
フランチャイズ加盟の事業計画書、本部の収支モデルはどこまで自分の数字に直すべきか
フランチャイズ加盟を検討していると、本部からモデル収支やロイヤリティを差し引いた投資回収シミュレーション、出店予定エリアの商圏データや近隣の既存店実績といった資料を渡されることがあります。手元にこれだけの資料が揃っていると、「事業計画書はこの数字を転記すれば完成する」と考えたくなりますが、日本政策金融公庫の創業計画書では、本部の資料をそのまま使える項目と、自分の言葉・自分の根拠に作り直さないと審査で説明できない項目とが分かれています。本記事は2026年8月時点の情報にもとづき、本部資料の使える範囲と作り直す範囲を一問一答の形で整理します。制度や数字は変わることがあるため、最新の内容は日本政策金融公庫の公式情報で確認してください。
フランチャイズ本部から渡される資料にはどんな種類があるか
加盟を検討する段階で本部から渡される資料には、大きく分けて三つの種類があります。一つ目は売上・原価・人件費などの見込みをまとめたモデル収支、二つ目は初期投資額と回収年数を試算した投資回収シミュレーション、三つ目は出店予定エリアの人口や競合状況、近隣の既存店の実績データです。これらとは別に、フランチャイズ・ガイドラインにもとづく法定開示書面(重要事項説明書)が交付されることもありますが、この書面は本部が加盟希望者に交付する書類であって、日本政策金融公庫の融資申請に必要な書類ではありません。融資の必要書類は創業計画書や自己資金のエビデンス、見積書などが中心で、本部から渡される資料とは性質が異なる書類だと整理しておくと、準備する書類を取り違えずに済みます。
本部のモデル収支・投資回収シミュレーションはそのまま使えるか
モデル収支や投資回収シミュレーションは、本部が持つ既存店の平均的な数字をもとに作られていることが多く、立地条件や競合状況が異なる自分の出店予定地にそのまま当てはまるとは限りません。日本政策金融公庫の審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されますが、判断材料は事業計画書と自己資金の二つだけに限られるわけではありません。売上や利益の見込みについても、なぜその数字になるのかを自分の言葉で説明できる状態にしておく必要があります。本部の数字を土台にしながら、出店予定地の条件に合わせて前提を書き換え、根拠を自分で説明できる形に落とし込む作業が求められます。
本部の商圏データ・既存店実績はどこで使えるか
商圏データや近隣の既存店実績は、出店エリアの妥当性を裏づける材料として使えます。ただし、未経験の業種で創業する場合、事業計画書でどう経験不足を補うかが審査上の論点になりやすい点は別に押さえておく必要があります。「同業のメンターから定期的に助言を受けている」「経理や専門技術を業務委託でプロに任せている」といった対策は、経営そのものへの関与としてはみなされにくく、有効なカバー策とは言えないとされています。本部のデータや研修があることは出店判断の裏づけにはなりますが、経営体制そのものの説得力を補うものではありません。説得力を持たせるには、事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整える方向で補うことが有効です。
設備資金と運転資金の区分、返済期間・据置期間はどう考えるか
本部のモデル収支は月々の売上・経費という時系列で組まれていることが多く、公庫の創業計画書で必要になる「設備資金」「運転資金」という資金使途の区分とは前提が異なります。新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例では、設備資金は返済期間20年以内・据置期間5年以内、運転資金は返済期間原則10年以内・据置期間5年以内とされています(2026年6月1日現在の案内にもとづく数字)。据置期間中は元金の返済がなく利息のみの支払いになるため、開業初期の資金繰りに余裕を持たせられます。本部からもらった投資額の一覧も、内装・設備といった設備資金にあたる支出と、開業後の仕入れ・人件費といった運転資金にあたる支出とに、自分で仕分け直しておくと、面談で聞かれたときに説明しやすくなります。
💬 執筆者の小峰から一言
創業融資の返済期間は、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内で、据置期間はどちらも5年以内です(新規開業・スタートアップ支援資金の例)。本部からもらった収支計画の数字も、この資金使途ごとの区分に沿って仕分けて確認しておくと、面談で説明しやすくなります。
本部資料をベースにした計画で、自己資金や決算書はどう見られるか
自己資金については、制度上「総額の何分の1が必須」といった額や割合の要件は決まっていません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料になり、面談時点で口座に確認できる形にしておく必要があります。創業前に自費で取得した資格や設備・備品の購入、テストマーケティング費用などは、一定範囲で「みなし自己資金」として評価されることがあるため、領収書は保管しておく必要があります。また、創業融資だからといって決算書を見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても一期でも決算が締まっていればその決算書が確認されますし、代表者が他に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。本部資料は売上の見立てを補強する材料にはなりますが、自己資金や決算の状況といった自分自身の情報を置き換えるものではありません。
本部資料が揃っていれば審査に通ると考えてよいか
本部から渡されたモデル収支や投資回収シミュレーション、商圏データは、事業計画書を組み立てる出発点として役立ちますが、それだけで審査に通ることを保証するものではありません。売上や利益の根拠を自分の言葉で説明できるか、設備資金と運転資金を資金使途に沿って仕分けられているか、自己資金や決算の状況を含めて全体像を説明できるかが、あわせて問われます。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
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- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
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