
フランチャイズの創業融資は業種で通りやすさが変わる?審査で実際に見られること
フランチャイズ加盟で開業するとき、候補の業種が複数あると「どの業種なら融資が通りやすいのか」を知りたくなります。ただ、業種ごとの通りやすさをまとめた基準は公表されていません。業種によって変わるのは合否のハードルではなく、審査で説明を求められる中身のほうです。ここでは、業種で何が変わり、何が変わらないのかを、2026年8月時点の情報で整理します。
「通りやすい業種」の一覧は公表されていない
日本政策金融公庫の創業融資は、現在は新規開業・スタートアップ支援資金が主力の制度です。2024年3月までの名称は新規開業資金で、2024年4月に改称・拡充されました。無担保・無保証の特例だった新創業融資制度は2024年3月に廃止されています。
この制度に、業種ごとの合否基準は設けられていません。審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。判断材料はこの2つだけではなく、経験や資金使途、面談の内容も含めて総合的に見られます。そのため、業種名だけで結論が決まるという読み方はできません。
業種によって変わるのは、説明を求められる中身
初期投資の重さで、資金使途の説明量が変わる
厨房設備や施術機器、車両など、開業時にまとまった設備が必要な業種では、その設備が事業に必要かどうかの説明が増えます。金額が大きくなるほど、見積の内訳と、その設備で何をどれだけ回すのかを具体的に示す場面が増える構造です。反対に、初期投資が軽い業種は説明する項目自体が少なくなります。書く量が少ない分、売上の根拠のほうに説明の重心が移ります。
売上の見通しを数字で示しやすいかどうか
客数と客単価が読みやすい業種か、案件単位で受注が動く業種かによって、計画に書ける数字の性質が変わります。フランチャイズの場合は本部が持つ既存店のデータを参考にできるため、この点は個人で一から始める開業より整理しやすい面があります。ただし本部の想定値をそのまま転記するのではなく、自分が出店する立地や商圏に置き換えて説明できる状態にしておく必要があります。
本人がその業種で働いた経験があるか
未経験の業種で創業する場合は、事業計画書の中で経験不足をどう補うかが論点になりやすくなります。社内ナレッジの整理では、同業のメンターから定期的に助言を受けている、経理や専門技術を業務委託でプロに任せている、といった対策は経営そのものへの関与としては弱く、有効なカバー策とは言えないとされています。事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えるほうが説得力を持ちます。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
審査する側から見ると、返済力が乏しいから金額を削る、という順番では考えていません。返済は返済期間で調整できる話なので、収益の中から返済金が出せることを計画で示せていれば足ります。先に見ているのは、その事業自体が無理なく組み立てられているかどうかです。業種の当たり外れを探すより、そこを固めるほうが結果につながります。
フランチャイズだからこそ加わる論点
本部の実績と、本人が創業した実績は別に見られる
審査で問われるのは、本人が事業として創業した実績の有無です。加盟する本部のブランドや業態に実績があることと、申込者本人の実績があることは別に扱われます。本部の知名度を根拠に説明を省略すると、自分が何をどう回すのかという部分が薄いまま提出することになります。
法定開示書面は融資の必要書類ではない
フランチャイズの融資解説では、必要書類として法定開示書面(フランチャイズ・ガイドラインに基づく重要事項説明書)が挙げられていることがあります。しかし法定開示書面は、本部が加盟希望者に交付する書類であって、公庫融資の申請に必要な書類ではありません。融資側で中心になるのは、創業計画書、自己資金のエビデンス、見積書、本人確認書類などです。書類の準備段階で混ざりやすいため、加盟手続きの書類と融資申請の書類は分けて考えてください。
すでに会社を経営している場合は、その決算書も見られる
創業融資は事業として創業した実績がなくても申し込めますが、決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていれば、その決算書が確認されます。また、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。副業や別事業を持ったままフランチャイズに加盟するケースでは、この点が申込法人の外側で効いてきます。事業計画書や自己資金などの準備に加えて、すでに決算が済んでいる会社があるなら、その内容も踏まえて説明できるように整理しておくと安心です。判断は個別の状況によって変わるため、詳細は申請先や専門家にご確認ください。
業種を問わず、先に固めておきたい数字と段取り
業種選びで迷っている段階でも、制度側の数字は共通です。新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額は7,200万円で、うち運転資金は4,800万円です。2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いとなります。
自己資金については、額が審査の重要な判断材料になる一方で、制度上、額や割合の要件は決まっていません。総額の何分の1が必須という決まりがあるわけではなく、自己資金が多いほど有利になりやすい、という関係で捉えるほうが実態に近くなります。
時間の見通しも業種によらず共通です。書類提出後の目安はおおむね3週間から1か月で、準備期間を含めると合計で約2か月を見ておくと安全です。加盟契約の締結や物件の確保には期限が設定されることが多いため、融資の実行時期と並べて逆算しておくと判断がぶれません。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
店舗を構える業種の方からは、希望の物件で申し込んでよいかという質問をよく受けます。店舗の場合は、その商売として一等地が本当に必要かを問われることがあります。立地の条件を上げれば売上の説明はしやすくなりますが、家賃の重さも同時に説明することになります。物件を決める前に、この2つをセットで話せるようにしておくと進めやすくなります。
まとめ
フランチャイズの創業融資に、業種ごとの通りやすさを示した基準はありません。業種で変わるのは、初期投資の重さに応じた資金使途の説明量、売上の見通しを数字で示しやすいかどうか、本人にその業種の経験があるかどうかという説明の中身です。加えてフランチャイズでは、本部の実績と本人の実績が別に見られること、法定開示書面は融資の必要書類ではないことを押さえておくと、準備の順番を間違えずに済みます。業種を絞り込む段階から、制度の数字とスケジュールを並べて検討を進めてください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
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- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























