
創業前のクラウドファンディングと創業融資、先に始めると起きやすい落とし穴
飲食店や物販、ものづくりで創業を考えていると、店や商品のコンセプトを先にクラウドファンディングで見せたくなります。一方で創業融資の申込も控えていて、どちらを先にするかで手が止まる場面があります。
この記事では、先にクラファンを始めたときに起きやすい資金計画の落とし穴、順番による金融機関への見え方の違い、創業計画書への書き方、目標に届かなかった場合の備えを整理します。制度の数字は執筆時点の情報で、併用の扱いは申込先に確認する前提で書いています。
先に結論:順番は「どちらが先か」より「何を担わせるか」で決まる
どちらを先にするかに、唯一の正解はありません。判断の軸になるのは、開業資金のどの部分をクラファンに、どの部分を融資に担わせるかです。
融資は、申込の時点で必要な額と使い道を計画書に示して審査を受ける資金です。クラファンは、募集を終えるまでいくら集まるかが分かりません。この違いが、順番を考えるときの出発点になります。
融資は書類提出後おおむね3週間〜1か月で実行され、準備を含めると約2か月を見込んでいます。募集期間とリターンの提供時期をこの流れに並べて、全体のスケジュールを組みます。
クラウドファンディングを先に始めて起きやすい落とし穴
先にクラファンを始めたい創業前の方が踏みやすい落とし穴を、3つ挙げます。
目標に届かなかったとき、開業資金の計画が止まる
クラファンには、目標額に届かなければ支援金を受け取れない方式(オールオアナッシング方式)と、届かなくても集まった額を受け取れる方式(オールイン方式)があります。前者は未達だと資金が入りません。後者は集まった額が少なくても、支援が1円でもあればリターンを届ける義務が残ります。
どちらの方式でも、募集の結果が出るまで資金計画の一部は確定しません。店舗の契約や設備の発注をこの結果待ちにすると、未達のときに全体が止まります。融資の準備もその間は進まず、開業時期が後ろにずれていきます。
リターンの製作・提供にかかる費用と時期が、資金計画から抜ける
飲食店なら支援者向けの食事券や先行提供、物販なら商品の在庫、ものづくりなら試作と量産の費用が、リターンとして先に発生します。集まった金額がそのまま開業資金になるとは限らず、リターンの原価、発送の費用、提供の時期が資金繰りに乗ります。
これらを資金計画から外したまま融資の必要額を決めると、融資を受けた後に資金が足りなくなるおそれがあります。リターンにかかる費用は、開業資金とは別の項目として書き出します。
物件や設備の契約を結果待ちにして、申込先への相談が遅れる
物件を購入して店を構える場合、土地、建物の取得は設備資金にあたる支出ですので、創業融資の対象になります。取得を前提に検討する場合は、物件を押さえる前に申込先へ相談してください。
クラファンの結果を見てから物件を探す流れにすると、募集期間の分だけ順番が後ろにずれます。申込先への相談も同じだけ遅れます。
融資の申込を先にすると、金融機関にはどう見えるか
審査で見られる項目と、クラファンの関わり方
審査では、同じ業種での勤務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。クラファンを実施したこと自体が、このどれかに当たるわけではありません。
クラファンが関わるのは、主に事業計画の具体性と、資金使途と調達額の整合の部分です。募集ページで商品やメニューへの反応を確かめられていれば、売上の見込みを説明する材料になり得ます。ただし計画書では、売上・原価・人件費の根拠を数字で示す必要があります。反応の良さだけでは、根拠として足りません。
自己資金は、創業前にかけた費用の領収書まで整理する
自己資金について、制度上、額や割合の要件は決まっていません。ただし自己資金の額は、審査の重要な判断材料になります。創業前に自費で行った試作やテストマーケティングの費用は、みなし自己資金として一定範囲で評価されることがあります。領収書は保管しておいてください。
クラファンで集まった支援金が自己資金として扱われるかどうかは、申込先に確認してください。
💬 執筆者の小峰から一言
金融機関側から見ると、自己資金は金額だけでなく、入金の経緯を説明できるかも見られます。クラファンの入金をどう扱うかは、申込先に直接聞いて確かめる論点です。面談の時点で口座に確認できる形にしておく前提なので、募集を始める前に聞けるかどうかが、順番を決める分かれ目になります。
融資を先にすると、コンセプトを先に見せたい狙いはどうなるか
融資を先に申し込んだ場合、計画書には募集の結果を載せられません。コンセプトへの反応を数字で示せない代わりに、融資の金額と使い道が先に固まり、クラファンは上乗せや検証として使えます。
逆に募集を先に終えれば、反応を計画書の材料にできます。その期間は、融資の申込が後ろにずれます。
クラファン資金を創業計画書にどう書くか
調達の内訳と資金使途を対応させる
創業計画書には、必要な資金と調達の方法を並べて書きます。内訳を融資、自己資金、クラファンに分けて整理すると、資金使途と調達額が合っているかを自分で確かめやすくなります。
たとえば内装と設備には融資、試作とリターンの原価にはクラファン、というように、使い道ごとに充てる資金を対応させます。クラファンの額は、集まる額が確定していない段階では、見込みだと分かる形で書きます。具体的な書き方や併用の扱いは、申込先に確認してください。
入金が確定していない分を、前提に組み込まない
募集中の金額を確定した調達額として入れると、資金使途と調達額の整合が崩れます。クラファンが目標に届かなくても開業できることを、計画書の段階で示しておく方が、金融機関への伝え方として安全です。募集が終わって入金が確定した後に、その結果を申込先へ伝え直す流れにします。
達成しなかった場合の計画を、先に決めておく
融資だけで開業できる最小の形を決める
目標未達に備えて、クラファンの入金がなくても開業できる最小の形を決めます。飲食店なら席数やメニューを絞った開業、物販なら取り扱う商品数を絞った開業、ものづくりなら試作の段階を分けて量産を始める形です。
この最小の形に必要な額が、融資の申込額を考える基準になります。クラファンの入金は、そこに上乗せする部分として扱います。
再挑戦するときの資金計画
オールオアナッシング方式では、未達だった事実が募集ページに残ります。再び募集をかけるなら、その分の時間がかかり、その間に発生する店舗や設備の費用も資金計画に乗ります。再挑戦を前提に開業時期を決めず、融資での開業を軸に据えたうえで判断します。
状況別に見る、順番の判断
- 融資を先にする場合:店舗の契約や設備の発注が近く、開業時期を動かしにくいときに向きます。クラファンは、融資で固まった計画への上乗せとして使います。
- クラファンを先にする場合:コンセプトへの反応を計画書に反映したく、開業時期に余裕があるときに向きます。未達の場合の最小の形を決めておきます。
- 並行する場合:募集の開始時期と融資の申込を並べ、約2か月の流れから逆算して組みます。リターンの提供時期が開業と重ならないかも確かめます。
どの場合も、併用の扱いは申込先に確認してください。クラファンの運営ルールや税務の扱いは、税理士など専門家に相談してください。
よくある質問
Q. クラファンで集まった支援金は、自己資金に入りますか?
A. 自己資金として扱われるかどうかは、申込先に確認してください。制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていませんが、額は審査の重要な判断材料になります。
Q. 一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか?
A.公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。
まとめ:次に手を動かすこと
- 開業に必要な資金を、内装・設備・リターンの原価などの使い道ごとに書き出す
- クラファンが未達でも開業できる最小の形と、その必要額を決める
- 創業前に使った試作やテスト販売の費用の領収書を集める
- 募集を始める前に、申込先へクラファンの入金の扱いと併用の可否を聞く
- 申込から実行までの約2か月と募集期間を並べ、開始時期を逆算する
制度の数字や条件は執筆時点の情報で、変更される場合があります。申込の前に、最新の内容を申込先で確認してください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























