
建設業の補助金と融資を組み合わせる方法|後払いを前提に借入と申請の順番を設計する5つの注意点
建設業が補助金と融資を組み合わせるときにつまずく5つの場面
設備投資の話になると、「補助金が使えるなら、そのぶん借入を減らせるはずだ」という発想が先に立ちます。ところが実際に手が止まるのは、補助金と融資を併用できるかどうかではありません。お金が出ていく順番と、入ってくる順番がずれることです。
補助金は原則として精算払い、つまり支払いを済ませたあとに入ってきます。一方で機材の代金や工事代金は、交付決定を待ってくれません。この時間差を読み違えたまま資金計画を組むと、採択されているのに手元の現金が足りない、という状態が起きます。
この記事では、建設業で補助金と融資を組み合わせるときにつまずきやすい5つの場面を、お金が動く順番に沿って整理します。数字はいずれも2026年8月時点で確認できる公募要領・制度情報にもとづくもので、制度は改定されることがあるため、申請時には必ず最新の公式情報をご確認ください。
補助金と融資は「併用できるか」ではなく「いつ動くか」で考える
先に両者の性質の違いを押さえておきます。
- 補助金:交付決定 → 発注・支払 → 実績報告 → 入金、という順番で動きます。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠では、補助事業実施期間は交付決定日から10か月以内(ただし採択発表日から12か月以内)と定められています。
- 融資:審査を経て、実行時にまとまった資金が入ります。日本政策金融公庫の場合、書類提出後おおむね3週間〜1か月が実行までの目安で、書類の準備期間を含めると合計で約2か月を見込んでおくと安全です。
つまり、支払いが先に来て、補助金は最後に来ます。この差を埋める役割を担うのが融資です。「補助金があるから借入は要らない」ではなく、「補助金が入るまでの期間を借入でつなぐ」という組み立てになります。
場面1:交付決定より前に発注・契約してしまう
もっとも多く、そしてもっとも取り返しがつかないのがこれです。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠では、国・公的制度との二重受給に加え、交付決定前の発注・契約・購入は対象外と定められています。小規模事業者持続化補助金でも、交付決定日前に行った発注・契約・支払は対象外で、採択通知だけでは事業を開始できません。
建設業でこれが起きやすいのは、購買のリズムが制度側の想定と逆だからです。受注が決まってから機材を手配し、着工日から逆算して段取りを組むのが通常の流れですが、着工日が先に決まっている案件では、交付決定を待っている余裕がありません。
対処の方向はひとつで、投資を「補助金を待てるもの」と「待てないもの」に分けることです。待てない投資は最初から補助金の対象に入れず、融資や自己資金で手当てします。全部を補助金に載せようとすると、結局どれも動かせなくなります。
場面2:補助金が出る前提で借入額を削る
採択されるまで、補助金の金額は確定しません。それでも申請前の段階で「半分は補助金で戻ってくるはずだ」と考えて借入額を圧縮してしまうケースがあります。
革新的新製品・サービス枠の補助率は、中小企業者が2分の1、小規模企業・小規模事業者・再生事業者、および地域別最低賃金引上げ特例の適用時が3分の2です。補助上限は従業員規模別で、1〜5人が750万円、6〜20人が1,000万円、21〜50人が1,500万円、51人以上が2,500万円と定められています(大幅賃上げ特例の適用時は各850万円/1,250万円/2,500万円/3,500万円)。よく目にする3,500万円という数字は、最大の従業員規模に大幅賃上げ特例を重ねたときの最大値であり、無条件の上限ではありません。
そのうえで、採択されても一度は全額を立て替えます。ですから借入額は「投資総額から補助金見込額を引いた額」ではなく、投資総額に、補助金が入るまでの立替期間の運転資金を足した額で考えるほうが、実態に合います。
💬 執筆者の三浦から一言
申請書を審査する側にいた立場から補足しますと、資金調達をどう手当てするかは申請の段階から見られています。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の基本要件には、必要に応じて金融機関確認書を求める旨が置かれています。借入で賄う前提なら、金融機関との話は申請書を書き始めるより前に動かしておくほうが、結果的に段取りが早く進みます。
場面3:補助対象外の費目を資金計画から落とす
建設業の投資は、制度側が対象外としている費目と重なりやすいという特徴があります。
革新的新製品・サービス枠では、機械装置・システム構築費が必須かつ主軸で、汎用パソコン・スマートフォン・車両・家賃・建物の単なる購入等は対象外とされています。小規模事業者持続化補助金でも、自動車・フォークリフト・キッチンカー等の車両は原則対象外です。
ダンプやトラック、汎用の測量機器、事務所の家賃といった、建設業では欠かせない支出が制度に乗らないことは珍しくありません。これらは補助金の検討からいったん外し、最初から借入の土台として資金計画に置くほうが、後から慌てずに済みます。見積書を「補助対象になりうる費目」と「ならない費目」に分ける作業を、制度を選ぶ前に済ませておくと判断が早くなります。
場面4:投資額が下限・上限のレンジに乗っていない
補助金には下限額があり、投資が小さすぎると枠に乗りません。革新的新製品・サービス枠の補助下限は100万円、新事業進出枠は750万円です。
中小企業省力化投資補助金(一般型)は補助上限1億円で、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れることが要件です。ただし単に汎用設備を単体で導入する事業は対象外とされており、汎用設備を複数組み合わせて高い省力化効果を生む場合や、導入環境に応じて周辺機器・機器数・搭載機能が変わる場合に、オーダーメイド性があると判断されます。重機1台を入れ替えるだけの計画では、この要件で外れる可能性があります。
小規模事業者持続化補助金は、建設業が「製造業その他」に区分され、常時使用する従業員20人以下が対象です。補助率は3分の2(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は4分の3)、補助上限は基本50万円で、インボイス特例で+50万円、賃金引上げ特例で+150万円、両特例を満たす場合は最大250万円となります。
どのレンジにも乗らない投資であれば、補助金を無理に絡めず融資で組み切るほうが早いという判断もあります。
場面5:融資の相談を採択発表のあとに始める
時間軸の話に戻ります。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募は、2026年6月29日から申請締切が2026年9月30日18時、採択発表は2026年12月頃とされています。ここから融資の相談を始めると、準備を含めて約2か月かかるため、交付決定後の発注に間に合わないおそれがあります。
返済条件の設計もこの段階で考えておきます。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例では、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内で、据置期間はいずれも5年以内です。据置期間中は利息のみの支払いになるため、補助金が入るまでの立替期間と据置期間を重ねるという組み方が考えられます。
金利については、2026年6月1日現在の基準利率で、無担保かつ税務申告を2期以上終えている場合が年3.50〜5.20%です。適用される利率や条件は制度・審査によって異なりますので、実際の水準は申請先でご確認ください。
順番を決める4つのステップ
- 見積書を2つに分ける:補助対象になりうる費目と、対象外の費目(車両・家賃・汎用品など)に仕分けます。
- 対象になりうる費目の税抜総額を、下限・上限に当てる:100万円、750万円といった下限に届くか、規模別の上限に収まるかを確認します。
- 立替期間の月数を出す:交付決定から支払い、実績報告、入金までにどれだけかかるかを、実施期間の定めから逆算します。
- 借入額と据置期間を決める:対象外費目に、立替期間の運転資金を足した額を借入の前提とし、据置期間を立替期間に重ねます。
よくある質問
Q. 補助金と融資は同時に進めてよいのですか
A. 制度上、補助金の申請と融資の相談を並行して進めること自体を妨げる定めはありません。むしろ融資は準備を含めて約2か月かかるため、並行して動かすほうが交付決定後の発注に間に合わせやすくなります。ただし、同じ経費に国・公的制度の補助を重ねて受けること(二重受給)は対象外とされていますので、資金の充て先の整理は必要です。
Q. 補助金が不採択になったら、借りたお金はどうなりますか
A. 融資は補助金の採否とは別の契約ですので、借入は借入として残ります。だからこそ、補助金が採択されなくても投資と返済が成り立つかどうかを、申請前に確認しておくことが現実的です。
Q. 補助金が入金される前に、返済が始まってしまいませんか
A. 返済開始の時期は融資の契約条件によります。据置期間を5年以内で設定できる制度であれば、据置期間中は利息のみの支払いとなるため、立替期間の負担を抑える設計が考えられます。設定できる条件は制度や審査によって異なりますので、申請先にご相談ください。
まとめ
建設業で補助金と融資を組み合わせるときに効くのは、制度を並べて比べることよりも、お金が動く順番を先に決めることです。交付決定前に発注しない、補助金をあてにして借入を削らない、対象外費目を最初から借入の土台に置く、下限・上限のレンジを確認する、融資の相談を先に動かす。この5点を押さえるだけで、採択されているのに現金が回らないという事態はかなり避けられます。
制度の内容や数字は改定されることがあります。この記事は2026年8月時点の情報にもとづいて整理したものですので、実際の申請にあたっては最新の公募要領と、金融機関・専門家への確認を組み合わせて進めてください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っており、元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























