
企業価値担保権・創業融資・制度融資の違いと使い分け早見表|どの資金調達が自社に合うか
まずは3つの選択肢をざっくり把握する
細かい比較に入る前に、それぞれの「キャラクター」をつかんでおきましょう。
企業価値担保権|事業全体を担保にする新制度
企業価値担保権(事業性融資法第7条)は、不動産などの個別資産ではなく、会社の総財産(無形資産や将来財産を含む)を一体として担保にできる新しい担保権です。不動産担保や個人保証への過度な依存を是正することを目的(第1条)としています。対象は会社法上の「会社」(株式会社・持分会社)で、個人事業主は対象外(第2条)です。施行直後のため、対応できる金融機関は現時点では限られる傾向があります。
創業融資|公庫の無担保・無保証が定番
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、2024年3月に廃止された新創業融資制度に代わる主力制度です。原則として無担保・無保証人で利用でき、事業計画書と自己資金が審査の軸になります。法人・個人事業主のどちらも利用できます。
制度融資|自治体・保証協会連携で金利を抑えやすい
制度融資は、地方自治体・信用保証協会・民間金融機関の三者連携による中小企業・創業者向けの融資です。信用保証協会の保証が付くため民間金融機関が融資しやすく、自治体による利子補給や保証料補助がある場合には、金利負担を比較的抑えやすい傾向があります。
3制度の違いを早見表で比較する
| 観点 | 企業価値担保権 | 創業融資(公庫) | 制度融資 |
|---|---|---|---|
| 担保 | 会社の総財産(無形資産・将来財産を含む)を一体で担保 | 原則無担保 | 信用保証協会の保証が中心(自治体により異なる) |
| 経営者保証・保証人 | 個人保証の権利行使を制限(第12条。虚偽報告等は例外=第12条4項) | 原則無保証人 | 保証協会の保証付き。経営者保証の扱いは制度による |
| 対象事業者 | 会社法上の会社のみ(個人事業主は対象外) | 法人・個人事業主とも可 | 中小企業・創業者(法人・個人とも可。要件は自治体次第) |
| 金利の傾向 | 金融機関の評価による(施行直後で事例が限られる) | 基準利率 年3.25〜4.65%(2026年3月時点。無担保利用は原則0.65%引下げの可能性) | 利子補給・保証料補助があれば抑えやすい傾向(自治体により異なる) |
| 実行までのスピード | 取締役会決議や商業登記等が必要で、対応先も限られ時間を要する傾向 | 書類提出後おおむね3週間〜1か月(準備含め約2か月) | 自治体要件+保証協会審査+金融機関審査で時間がかかる傾向 |
| 向く場面 | 無形資産が強みで経営者保証を外したい法人 | 創業前〜創業直後の資金調達 | 低金利重視・地域密着の事業者 |
※制度融資は自治体ごとに条件・金利・限度額が異なるため、具体的な数字はお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
タイプ別・自社に合うのはどれか
- 創業前〜創業直後で、まず資金を確保したい→ 無担保・無保証で使いやすい創業融資(公庫)が第一候補になりやすいです。
- 金利負担をできるだけ抑えたい・地域に根ざして事業を行う→ 利子補給などがある制度融資も比較対象に入れる価値があります。
- 不動産は乏しいが無形資産(ノウハウ・顧客基盤等)が強みで、経営者保証を外したい法人→ 企業価値担保権が視野に入ります。ただし施行直後で対応金融機関が限られる点に留意し、取引先金融機関に取り扱いを確認することが期待されます。
選ぶときに押さえておきたい注意点
対象者の違いに注意
最も基本的な分かれ目は対象者です。個人事業主は企業価値担保権を利用できません(第2条)。一方、創業融資・制度融資は個人事業主も利用できます。法人化の予定がない場合は、創業融資や制度融資が現実的な選択肢になります。
スピードと手続きの重さ
急いで資金が必要なら、比較的実行が早い傾向のある創業融資が候補になりやすいです。企業価値担保権は、設定に取締役会決議等(第10条)や本店所在地での商業登記(第15条)が必要で、三者による信託スキーム(委託者=債務者/受託者=免許を受けた企業価値担保権信託会社/受益者=貸し手)を組むため、手続きは相応に重くなる傾向があります。
なお、商業登記・税務・労務などの具体的な手続きは、司法書士・税理士・社会保険労務士といった専門家へご相談ください。本記事は制度の全体像を比較するものであり、個別手続きの指南ではありません。
まとめ
3つの手段は「対象者・担保・経営者保証・金利の傾向・スピード」で性格が大きく異なります。創業期はまず創業融資、金利重視・地域密着なら制度融資、無形資産が強みで経営者保証を外したい法人は企業価値担保権を視野に——という整理が出発点になります。早見表で自社の位置づけを確認したうえで、具体的な可否や条件は各窓口・専門家に相談しながら進めることをおすすめします。本記事は執筆時点の情報に基づくため、実際の利用前に最新の制度内容をご確認ください。
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























