
フランチャイズ開業で補助金と融資を組み合わせる手順|開業前に補助金を当てにできない3つの理由
加盟する本部を絞り込む段階になると、開業資金の一覧表を作ります。加盟金、保証金、研修費、内装、什器、当面の運転資金。合計額を見て「この一部を補助金でまかなえないか」と考えるのは自然な流れです。
ただ、開業前の資金として補助金を数えると、資金計画は途中で崩れます。理由は入金が後になるからという一点ではなく、制度の設計そのものにあります。ここでは、開業前と開業後で役割を分けて組み立てる手順を、加盟契約の前に確認できる形で整理します。数字は2026年8月時点の社内資料と各制度の公募要領に基づくもので、申請前には最新の情報で確認してください。
開業前の資金として補助金を数えられない3つの理由
1. 未開業の段階では申請できない制度がある
小規模事業者持続化補助金の公募要領(第20回)は、対象外になりやすい形態として「申請時点で未開業の創業予定者」を挙げています。加盟契約を結んでいても、開業していなければ通常枠の土俵には立てません。同じ持続化補助金には別枠として<創業型>があり、通常枠との重複申請はできないとされています。どちらの枠で動くのかは、加盟の段取りを決める前に確認しておく箇所です。
2. 交付決定の前に発注・契約・支払をすると対象外になる
交付決定前の発注・契約・購入が対象外である点は、持続化補助金でも新事業進出・ものづくり商業サービス補助金でも同じように定められています。採択の通知だけでは事業を始められません。ところがフランチャイズの開業準備は、本部が示す開店日から逆算して物件契約と内装発注が先に走ります。この二つのスケジュールは、放っておくと噛み合いません。
3. 加盟金やロイヤリティは補助対象経費の区分に見当たらない
持続化補助金の対象経費は機械装置等費・広報費・ウェブサイト関連費・展示会等出展費・旅費・新商品開発費・借料・委託外注費という区分です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の主軸は機械装置・システム構築費です。加盟金・保証金・ロイヤリティ・研修費は、これらの区分の説明に出てきません。開業資金の中で金額の大きい費目ほど、補助金の側では受け皿が見当たらない状態になります。
手順1:開店日を先に固定し、そこから逆算する
本部との協議で開店日がおおよそ決まったら、それを動かせない一点として置きます。日本政策金融公庫の創業融資は、書類提出後おおむね3週間から1か月で実行というのが目安で、創業計画書や自己資金のエビデンス、見積書の準備を含めると合計で2か月程度を見ておく形になります。開店日から逆算すると、融資の申し込みをいつ動かすかは自動的に決まります。
手順2:開業までに出ていく支出は融資側で組む
公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)という設計です。2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、下がると決めてかからず申請先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いとなります。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
補助金の対象になるからと仕様を上げておけば両方通る、という順序で考える方がいます。審査する側から見ると、設備が本当に必要かどうかは一つずつ見る箇所です。リースや中古品で足りるものはそちらでよいと判断されることもあります。補助金に寄せて見積を膨らませると、融資の側では説明する材料が増える方向に働きます。
手順3:開業後の投資を、公募回に合わせて後ろに置く
補助金を使う場面は、開業してからの投資に移します。販路開拓であれば小規模事業者持続化補助金、現場の省力化であれば中小企業省力化投資補助金(一般型)、業務のデジタル化であればデジタル化・AI導入補助金というように、投資の目的で候補が分かれます。
ここで見ておくのが公募回のカレンダーです。持続化補助金の第20回は申請受付開始が2026年11月5日、締切が2026年12月15日17時、採択発表が2027年3月頃という日程です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回は2026年9月30日18時が締切で、採択発表は2026年12月頃です。開業直後に投資したい内容があっても、公募回の側は動きません。逆に言えば、開店から半年後に予定している投資であれば、公募回に合わせて申請の準備を進められます。
金額の規模感も先に見ておきます。小規模事業者持続化補助金は補助率3分の2、基本の補助上限が50万円で、インボイス特例や賃金引上げ特例の要件を満たす場合に上乗せがあり、両特例の併用で最大250万円という設計です。開業資金の総額と並べると、補助金が担える範囲はおのずと限られます。
手順4:締切より前に動かす手続きを洗い出す
補助金には、申請そのものより前に済ませておく手続きがあります。持続化補助金は電子申請のみで、ジー・ビズ・アイディーのプライムアカウントを事前に取得していることが要件です。加えて、商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)が必要で、第20回では発行の受付締切が2026年12月4日に設定されています。この受付締切を過ぎた発行依頼は理由を問わず受け付けられないという扱いです。
申請締切の2026年12月15日だけを見て動くと、窓口の受付締切を先に越えてしまいます。開業直後は店舗を回すことに時間を取られる時期なので、こうした前工程は開業前のうちに調べておくと、開業後の負担が軽くなります。
手順5:交付決定を待てる支出と、待てない支出を分ける
開業準備の中で、開店日までに発注が必要なものと、開店後でも構わないものを線で分けます。内装や本部指定の初期設備は前者です。追加の販促、二台目以降の機器、業務システムは後者に回せることがあります。この仕分けができていると、どこまでを融資で組み、どこから先を補助金の申請対象として残すかが決まります。
加盟契約の前に確認しておくこと
- 本部が示す開業資金モデルの中に、補助金が前提として含まれていないか
- 開店日と、使う予定の補助金の公募回・採択発表時期が重なっていないか
- 開業後に回せる投資が、金額としてどのくらい残っているか
- 加盟金・保証金・研修費を、融資の資金使途としてどう説明するか
- 審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されるという前提を共有できているか
まとめ
フランチャイズ開業で補助金と創業融資を組み合わせるときは、二つを同じ資金として足し算するのではなく、時期で役割を分けます。開業までに出ていく支出は創業融資で組み、補助金は開業後の投資に回す。この順序にすると、未開業では申請できない制度があること、交付決定前の発注が対象外になること、加盟金が対象経費の区分に見当たらないことのいずれにも引っかからずに進められます。加盟契約の期日と公募回の日程を並べたうえで判断が難しい場合は、加盟前の段階で専門家に相談してください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























