
木材加工機・プレカット設備に使える補助金|内製化と外販で変わる制度の選び方
プレカット加工を外注に出している工務店が加工設備を自社に入れる場合と、すでに加工を請け負っている事業者が設備を増強する場合とでは、同じ木材加工機であっても使える補助金が入れ替わります。木材加工機やプレカット設備は1台あたりの金額が大きく、制度を取り違えると審査の土俵に乗らないまま申請期間が終わってしまいます。この記事では、2026年度の制度をもとに、投資の「出口」から候補を絞る手順と、木材加工の設備で外れやすい境界線を整理します。数字はすべて2026年8月時点の公募要領・公表資料に基づくもので、申請前には最新の公募要領をご確認ください。
制度名から探すと遠回りになります
「木材加工機 補助金」で検索すると、工作機械に使える制度を並べた一覧記事が上位に並びます。ただし一覧の多くは機械の種類で分類されており、同じプレカット設備でも申請者の状況で結論が変わる部分までは踏み込んでいません。もう一つ気をつけたいのが年度です。2026年度から「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」は統合され、公募要領上の正式名称は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金になりました。旧制度名のまま書かれた記事は、上限額や要件も旧年度のものが残っていることがあります。
制度を絞り込むときに最初に決めるのは、機種名ではなくその設備で何をするのかです。木材加工機・プレカット設備の投資は、大きく次の3つの出口に分かれます。
- ①内製化・省力化:これまで外注していた加工を自社で行う、あるいは既存の加工工程の人手を減らす
- ②加工の外販・新市場への進出:自社施工用ではなく、他社向けの加工受託やプレカット材の販売という新しい収益源を作る
- ③新しい製品・サービスの開発:これまで市場に出していない部材・工法・製品を開発して提供する
この3つは、制度側の「何を支援する枠なのか」という定義にそのまま対応しています。逆に言えば、出口があいまいなまま申請書を書くと、どの枠の審査基準にも半分しか当てはまらない計画になります。
出口別に見る候補制度
①内製化・省力化なら中小企業省力化投資補助金
外注していた加工を自社に取り込む、あるいは手作業の墨付け・加工を機械化して人手を減らす投資は、中小企業省力化投資補助金(一般型)が正面から当たる枠です。補助上限は1億円で、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ導入することが条件になります。3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画が必要で、賃上げ目標の未達時には返還が発生しうる設計です。
同じ省力化でも、カタログに登録済みの製品をそのまま導入する形であれば中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)が用意されています。こちらは販売事業者との共同申請が前提で、労働生産性を年平均3.0%以上向上させる計画を求められます。補助上限額は改定が入っているため、金額を前提に検討する場合は最新の公募要領で確認してください。
②加工の外販・新市場への進出なら新事業進出枠
自社施工のためではなく、他社向けにプレカット材や加工サービスを提供して新しい収益源を作る計画であれば、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠が候補になります。補助下限は750万円、補助上限は従業員規模別で20人以下2,500万円/21〜50人4,000万円/51〜100人5,500万円/101人以上7,000万円です(大幅賃上げ特例を適用した場合は各3,000万円/5,000万円/7,000万円/9,000万円)。補助率は中小企業者で2分の1です。
この枠は、3枠のなかで唯一建物費を対象経費に持ちます。加工場の新設や増床を伴う計画では選択肢になりますが、建物の単なる購入・賃貸は対象外です。また、新規設立・創業後1年に満たない事業者は対象外で、最低1期分の決算書が求められます。
③新しい製品・工法の開発なら革新的新製品・サービス枠
加工設備を使って、これまで自社が提供していない部材や工法を開発する計画は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠が合います。補助下限は100万円、補助上限は従業員規模別で5人以下750万円/6〜20人1,000万円/21〜50人1,500万円/51人以上2,500万円(大幅賃上げ特例で各850万円/1,250万円/2,500万円/3,500万円)です。補助率は中小企業者で2分の1、小規模企業者・小規模事業者や再生事業者は3分の2となります。
販路開拓が主題で、金額も小さめの取組であれば小規模事業者持続化補助金という選択肢もあります。補助率3分の2、補助上限は基本50万円で、インボイス特例と賃金引上げ特例の両方を満たすと最大250万円です。建設業は「製造業その他」に該当し、常時使用する従業員20人以下が小規模事業者の目安になります。
制度選びより先に決まってしまう、申請者側の条件
設備と制度の相性を検討する前に、事業者側の属性で候補が消えることがあります。木材加工の現場で引っかかりやすいのは次の3点です。
1つ目はみなし大企業の判定です。中小企業省力化投資補助金(一般型)では、みなし大企業に該当する場合や直近3年の課税所得の年平均が15億円を超える場合、従業員0名の場合が対象外になりやすい例として挙げられています。住宅メーカーやプレカット工場の資本関係によっては、ここで先に外れます。
2つ目は小規模事業者の従業員カウントです。小規模事業者持続化補助金では、会社役員・個人事業主本人・同居の親族従業員・日雇い等は従業員数に含めません。職人を多く抱える会社では対象外に見えても、カウントの仕方で判定が変わることがあります。
3つ目は事業計画を誰が作るかです。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、事業計画は申請者自身が作成することが公募要領に明記されており、外部への丸投げは不採択・交付取消の対象とされています。設備メーカーや支援機関の助言を受けること自体は問題ありませんが、計画の中身を自社で説明できる状態にしておく必要があります。
木材加工機の申請で外れやすい4つの境界線
境界線1:加工機を1台入れるだけでは省力化一般型の対象設備にならない
中小企業省力化投資補助金(一般型)が対象とするのは、オーダーメイド性のある設備です。省力化に資する汎用設備を複数組み合わせてより高い効果を出す場合、または導入環境に応じて周辺機器・構成する機器の数・搭載する機能が変わる場合は、汎用設備でもオーダーメイド設備とみなされます。裏を返すと、カタログどおりの加工機を単体で入れる計画は、単価50万円以上という要件を満たしていても対象外です。搬送・集塵・CAD/CAM連携までを含めた構成として組めるかどうかが分かれ目になります。
境界線2:「更新」「効率化」という説明が革新的新製品・サービス枠の対象外定義に当たる
革新的新製品・サービス枠は、単なる設備・システム導入、既存製品・サービスの生産プロセス改善、同業で既に相当程度普及している開発を対象外としています。老朽化した加工機の入れ替えや、加工スピードの向上だけを訴える計画は、この定義に直接あたります。開発する部材や工法の中身を書けない場合は、省力化の枠で組み直すほうが自然です。
境界線3:工場の建屋と基礎工事の扱いが枠で違う
建物費を対象経費に持つのは新事業進出枠だけです。革新的新製品・サービス枠では建物・基礎工事・家賃などの周辺コストは対象外とされており、加工場を建てる費用を含めた総額で計画すると、想定していた補助額に届きません。プレカット設備は重量物で基礎の補強を伴うことが多いため、見積の段階で機械装置分と建築工事分を分けておくと判断が早くなります。
境界線4:交付決定前の発注は対象外
いずれの制度でも、交付決定前の契約・発注・購入は補助対象外です。加工機は受注生産で納期が長く、着工時期から逆算して先に発注してしまうと、その1件だけで補助の対象から外れます。
💬 執筆者の三浦から一言
補助金を審査する側にいた経験から言うと、制度の呼び名は情報の鮮度を測る目安になります。設備投資の相談では「ものづくり補助金と新事業進出補助金のどちらか」という前提で話が始まることがありますが、2026年度からこの2つは統合され、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の各枠という形に変わりました。旧名称で書かれた解説を見ているときは、上限額や要件も前年度のまま止まっている前提で読み直すと安全です。
締切から逆算して動く順番
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募は、2026年6月29日開始、申請受付は2026年8月31日から、締切は2026年10月30日18時、採択発表は2027年1月頃とされています。補助事業の実施期間は、革新的新製品・サービス枠が交付決定日から10か月以内、新事業進出枠が14か月以内です。小規模事業者持続化補助金(第20回)は、申請受付開始が2026年11月5日、締切が2026年12月15日17時で、商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)の受付締切は2026年12月4日です。様式4は締切以降の発行依頼が受け付けられないため、窓口への相談は逆算して動く必要があります。
また、いずれの制度も電子申請でGビズIDプライムのアカウントが必要です。取得には審査期間がかかるため、制度を選ぶ作業と並行して手配しておくと、締切前の余裕が変わります。
よくある質問
Q. 中古の木材加工機でも補助金の対象になりますか。
制度ごとに扱いが異なります。小規模事業者持続化補助金では中古品は条件付きで、単価50万円(税抜)未満かつ2者以上の見積が必要とされています。中古設備を前提に計画する場合は、対象可否を公募要領で確認してから見積を取ってください。
Q. 複数の補助金を同時に使えますか。
国や公的制度との二重受給は認められていません。同じ経費を複数の制度に計上することはできないため、設備一式のうちどの費目をどの制度で申請するかを分けて設計します。
Q. 加工した材料を運ぶトラックも一緒に申請できますか。
車両は対象外になりやすい経費です。小規模事業者持続化補助金では自動車・フォークリフト等の車両は原則対象外とされ、革新的新製品・サービス枠でも汎用PC・スマホ・車両・家賃・建物の単なる購入等は対象外とされています。
まとめ
木材加工機・プレカット設備の補助金は、機種ではなく投資の出口で決まります。内製化・省力化なら中小企業省力化投資補助金、加工の外販という新しい市場に出るなら新事業進出枠、新しい部材や工法の開発なら革新的新製品・サービス枠が起点です。そのうえで、みなし大企業の判定・従業員数のカウント・事業計画の作成主体という申請者側の条件と、単体導入・建物費・交付決定前発注という4つの境界線を確認すると、申請できる枠がかなり絞れます。ここまで整理してから見積を取り直すと、設備の構成そのものが変わることもあります。制度の要件は公募回ごとに改定されるため、実際の申請では最新の公募要領で数字と要件をご確認ください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























