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コラム

飲食店開業に必要な自己資金とは

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飲食店開業に必要な自己資金とは

「飲食店を開きたいけれど、自己資金はいくら用意すればいいのか」——これは創業融資の相談で最も多い質問のひとつです。飲食店は物件取得費や厨房設備など初期投資が大きく、すべてを自己資金でまかなうのは現実的ではありません。そこで多くの方が日本政策金融公庫などの創業融資を利用しますが、その審査で必ず見られるのが「自己資金」です。この記事では、これから飲食店を開業する個人事業主・経営者に向けて、必要な自己資金の目安、融資審査での自己資金の考え方、自己資金が少ない場合の対処法までをわかりやすく整理します。(制度内容は2026年時点の情報です)

飲食店開業に必要な自己資金の目安

結論から言うと、飲食店開業に必要な自己資金は「開業資金全体の3割程度」が一つの目安です。まずは開業資金そのものの内訳を押さえたうえで、自己資金の目安を見ていきましょう。

飲食店の開業資金の内訳

飲食店の開業資金は、店舗の規模や立地によって大きく変わりますが、主に次のような費用で構成されます。

  • 物件取得費:保証金(敷金)・礼金・前家賃・仲介手数料など。家賃の6〜12カ月分が目安
  • 内装・外装工事費:スケルトン物件か居抜き物件かで大きく変わる。坪単価で数十万円かかることも多い
  • 厨房設備・什器備品費:コンロ、冷蔵庫、製氷機、食器、テーブル・椅子など
  • 当面の運転資金:開業後すぐは売上が安定しないため、家賃・人件費・仕入れの3〜6カ月分

小規模な飲食店でも総額1,000万円前後、立地や規模によっては2,000万円を超えるケースもあります。とくに見落とされがちなのが運転資金です。開業直後は赤字が続くことも多く、手元資金が尽きると黒字化を待たずに資金ショートを起こします。

自己資金は「開業資金の3割」が一つの目安

創業融資では、自己資金が多いほど審査で有利になります。明確な決まりがあるわけではありませんが、実務上は開業資金総額の2〜3割程度の自己資金があると、融資審査での評価が安定しやすいといえます。たとえば開業資金が1,000万円なら、200万〜300万円程度の自己資金を準備し、残りを融資でまかなうイメージです。

自己資金が多いことは、単に「足りる・足りない」だけの問題ではありません。コツコツと開業資金を貯めてきた事実そのものが、計画性や事業への本気度を示す材料として評価されます。

そもそも自己資金とは何か(融資審査での考え方)

自己資金とは、返済義務のない、自分で用意したお金のことです。ただし、融資審査では「通帳の残高」がそのまま自己資金として認められるわけではありません。お金の出どころ(origin)まで見られる点が重要です。

自己資金として認められるお金・認められにくいお金

審査で評価されやすいのは、毎月の給与などからコツコツ積み立ててきた預貯金です。通帳に少しずつ増えていく履歴が残っていると、計画的に準備してきたことが伝わります。一方で、次のようなお金は自己資金として評価されにくい、または説明を求められる傾向があります。

  • 出どころを説明できないお金:いわゆるタンス預金を直前に入金しただけでは、自分で貯めたものか証明できず評価されにくい
  • 借入によるお金:カードローンや消費者金融などから借りたお金は「返済義務がある」ため自己資金とは見なされない
  • 一時的に借りて入金したお金:いわゆる「見せ金」(後述)

なお、親や親族からの贈与は、贈与であることが明確であれば自己資金として認められる場合があります。その場合は、援助である旨や金額がわかるようにしておくとよいでしょう。

「見せ金」は通用しない

審査を有利にしようと、一時的に知人などから借りて口座に入金し、自己資金が多く見えるように装うことを「見せ金」といいます。これは絶対に避けるべきです。金融機関は申込み前後の通帳の動きを必ず確認するため、直前にまとまった金額が入金されていれば、その出どころを質問されます。説明がつかない不自然な入金は、かえって信用を損ない、審査全体にマイナスの影響を与えます。自己資金は、時間をかけて正直に準備することが何より大切です。

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自己資金が少ない・ゼロでも飲食店開業融資は受けられるのか

「自己資金が少ないと融資は無理なのか」と不安に思う方も多いでしょう。結論としては、自己資金ゼロでも融資の申込み自体は可能ですが、希望額どおりに借りるのは難しくなる、というのが実態です。

日本政策金融公庫では、2024年に従来の「新創業融資制度」が廃止され、創業者向けの融資は「新規開業資金」に一本化されました。この見直しにより、かつて求められていた自己資金要件(創業資金総額の10分の1以上)は制度上は撤廃されています。つまり、形式的には自己資金がなくても申込みはできます。

ただし、要件が撤廃されたことと、審査で自己資金が見られなくなったことは別の話です。自己資金は事業への本気度や計画性を示す重要な材料であり、自己資金が少ないほど、融資額が抑えられたり、事業計画の説得力をより強く求められたりする傾向があります。自己資金が少ない場合は、その分だけ事業計画書の精度(売上の根拠・経験・返済の見通し)を高めて補うことが現実的な対策になります。

自己資金を効率よく準備する方法

融資審査を見据えるなら、開業を思い立った時点から計画的に自己資金を準備していくのが理想です。具体的には次のような方法があります。

  • 毎月一定額を専用口座に積み立てる:給与などから一定額を別口座に移し、通帳に「貯めてきた履歴」を残す
  • 開業時期から逆算して目標額を決める:必要な開業資金の3割を目安に、いつまでにいくら貯めるかを設定する
  • 親族からの援助は早めに整理する:贈与を受ける場合は、いつ・いくら・誰からかを明確にしておく
  • 補助金・助成金の活用も検討する:返済不要の資金を組み合わせられれば、自己負担を軽減できる

注意したいのは、開業直前にまとめて口座へ移動させると、見せ金を疑われかねない点です。準備は「直前にまとめて」ではなく「時間をかけて少しずつ」が鉄則です。

よくある質問(FAQ)

Q. 飲食店開業の自己資金は最低いくらあればいいですか?

A. 明確な最低額はありませんが、開業資金総額の2〜3割が一つの目安です。たとえば開業に1,000万円かかるなら、200万〜300万円程度を自己資金として準備できると、融資審査での評価が安定しやすくなります。

Q. 自己資金なしでも日本政策金融公庫の融資は受けられますか?

A. 2024年の制度見直しで自己資金要件は撤廃されたため、申込み自体は可能です。ただし審査では自己資金が引き続き重視されるため、自己資金がないと融資額が抑えられる傾向があります。事業計画書の精度で補うことが重要です。

Q. 親からもらったお金は自己資金になりますか?

A. 贈与であることが明確であれば、自己資金として認められる場合があります。誰から・いつ・いくら受け取ったかがわかるようにしておきましょう。一方、返済を前提に借りたお金は自己資金として認められないことが多いです。

まとめ

飲食店開業に必要な自己資金は、開業資金総額の3割程度が一つの目安です。自己資金は単に金額の問題ではなく、コツコツ準備してきた履歴が事業への本気度や計画性として評価されるため、時間をかけて正直に準備することが大切です。見せ金は必ず見抜かれるため避けましょう。2024年の制度見直しで公庫の自己資金要件は撤廃されましたが、審査での自己資金の重要性は変わりません。自己資金が少ない場合でも、事業計画の精度を高めることで道は開けます。まずは自分の開業プランに必要な資金と自己資金の目安を整理し、不安があれば早めに専門家へ相談することをおすすめします。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

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