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コラム

塾のフランチャイズ加盟金・内装費は創業融資で全額借りられる?制度の枠と審査の実際

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塾のフランチャイズ加盟金は設備資金か運転資金か|資金使途で変わる返済負担

学習塾のフランチャイズに加盟して開業しようとすると、最初に大きな金額が動きます。加盟金、保証金、研修費、そして教室の内装工事費。本部の資料に並んだ数字を見て、「これは全額を創業融資でまかなえるのだろうか」と考える方は多いと思います。

この問いには、2つの層に分けて答える必要があります。制度として借りられる枠がいくらかという話と、実際の審査でどこまで通るかという話は別物だからです。両者を混ぜて「借りられます」「借りられません」と一言で答えている情報は、どちらの意味でもあてになりません。

この記事では、フランチャイズで学習塾を開業する方に向けて、加盟金・内装費と創業融資の関係を、制度の枠・審査の実際・資金使途の組み方の3点から整理します。記載した金利・限度額などの数字は2026年7月時点で確認できる情報にもとづくものです。融資制度や金利は改定されるため、申し込みの際は日本政策金融公庫の公式情報を必ずご確認ください。

まず制度の枠を確認する

創業時の資金調達で中心になるのは、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金です。2024年3月までは「新規開業資金」という名称で、2024年4月から現在の名称に改称・拡充されました。また、かつて無担保・無保証の特例として知られた「新創業融資制度」は2024年3月に廃止されており、現在は各融資制度に無担保・無保証の枠組みが組み込まれています。古い記事や説明で旧名称のまま案内されていることがあるので、窓口では現行名で確認するとやり取りがスムーズです。

制度上の枠は次のとおりです。

  • 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
  • 基準利率:創業期(税務申告を2期終えていない場合)で年3.45〜5.15%(2026年6月1日現在)
  • 創業期の金利引下げ:原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)引下げの可能性
  • 返済期間(新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例):設備資金20年以内、運転資金は原則10年以内
  • 据置期間:5年以内(据置期間中は利息のみの支払い)

ここで押さえておきたいのは、「加盟金は上限いくらまで」といった費目ごとの上限が制度側に定められているわけではないという点です。制度が区切っているのは、あくまで全体の限度額と、設備資金・運転資金という資金使途の区分です。学習塾のフランチャイズ開業で必要になる金額は、規模にもよりますが数百万円から一千万円台に収まることが多く、7,200万円という枠に対して制度上の頭打ちが問題になる場面はあまりありません。

なお「創業期の方」とは、新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方を指します。この創業期の方は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できると案内されています。「雇用の拡大を図る場合」は対象者の区分ではなく、引下げ幅が0.65%から0.9%に変わる条件です。実際の適用可否は利用する融資制度・審査・条件により異なる可能性があるため、詳細は申請先でご確認ください。

では審査ではどう見られるのか

制度の枠に余裕があるからといって、必要額の全部が自動的に借りられるわけではありません。ここが2つ目の層です。

まず自己資金についてよくある誤解を解いておきます。「開業資金の10分の1の自己資金が必須」という説明を見かけますが、これは旧「新創業融資制度」にあった要件で、現行制度では自己資金の額や割合の要件は決まっていません。とはいえ、自己資金の額は審査の重要な判断材料であり、多いほど有利になりやすいのは確かです。要件ではないが実質的に効いてくる、という理解が実態に近いところです。

自己資金は、面談時点で口座に確認できる形にしておきます。あわせて、創業前に自費で取得した資格や、備品の購入・テストマーケティングに使った費用などは、一定範囲で「みなし自己資金」として評価されることがあります。フランチャイズの場合、加盟前に支払った説明会参加費や、教室候補地の調査にかかった費用などが該当し得ますので、領収書は必ず保管しておいてください。

審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。ここでフランチャイズならではの注意点があります。

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誤解1:本部の実績は、自分の創業実績ではない

フランチャイズに加盟すると、本部ブランドには全国で数百教室という運営実績があります。生徒募集のノウハウも、カリキュラムも、すでに形になっています。この安心感から、「実績のあるブランドだから審査も通りやすいはず」と考えてしまいがちです。

しかし審査で問われるのは、申込者本人が事業として創業した実績があるかどうかであって、加盟するブランドの実績ではありません。本部の実績は事業計画の裏づけとして計画書に書く価値がありますが、本人の経験の代わりになるものではない、という整理をしておくほうが計画書を組み立てやすくなります。

教育業界の経験がない方が学習塾のフランチャイズに加盟するケースも珍しくありません。未経験の業種で創業する場合、事業計画書の中で経験不足をどう補うかが論点になります。このとき、「同業のメンターから定期的に助言を受けている」「経理や専門業務を外部の専門家に委託している」といった対策は、経営そのものへの関与としては弱く、説得力を持たせにくい面があります。より有効なのは、事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整える方向です。

誤解2:法定開示書面は「融資の必要書類」ではない

フランチャイズ関連の記事で頻繁に見かける誤りがあります。創業融資の必要書類として「法定開示書面(フランチャイズ・ガイドラインに基づく重要事項説明書)」を挙げているものです。

法定開示書面は、フランチャイズ本部が加盟希望者に対して交付する書類です。加盟契約を結ぶ前に、本部側が加盟希望者に事業内容や契約条件を説明するためのもので、公庫に融資を申し込むために提出が求められる書類ではありません。融資申請の書類リストに混ぜて準備すると、混乱するだけになります。

融資側で中心になるのは、創業計画書、自己資金のエビデンス、見積書、本人確認書類といったものです。フランチャイズの場合は、これに加えて加盟契約書や本部から提示された収支モデルを、事業計画の根拠資料として求められることがあります。法定開示書面を読み込むこと自体は加盟判断のために欠かせませんが、それは融資の話とは別の作業だと切り分けてください。

加盟金と内装費を、設備資金と運転資金のどちらで組むか

ここが本題です。前述のとおり、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内と差があります。同じ金額を借りても、どちらの資金使途で組むかによって、毎月の返済額が変わってきます。

学習塾のフランチャイズ開業で発生する主な支出を、性質で並べてみます。

  • 教室の内装工事費、パーテーション・机・椅子・ホワイトボード、タブレットやPCなどの機器:形として残る投資
  • 加盟金、研修費、開業時の広告宣伝費、開校後しばらくの家賃や人件費:事業を回すための支出

資金使途は「事業に必要な支出」であることが前提で、人件費は事業活動に必要な経費として運転資金の対象になります。一方、どの支出をどちらの区分で申請するかは、契約内容や本部のスキームによっても変わるため、個別の支出の扱いに迷う場合は申請先や専門家に確認しながら計画を整えることをおすすめします。

実務的に効いてくるのは、据置期間の使い方です。据置期間は5年以内で設定でき、その間は利息のみの支払いになります。学習塾は開校してすぐに定員が埋まる業態ではなく、生徒数が積み上がるまでに時間がかかります。春の入塾シーズンを1回か2回またぐまでは月謝収入が読みにくいので、この期間の元金返済を軽くしておけるかどうかは、開校初年度のキャッシュフローに直接効いてきます。

スケジュールを逆算する

融資は、書類提出後おおむね3週間〜1か月で実行されるのが目安です。創業計画書・自己資金のエビデンス・見積書などを整える時間を含めると、申請準備に1か月、審査・実行に1か月、合計2か月程度を見込んでおくと安全です。

フランチャイズの場合、この2か月に本部側の工程が重なります。加盟審査、加盟契約の締結、物件の選定と本部承認、研修、内装工事、開校前の生徒募集と、それぞれに期間が必要です。とくに学習塾は開校時期が学年暦に縛られる業態で、春の入塾シーズンを逃すと最初の1年の売上見込みが大きく変わります。開校希望日から逆算して、融資の申し込み時期を先に押さえておくのが現実的です。

あわせて、内装工事の見積書は融資申請の根拠資料になります。本部指定の内装業者がいる場合は、加盟契約の進行と見積書の入手時期がずれないよう、本部の担当者に早めに確認しておくと準備が滞りません。

よくある質問

Q. 加盟金だけを先に融資で払い、内装費は後から追加で借りることはできますか

A. 資金使途ごとに時期を分けて申し込むこと自体はあり得ますが、創業時は事業全体の計画で審査されるため、必要資金の全体像を一度に示すほうが計画としての説得力を出しやすくなります。開業後に追加で借り入れる場合は、そのときの事業状況が改めて見られることになります。分割して申し込むかどうかは、開校スケジュールとの兼ね合いも含めて、申請先や専門家に相談しながら判断されることをおすすめします。

Q. 自己資金がゼロでも、フランチャイズなら融資は通りますか

A. 制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていないため、自己資金がないことだけを理由に申し込めないわけではありません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料であり、多いほど有利になりやすいのは事実です。フランチャイズであることが自己資金の不足を埋め合わせる、という関係にはありませんので、準備できる範囲で自己資金を用意し、その形成過程を説明できるようにしておくほうが計画は組み立てやすくなります。

Q. 机・椅子・タブレットはリースにしたほうが有利ですか

A. どちらが有利かは、資産計上の考え方や資金繰りの状況によって変わります。リースには初期費用を抑えられるメリットがある一方で、連帯保証人が必要になる、機器の所有権が持てない、契約期間中の中途解約が難しい、故障時の修理負担が借主側になる契約が多い、といったデメリットもあります。学習塾は教室数を増やす前提で計画を立てることが多いため、中途解約のしにくさは特に確認しておきたい点です。賃貸借費用の負担も含めて、税理士や金融機関に相談しながら判断することをおすすめします。

Q. 一度審査に落ちたら、もう借りられませんか

A. 公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。原因を潰さずに再申請しても結果は変わりにくいので、自己資金の不足、事業計画の説得力不足、業界未経験への対策不足など、否決の理由を具体的に特定し、そこを改善したうえで再申請することが必要です。

Q. 個人事業で開業するか、法人を設立するかで融資は変わりますか

A. どちらでも創業融資の対象になり得ます。ただし、すでに個人事業で塾を運営していて、その事業をそのまま法人化する「法人成り」の場合は、原則として創業融資の対象外となり、通常の融資の扱いになります。既に事業実績があるとみなされるためです。一方、いま営んでいる事業とは別の新しい事業を法人で始める場合は、その新法人にとっては創業にあたるため創業融資を使うことができます。法人の設立手続きや税務上の判断については、司法書士・税理士等の専門家にご相談ください。

まとめ

「塾のフランチャイズ加盟金と内装費は創業融資で全額借りられるか」という問いへの答えを、あらためて整理します。

  • 制度側には費目ごとの上限がなく、限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)。学習塾のフランチャイズ開業で制度上の枠が問題になる場面は多くありません
  • 一方、審査では自己資金の額が重要な判断材料になります。制度上の要件はないものの、必要額の全部を借入でまかなう前提の計画は組み立てにくくなります
  • 加盟金・内装費をどの資金使途で組むかによって返済期間が変わり(設備資金20年以内/運転資金原則10年以内)、据置期間5年以内をどう使うかが開校初年度の資金繰りを左右します
  • 法定開示書面は本部が加盟希望者に交付する書類であり、融資の必要書類ではありません。本部ブランドの実績も、本人が事業として創業した実績の代わりにはなりません

フランチャイズは、本部のスキームが決まっている分、資金計画も型どおりに進むように見えます。しかし融資の審査で見られるのは、本部ではなく開業する本人の計画です。開校希望日から逆算し、資金使途の区分と据置期間まで含めて設計しておくことが、開校後の資金繰りを楽にする一番の近道です。

V-Spiritsグループでは、これまでに712件(2026年6月時点)の創業融資を支援してきました。そのうちフランチャイズ支援は85件(11.9%)で、加盟前の資金計画の段階からご相談いただくケースも多くあります。加盟契約の進行と融資のスケジュールをどう噛み合わせるか迷われている場合は、お早めにご相談ください。

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小峰精公 / 元朝日信用金庫 融資担当営業
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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
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  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

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