人以下という線引きで判定されるのが基本になります。ここで会社役員・個人事業主本人・同居の親族従業員・日雇い等はカウントしません。分院展開で常勤スタッフを増やすと要件から外れることがあるため、「いつ申請するか」が実務上の分かれ目になります。

補助上限・補助率(特例の併用で最大250万円)

補助率は2/3、補助上限は基本50万円です。ここにインボイス特例で+50万円(最大100万円)、賃金引上げ特例で+150万円(最大200万円)が上乗せでき、両方の特例の要件を満たせば最大250万円まで広がります。賃金引上げ特例のうち赤字事業者は補助率が3/4になります。いずれも要件を満たす場合のみの上乗せで、無条件に250万円が出るわけではありません。また、通常枠・特例の要件を1つでも満たさないと全体が交付対象外になる点にも注意が必要です(第20回公募要領 第7版・2026年5月27日公開時点)。

対象経費(建物費という区分はない)

対象経費は、機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費に区分されています。分院展開で使いやすいのは、備品や衛生機器を買う機械装置等費、開院告知のチラシ・看板・DMなどの広報費、分院ページやネット広告のウェブサイト関連費、そして店舗改装・バリアフリー化工事等を含む委託・外注費です。

ただし経費区分ごとの上限があります。広報費は補助金交付申請額のうち30万円(税込)が上限で、広報費のみの申請はできません。ウェブサイト関連費も同じく30万円(税込)が上限で、ウェブ関連費のみの申請は不可です。さらに、建物の増築・増床や「不動産の取得」に当たる工事は対象外になりやすく、外気分断性・土地への定着性・用途性の3要件で判定されます。そもそもこの制度には建物費という経費区分が用意されていないため、分院の建築費そのものを補助金でまかなう設計にはできません。

手続き上の関門(GビズID・様式4・スケジュール)

申請は電子申請のみで、GビズIDプライムのアカウントが必須です。郵送では受け付けられません。あわせて、商工会・商工会議所の支援を受けて進める設計になっており、事業支援計画書(様式4)の発行が要ります。この様式4は受付締切以降の発行依頼がいかなる理由でも認められないため、窓口には余裕を持って相談してください。第20回公募では、申請受付開始が2026年11月5日、様式4の発行受付締切が2026年12月4日、申請受付締切が2026年12月15日17:00とされています(同上・2026年5月27日公開時点)。交付決定日前に行った発注・契約・支払は対象外になるため、内装工事や備品の発注時期にも注意が必要です。

省力化投資補助金(一般型)の要点

補助上限1億円だが「オーダーメイド性」が門番になる

補助上限は1億円と大きく、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ導入することが必須です。ただし、単に汎用設備を単体で導入するだけの計画は対象外とされています。対象になるのは、省力化に資する汎用設備を複数組み合わせることでより高い省力化効果や付加価値を生み出す場合、または事業者の導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数・搭載機能が変わる場合など、オーダーメイド性のある設備投資です。「50万円以上の機器を1つ買えば対象になる」という誤解は避けてください。

賃上げ・労働生産性の要件と返還リスク

3〜5年の事業計画のなかで労働生産性を年平均+4.0%以上伸ばす計画が必要であり、賃上げ目標の未達成度合いに応じて返還が発生する仕組みになっています。加えて、みなし大企業に該当する場合、直近3年の課税所得の年平均が15億円を超える場合、実態が確認できない場合、従業員0名の場合、外部任せで主体性が見えない計画の場合は対象外になりやすいとされています。

比較で選ぶなら:分院展開のどの局面で使うか

比較軸 小規模事業者持続化補助金 省力化投資補助金(一般型)
投資の主題 分院の販路開拓(開院告知・ウェブ・改装・備品) 既存業務の人手不足解消・自動化
補助上限 50万円(特例の併用で最大250万円) 1億円
規模の要件 常時使用する従業員5人以下(商業・サービス業。宿泊業・娯楽業を除く) 中小企業(みなし大企業等は対象外)
内装・改装工事 委託・外注費として対象になり得る(増築・増床や不動産取得扱いは対象外) 経費区分になし
必須の手続き・条件 GビズIDプライム+商工会・商工会議所の事業支援計画書(様式4) 単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ+オーダーメイド性

実務では、分院を知ってもらう打ち手(告知・ウェブ・改装・備品)を整えたいなら小規模事業者持続化補助金、既存院の延長として人手不足を解消する設備投資が主題なら省力化投資補助金(一般型)、という整理がまず出発点になります。金額の桁が違うので、両者は「どちらが上位」ではなく用途の違いで選ぶ制度です。どちらの制度も交付決定前の発注・契約・購入は対象外となるため、着工や発注のタイミングには注意してください。

補助金でまかなえない部分は融資との組み合わせで設計する

小規模事業者持続化補助金は上限が最大250万円、省力化投資補助金(一般型)にも補助率があり、いずれも分院展開の投資額全体をまかなうものではありません。特に建物・内装の本体工事は補助対象になりにくいため、資金計画の骨格は融資で作ることになります。また、補助金は交付決定・実績報告を経てから入金されるまでに一定の期間がかかるため、着工前の発注資金や、交付までのつなぎ資金を融資で用意しておく必要があります。

分院展開の資金計画を立てる際は、補助金の申請スケジュールと、日本政策金融公庫や取引金融機関への融資相談のスケジュールを並行して進めることが実務上のポイントになります。融資の審査では、既存院の経営実績・収支状況に加えて、新分院の事業計画(立地・診療内容・想定患者数)が確認されるのが一般的です。

まとめ

動物病院の分院展開で使える補助金は、実質的に小規模事業者持続化補助金と中小企業省力化投資補助金(一般型)の2つに絞られます。分院を知ってもらうための販路開拓が主題か、それとも既存業務の省力化が主題かによって、選ぶべき制度は変わります。持続化補助金は従業員5人以下という入口の要件と、建物費という経費区分がない点が判断の分かれ目になりますので、自院の状況と投資の性格を照らし合わせたうえで、早めに専門家へ相談しながら計画を固めていくことをおすすめします。

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よくある質問

Q. 小規模事業者持続化補助金と省力化投資補助金(一般型)を同時に申請できますか?

制度の目的が異なるため、同じ経費を両方の補助金に重ねて申請することはできません。分院投資のうち、販路開拓にあたる部分と、既存業務の省力化にあたる部分を切り分けて検討する必要があります。どちらが自院の計画に合うかは個別の投資内容によって判断が変わるため、専門家に事業計画の段階から相談することをおすすめします。

Q. 分院の内装工事を補助金でまかなうことはできますか?

店舗改装やバリアフリー化の工事は、小規模事業者持続化補助金の委託・外注費として対象になり得ます。ただし建物の増築・増床や「不動産の取得」に当たる工事は対象外になりやすく、補助上限も基本50万円(特例の併用で最大250万円)です。分院の本体工事のような大きな支出を補助金でまかなう設計にはならないため、融資との組み合わせで考えてください。

Q. スタッフが6人以上いる動物病院でも持続化補助金は使えますか?

商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員5人以下が対象なので、これを超えると小規模事業者持続化補助金の対象から外れます。ただし会社役員・個人事業主本人・同居の親族従業員・日雇い等はカウントしないため、まずは自院の人数の数え方を確認してみてください。要件を超える場合は、省力化投資補助金(一般型)など別の制度を軸に検討することになります。

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三浦高

この記事を書いた人

三浦高/Takashi Miura

元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者

産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。

融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

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この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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