
電子カルテと予約システムを同じ年に入れ替えるときの補助金申請の組み立て方
電子カルテの入れ替え時期が来て、あわせて予約の受付もシステム化したい。見積を取り始めた院長先生から、こうしたご相談をいただくことがあります。制度を調べると「対象になる」という説明は多く見つかります。ところが、2つを同じ年にまとめて入れるとなると、話は「対象かどうか」から一段先へ進みます。
先に決めておくことがあるからです。2つを1件の事業として申請するのか、それとも別々に出すのか。この分かれ目は、導入を頼む相手が1社なのか2社なのかで動きます。見積を取ってから気づくと、費用の内訳を作り直すところからやり直しになります。この記事では、その判断の順番を整理します。
入口になる制度と、その対象経費の範囲
電子カルテや予約管理のようなソフト・クラウドの導入は、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)が入口の候補になります。事務局に登録されたITツールを、登録された支援事業者の支援を受けて導入することが申請の前提になっている制度です。枠は複数あり、通常枠の補助上限は450万円、インボイス枠は350万円、複数の事業者が連携して共通の基盤を入れる枠は3,000万円という区分になっています(いずれも2026年8月時点の社内資料に基づく整理です)。
この制度が医療分野で使われやすい理由もあります。国が助成するほかの制度と重複する経費は補助の対象から外れるという考え方があり、保険診療にかかる経費は原則として対象外になります。そのなかで本制度は、保険診療・自由診療のどちらの業務効率化にも使える数少ない制度として位置づけられています。ただし対象はソフトやサービスが中心で、診療機器そのものは対象になりにくく、パソコンやタブレットの単体購入も対象から外れます。
対象経費の範囲も押さえておきます。ソフトウェアの購入費のほか、クラウドの利用料は最大2年分、そして導入関連費として設定・研修・マニュアル作成・保守サポートなどが含まれます。ここは見積の作り方に直結する部分です。
1件にまとめるか、分けて出すか
2つのシステムを同じ時期に入れるとき、実務上の分かれ目は次の2つです。
導入を頼む相手が同じ会社の場合。電子カルテと予約システムが同じ提供元のシリーズで、窓口も1社になるのであれば、1件の事業として組み立てるほうが素直です。業務の流れが受付から記録まで一続きになるので、何をどう効率化するのかという説明も1本の線でつながります。
導入を頼む相手が別の会社になる場合。電子カルテは長く使っている会社から、予約システムは別の会社から入れる、という形はよくあります。この場合は、それぞれのツールと支援する会社が制度側に登録されているかを、別々に確認することになります。片方が登録されていなければ、その片方は制度に乗りません。2つをまとめて考えていると、この確認が抜けます。
まとめるか分けるかは、上限額の大小だけで決める話ではありません。まとめれば1件分の手続きで済みますが、片方の準備が遅れると全体が遅れます。分ければ手続きは2回になりますが、進められるほうから先に動かせます。院内の体制と、入れ替えの緊急度がどちらに寄っているかで判断が変わります。
見積を頼む前に決めておきたい4項目
制度の入口が見えたら、見積の中身を先に設計します。次の4つは、後から動かすと内訳ごと作り直しになりやすいところです。
1つ目は、既存データをどこまで移すかです。電子カルテの入れ替えでは、これまでの記録をどの範囲で新しい環境に持っていくかを決めます。全期間を移すのか、直近の数年分にとどめるのか。作業量が変わるので、決めないまま見積を頼むと概算のまま止まります。
2つ目は、2つのシステムをつなぐ範囲です。予約の情報を電子カルテ側でも見られるようにするのか、それぞれ独立したまま使うのか。つなぐ場合は、どちらの会社がその設定を担当するのかまで決めておきます。別々の会社に頼むときほど、ここが宙に浮きます。
💬 執筆者の三浦から一言
審査する側で申請書を見ていたころ、見落とされやすいと感じたのは本体価格の外側でした。既存データの移し替えや、2つのシステムをつなぐ設定は、提供元にとっては別の作業です。見積を頼む段階で、その作業をどちらの会社が引き受けるのかを決めておくと、費用の置き場所が後から動かずに済みます。
3つ目は、クラウドの利用料と保守サポートをどの期間で見るかです。クラウド利用料は最大2年分が対象経費に含まれ、保守サポートは導入関連費に含まれます。裏を返すと、その先の期間は自院の固定費として残ります。月々いくらが続くのかを、導入を決める前に確認しておきます。
4つ目は、機器をどこまで含めるかです。受付に置く端末や院内の通信環境まで一緒に整えたくなりますが、パソコンやタブレットの単体購入は対象から外れます。対象になるソフトとの組み合わせで扱いが変わる部分があるため、機器を含めたい場合は、その扱いを支援する会社に確認したうえで見積を分けて出してもらうと整理しやすくなります。
機器のほうが主役になるときの考え方
受付の自動化を進めたい、会計の機械も入れたい、という話が同時に出ることもあります。買うものの中心がソフトではなく機械になってくると、制度の入口が変わる可能性があります。既存の現場を省力化する投資であれば、中小企業省力化投資補助金(一般型)が候補として並びます。
どちらが有利かは、投資額と院内の体制、そして何を減らしたいのかによって変わります。上限額の大きい制度から選ぶという順番ではなく、買うものの中心が何かを先に確定させると、候補が自然に絞られます。
なお、医療分野には国や自治体が別に用意している支援の枠組みが存在する場合があります。制度ごとに対象や併用の可否が異なり、同じ経費を二重に受け取ることはできないという原則もあるため、該当しそうなものがあれば、所管する窓口に併用の可否を確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. 電子カルテと予約システムを別の年度に分けたほうがよいでしょうか。
A. 一概には言えません。分ければ1回あたりの準備は軽くなりますが、公募は回ごとに要件が見直されることがあり、次の回で同じ条件が続くとは限りません。院内の入れ替え時期のほうに強い制約があるなら、そちらを優先して組むという考え方もあります。
Q. すでに契約しているソフトの月額利用料は対象になりますか。
A. 補助の対象になるのは、交付決定を受けたあとに新しく導入するものが基本です。すでに使っているサービスの継続分は、性格が異なります。入れ替えのタイミングと、契約の切り替え時期をあわせて確認してください。
Q. 予約システムだけを先に入れることはできますか。
A. 単独での導入も考えられます。ただし、その1件で何がどれだけ効率化されるのかという説明は、単独のほうが組み立てにくくなることがあります。受付から記録までのどこを変えるのかを整理してから、範囲を決めるとよいでしょう。
まとめ
電子カルテと予約システムを同じ年に入れるときは、「対象になるか」の次に「1件にまとめるか、分けるか」を決める必要があります。判断を動かすのは、導入を頼む相手が1社か2社かという点です。そのうえで、データの移し替え・つなぐ範囲・保守と利用料の期間・機器の扱いという4項目を、見積を頼む前に決めておきます。
制度の要件や公募の回次は見直されることがあります。数字や条件は申請の時点で公式の公募要領を確認し、判断に迷うところは早めに専門家へご相談ください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























