
造作譲渡代金の支払いは、居抜き出店の融資が実行される前に来る
フランチャイズ加盟や独立での出店を決め、居抜き物件を見つけたところまでは進んだものの、造作譲渡代金の支払いが融資の実行より先に来ることに気づいて、資金の順番をどう組めばよいのか迷っている方に向けて書いています。この記事では業種を問わず、居抜きで出店するときの資金を三つに仕分けて数える考え方を紹介します。
造作譲渡代金の支払いと、融資の実行には時間差があります
造作譲渡代金は、物件の契約や引き渡しのタイミングで支払いを求められることが一般的です。一方で融資は、書類を提出してから実行までおおむね三週間から一か月ほどかかり、準備の期間を含めると合計で二か月ほどを見込んでおく必要があります。この二つのスケジュールを並べてみると、支払いの期日が融資の実行日より先に来る場面が生まれることが分かります。
この時間差が生まれる前提を知らないまま物件の契約を進めると、資金の到着を待っている間に支払期日を迎えることになります。契約前の段階で、造作譲渡代金の支払時期と、融資の申込から実行までにかかる期間の両方を確認し、どちらが先に来るのかを具体的な日付で並べておくと、その間に何を手元に用意しておく必要があるかが見えてきます。物件を押さえる前に申込先へ相談しておくと、この時間差を前提にした話ができます。
造作譲渡代金の金額や支払時期は、物件ごと、契約の相手ごとに違います。分割での支払いに応じてもらえるかどうかも交渉の余地がある部分なので、金額と時期の両方を契約の交渉が動き出す前の段階で確認しておくと、資金の組み立てがしやすくなります。申込先に相談する際も、支払期日が具体的にいつなのかを伝えられる状態にしておくと、時間差を踏まえた話がしやすくなります。
フランチャイズ加盟での出店であれば、本部側の開業スケジュールと、物件の引き渡し、融資の申込という三つの流れが並行して進みます。独立での出店でも、物件の契約と資金の準備は同じように並行して動くため、どちらの立場でも、造作譲渡代金の支払いと融資の実行を別々の予定として管理しておくことが、時間差に気づく手がかりになります。
融資に乗せる分を決める前に、引き継ぐ設備を仕分けます
造作譲渡代金は、前のテナントが残した設備や内装をまとめた金額として提示されることが多くあります。ここで金額をそのまま受け入れるのではなく、引き継ぐ設備を「実際に使うもの」「使わないもの」「重複していて過剰なもの」に分けてから、あらためて金額を見直すという順番を挟むことができます。
この仕分けをしておくと、資金の使いみちと調達する金額の整合を説明する場面で、話がしやすくなります。造作譲渡代金の総額をそのまま融資の対象にしようとすると、使わない設備の分まで資金使途として説明を求められる可能性があるため、仕分けを済ませたうえで、実際に必要な分の金額を積み直しておく方が話が早くなります。
過剰な設備とは、例えば同じ用途の設備が重なって残っている場合や、これから始める業態では使う予定のない什器や備品のことです。こうした設備まで含めた金額をそのまま資金計画に乗せてしまうと、実際の開業後の使い方と金額の内訳が合わなくなり、あとから見直しが必要になることがあります。契約前の段階で、引き継ぐ設備の一覧を自分の目で確認し、使う・使わないの判断を先に済ませておくと、金額の積み直しがしやすくなります。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
居抜きで引き継ぐ設備は、まず使うものと使わないものに分けてから金額を出す方が話は早いです。全部をそのまま引き継ぐ前提で計画を組んでしまうと、資金使途と調達額の整合を聞かれたときに答えづらくなります。仕分けを先に済ませておくと、審査の場でも説明の筋が通ります。
資金使途の区分で、返済期間の枠が変わります
融資には資金使途の区分があり、設備に関わる支出と、日々の事業を回すための支出とでは、適用される返済期間の枠が異なります。新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例として、設備資金は返済期間二十年以内・据置期間五年以内、運転資金は返済期間十年以内・据置期間五年以内という枠が示されています。
この枠はあくまで制度上の上限であって、申込者が自由に選べるものではありません。実際に適用される返済期間や据置期間は、審査のうえで金融機関が決定します。土地や建物の取得は設備にあたる支出として扱われる考え方があり、内装や設備に関わる支出についても、資金使途を整理する場面で同じ区分の対象として検討されることがあります。引き継ぐ設備を仕分けて金額を出しておく作業は、この資金使途の区分を申込先に説明するときにも役立ちます。
運転資金の枠で返済期間が短くなると、月々の返済額の水準も変わってきます。設備に関わる支出として整理されるのか、日々の運転に関わる支出として整理されるのかによって、資金計画の前提が変わるため、仕分けた結果をどちらの区分で申込先に伝えるかは、契約を確定させる前に確認しておきたい点です。融資は「申込」から「実行」までの流れで進み、区分ごとの数字はこの流れのなかで申込先とすり合わせていく形になります。
居抜きだからこそ、数え忘れやすい費用があります
居抜きは、内装や設備を一から揃える手間や費用が抑えられる面があります。ただし、居抜きだからこそ別に確認しておきたい費用もあります。まず、引き継ぐ設備の残存年数と、近い将来に入れ替えが必要になりそうな時期です。古い設備をそのまま使い続ける計画にしていると、開業してからそれほど時間が経たないうちに、入れ替えの費用が発生する場合があります。
次に、前のテナントが負っていた原状回復義務が、契約の形によっては引き継がれる場合があります。退去のときにどこまで元の状態に戻す必要があるのかは契約の内容によって変わるため、契約書のその部分を自分の目で確認し、判断に迷う箇所があれば専門家に相談しておくと、あとになって想定外の支出に気づくことを避けやすくなります。
もう一つ確認しておきたいのが、引き継ぐ設備の名義です。設備の支払いがまだ終わっていない状態で契約者だけが変わっている場合や、名義が前のテナントのまま残っている場合があります。造作譲渡の内容に含まれる設備の一つひとつについて、支払いや名義の状況を契約前に確認しておくと、開業後に思わぬ請求を受けることを避けやすくなります。
三つに仕分けて、出店までの資金を数えます
ここまでの内容を、出店までに必要な資金の仕分けとしてまとめます。一つ目は融資に乗せる分です。引き継ぐ設備を仕分けたうえで、実際に必要と判断した分の金額を、資金使途の区分に沿って申込先に説明します。二つ目は先に手元から出る分です。造作譲渡代金の支払期日が融資の実行より先に来る場合、その間の支払いに充てる分を手元に用意しておく必要があります。三つ目は数え忘れやすい分です。設備の残存年数や入れ替えの時期、原状回復義務の引き継ぎ、設備の名義や支払い状況の確認にかかる費用が含まれます。
この三つを分けて数えておくと、造作譲渡代金という一つの金額に見えていたものが、実は性質の異なる複数の支出でできていることが分かります。物件を契約する前に、この三つの仕分けを自分の物件に当てはめておくと、資金の全体像を申込先に説明しやすい形にできます。
居抜き物件は、内装や設備が既にある分だけ検討のスピードが速くなりがちですが、資金の面では、支払いのタイミングと資金使途の区分という、新築の物件とは違う視点が必要になります。契約を確定させる前に、造作譲渡代金の支払時期と融資の申込から実行までの流れを申込先に伝え、資金の仕分けを一緒に確認しておくと、契約後に慌てる場面を減らせます。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























