
空き家改修事業に参入するリフォーム会社が使える補助金と対象外の境界線
空き家の改修やリノベーションを新しい柱にしたい。そう考えて「空き家 改修 補助金」と検索すると、出てくるのは自治体の空き家改修補助金や、住まいの省エネ・耐震改修に関する制度ばかりではないでしょうか。それらはほとんどが「空き家を owned 改修 補助金」は所有者向けと事業者向けで別物です
この記事では、空き家改修・リフォーム事業へ参入する事業者側の視点で、どの補助金が軸になるのか、そして空き家ビジネス特有の「対象外になりやすい境界線」がどこにあるのかを整理します。情報は2026年7月時点の公募要領に基づいています。
「空き家の補助金」は ownership? 所有者向けと事業者向けで別物です
空き家に関する補助金は、大きく2つに分かれます。ひとつは、空き家を所有する個人や、その空き家を購入して住む人に向けた自治体の改修補助金です。耐震改修やバリアフリー改修を条件に工事費の一部を補助する形が多く、金額や要件は自治体ごとに大きく異なります。制度名も申請先や事業内容によって変わるため、施主向けの案内をする場合は、必ず物件所在地の自治体窓口で最新の要項を確認してください。
もうひとつが、この記事で扱う事業者向けの補助金です。空き家再生を新しい事業として立ち上げる、そのために設備や拠点を整える、といった自社の投資に対して国の中小企業向け補助金を使う考え方になります。前者は「工事1件ごとに施主がもらうもの」、後者は「事業の立ち上げに会社がもらうもの」で、申請主体も審査の観点もまったく違います。この2つを混同したまま計画を立てると、想定していた資金が入ってこないという事態になりかねません。
空き家改修事業への参入で軸になる「新事業進出枠」
リフォーム会社が空き家再生事業へ本格的に参入する場合、まず検討したいのが新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠です。2026年度から、従来の「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」は統合され、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金として運用されています。
この枠は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援するものです。補助対象になるには、新たに提供する製品やサービスが申請者にとって新規性を有し、かつその市場が申請者にとって新たな市場である必要があるとされています。日本初・世界初である必要はなく、あくまで「申請者にとっての新規性」で判断される点が特徴です。
金額面の条件は次のとおりです。
- 補助上限(従業員規模別):1〜20人 2,500万円/21〜50人 4,000万円/51〜100人 5,500万円/101人以上 7,000万円。大幅賃上げ特例を適用した場合は各 3,000万円/5,000万円/7,000万円/最大9,000万円
- 補助下限:750万円
- 補助率:中小企業者 1/2(地域別最低賃金引上げ特例の適用時は 2/3)
- 補助事業実施期間:交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)
よく見かける「最大9,000万円」という数字は、最も大きい従業員規模かつ大幅賃上げ特例を適用した場合の最大値です。従業員20人以下の会社であれば上限は2,500万円(特例適用時3,000万円)になります。数字だけが独り歩きしやすいので、自社の規模で見たときにいくらなのかを最初に押さえておいてください。
そしてもうひとつ、空き家事業にとって重要なのが対象経費です。この枠では「機械装置・システム構築費 または 建物費」のいずれかが必須経費とされており、単価10万円(税抜)以上が条件です。建物費が対象になるのは新事業進出枠だけで、拠点となる建物の改修を伴う空き家再生事業とは相性がよい設計になっています。ほかに技術導入費・知的財産権等関連経費(各1/3上限)、外注費(1/4上限)、専門家経費(1/5上限)、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費などが対象です。
空き家ビジネスで踏みやすい4つの「対象外」の境界線
空き家改修事業は、事業モデルの組み方によって補助対象から外れやすい要素をいくつも抱えています。ここが、 ownership? 所有者向けの補助金解説では絶対に出てこない実務上の分かれ目です。
1. 買取再販・賃貸運用の色が濃いと対象外に寄る
公募要領では、不動産賃貸・駐車場経営・暗号資産マイニング等、実質的な労働を伴わない、あるいは資産運用色の強い事業は対象外とされています。空き家を買って直して貸す、というモデルは、見せ方によっては不動産賃貸業そのものと判断される可能性があります。自社の技術やノウハウを使って改修という役務を提供し、その対価を得る事業なのか、それとも物件を保有して賃料を得る事業なのか。この線引きを事業計画の段階で明確にしておく必要があります。
2. 建物費は対象でも「建物の単純購入・賃貸」は対象外
建物費が対象経費に含まれることと、空き家そのものを買う費用が補助されることは、まったく別の話です。公募要領では建物の単なる購入・賃貸は対象外と明記されており、不動産購入費等も対象外とされています。物件取得費を補助金で賄う前提の資金計画を立てていると、交付決定後に大きく狂います。物件取得は融資や自己資金、改修投資は補助金、という役割分担で考えるのが現実的です。
3. 既存のリフォーム事業の延長では「新事業進出」に当たらない
公募要領では、既存事業と同一市場、既存製品の増産・再製造、単なる製法変更、単なるメニュー追加、単に商圏が違うだけといったものは「新事業進出」に該当せず対象外とされています。すでに住宅リフォームを手がけている会社が「空き家も受けます」と間口を広げるだけでは、同一市場と見られる可能性が高くなります。審査では「新市場性」(社会的に普及・認知度が低いこと)または「高付加価値性」(同分野で高水準の高付加価値化・高価格化)のいずれかで筋が通るかが問われるとされているため、たとえば改修後の用途を宿泊・福祉・地域交流施設などへ転換する、既存の受注型から企画・運営まで担う形へ踏み込む、といった設計が必要になります。
4. 交付決定前の発注・契約・購入は対象外
これは補助金全般に共通する原則ですが、空き家案件では特に注意が必要です。物件は待ってくれないため、採択を待たずに解体や改修を発注してしまいがちだからです。国・公的制度との二重受給、交付決定前の発注・契約・購入は対象外とされています。採択通知が届いただけでは事業を開始できない点も含めて、着工時期は交付決定を起点に逆算してください。
小規模な取り組みなら小規模事業者持続化補助金という選択肢
補助下限が750万円という新事業進出枠は、投資規模がそこまで大きくない会社には使いにくい制度です。従業員数が少なく、まずは空き家改修の受注を増やすための販路開拓から始めたいという場合は、小規模事業者持続化補助金が現実的な選択肢になります。
補助率は2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4)、補助上限は基本50万円で、インボイス特例で+50万円(最大100万円)、賃金引上げ特例で+150万円(最大200万円)、両方の要件を満たす場合は最大250万円まで上乗せされます。対象になる小規模事業者の範囲は、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で常時使用する従業員5人以下、サービス業のうち宿泊業・娯楽業で20人以下、製造業その他で20人以下です。建設業は「製造業その他」として20人以下が目安になります。
対象経費には委託・外注費として店舗改装・バリアフリー化工事等が含まれるほか、広報費やウェブサイト関連費も使えます。ただし広報費・ウェブサイト関連費はそれぞれ補助金交付申請額の上限が30万円(税込)で、いずれも単独での申請はできません。空き家改修の実績を紹介するサイトを作りたい、という動機だけでは申請が成立しない設計になっている点に注意してください。また、建物の増築・増床や「不動産の取得」扱いの工事は対象外になりやすく、外気分断性・土地への定着性・用途性の3要件で判定されます。
2026年度のスケジュールから逆算する
制度を選んだら、次は時間軸です。執筆時点で公表されている日程は次のとおりです。
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回):公募開始 2026年6月29日、申請受付 2026年8月31日、締切 2026年10月30日 18:00、採択発表 2027年1月頃
- 小規模事業者持続化補助金(第20回):申請受付開始 2026年11月5日、事業支援計画書(様式4)発行の受付締切 2026年12月4日、申請受付締切 2026年12月15日 17:00、採択発表 2027年3月頃
どちらも電子申請で、GビズIDプライムのアカウントが事前に必要です。取得には日数がかかるため、申請を検討し始めた時点で手続きに入っておくと安心です。持続化補助金は商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)が必要で、受付締切以降の発行依頼は理由を問わず受け付けられないとされています。窓口には余裕を持って相談してください。
あわせて確認したいのが要件面です。新事業進出枠では、新規設立・創業後1年に満たない事業者は対象外とされており、最低1期分の決算書が必要です。また基本要件として、付加価値額の年平均成長率+4.0%以上、一人当たり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上、事業場内最低賃金が毎年地域別最低賃金+30円以上が求められ、賃上げ関連の要件は未達の場合に返還が生じるとされています。採択されたら終わりではなく、数年単位で達成し続ける約束をする制度だと捉えておいてください。
よくある質問
Q. 空き家を買う費用に補助金は使えますか
新事業進出枠では建物費が対象経費に含まれますが、建物の単なる購入・賃貸や不動産購入費等は対象外とされています。物件の取得費用そのものを補助金で賄う設計は避け、融資や自己資金と組み合わせて考えるのが基本です。
Q. すでにリフォーム業を営んでいますが、空き家再生は新事業として認められますか
既存事業と同一市場と判断されるかどうかが分かれ目です。工事の対象が空き家に変わっただけでは同一市場と見られる可能性があります。改修後の用途転換や、企画・運営まで含めた事業モデルの変更など、申請者にとっての新市場性または高付加価値性を説明できる形に組み立てられるかが鍵になります。
Q. 施主が使う自治体の空き家改修補助金と、会社が使う補助金は併用できますか
申請主体が異なるため、制度上は別々の話になります。ただし同一の経費について国が助成するほかの制度と重複する場合は対象外になる考え方が採られており、二重受給は認められません。どの費用を誰がどの制度で負担するのかを、計画段階で整理しておく必要があります。
まとめ
空き家改修・リフォーム事業への参入で使える補助金は、 ownership向けの制度とはまったく別の枠組みで考える必要があります。投資規模が750万円以上で新市場への進出といえる形が作れるなら新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠、小規模で販路開拓から始めるなら小規模事業者持続化補助金が軸になります。
そのうえで、買取再販・賃貸運用の色、物件取得費の扱い、既存事業の延長かどうか、交付決定前の発注という4つの境界線が、空き家ビジネスでは特につまずきやすいポイントです。制度の内容や公募回次によって要件は変わりますので、申請前には必ず最新の公募要領を確認し、事業計画の組み立て段階から専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























