
公庫面談は「準備量」で勝敗が決まる
日本政策金融公庫の創業融資審査で、書類を出した後に必ず実施されるのが面談です。所要時間はおよそ1時間、創業計画書の内容に沿って担当者が質問を投げかけてくる流れですが、ここでの受け答えと書類の整合性が、最終的な融資可否と限度額に大きく影響します。「書類さえ整っていれば通る」「面談はただの形式」と捉えていると、想定していなかった質問で言葉に詰まり、評価が一気に下がるリスクがあります。
本記事では、創業融資の面談で落とされないための完全準備ガイドとして、面談で聞かれる質問・必要書類・落ちる人のパターン・1週間前から当日までの準備手順を整理します。なお、本記事の内容は2026年5月時点の一般的な情報であり、実際の運用は支店・担当者によって異なります。最終的な手続きは公式情報および担当者の指示に従ってください。
公庫面談で見られている3つの軸
軸1:事業計画への理解度と本気度
担当者が最初に見ているのは、「申込者が本当に自分の事業を理解しているか」です。創業計画書に書いてある内容を、自分の言葉でかみ砕いて説明できるか。数字の出どころを聞かれたときに、その場で計算根拠を示せるか。コンサルや知人に書いてもらった計画書を持参して、担当者の質問に答えられないケースは、本気度を疑われる代表例です。
軸2:返済能力の裏付け
2点目は、毎月の返済原資を生み出せる事業設計になっているかです。売上の見込み、原価率、固定費、家計費、生活費まで含めて、無理のない返済計画が描けているかが問われます。希望融資額が自己資金や売上計画と乖離していると、面談時間の半分を返済能力の質疑に充てられ、合意形成に至らないこともあります。
軸3:金融取引における信用力
3点目が、生活面・取引面での信用です。家賃・公共料金・税金・カードローン・リボ払いの返済状況、過去の自己破産歴・債務整理歴、過去の融資取引の有無などが、通帳と本人確認書類の照合で確認されます。経歴上の信用が崩れていると、事業計画がどれだけ優れていても、創業融資の判断は厳しくなります。
面談で聞かれる8つの定番質問
質問1:なぜ創業しようと思ったのか(創業動機)
突発的な思いつきではなく、過去の経歴・経験・課題意識と紐づいた創業ストーリーを語れるかが見られます。「会社員を辞めた勢いで」よりも、「この業界で◯年働き、こういう課題を感じていたので、自分で解決する事業をやりたい」のように、必然性のある語り口にします。
質問2:経営者の略歴と強み
同じ業界での職務経験、マネジメント経験、関連資格、取引先とのネットワークなど、創業事業に直結する経歴を端的に伝えます。業界未経験の場合は、それを補う準備(業界での修行、専門家とのチーム、フランチャイズ加盟など)を併せて説明します。
質問3:商品・サービスの中身と差別化
何を、誰に、いくらで、どう売るのかを、競合と比較しながら説明します。「品質で勝負」など抽象的な答えは評価されにくく、価格・立地・サービス内容・ターゲットの絞り込みなど、具体的な差別化要素を1〜2点に絞って伝えます。
質問4:従業員体制と人件費
自分1人で始めるのか、スタッフを雇用するのか。正社員・パート・業務委託の構成、想定月給、社会保険の加入有無まで含めて、人件費が現実的な水準で計画に組み込まれているかが問われます。
質問5:仕入先・販売先と取引条件
主要な仕入先・販売先の名称、取引開始時期、決済条件(前払い・月末締め翌月末払いなど)を、できれば見積書や契約書類で裏付けられる状態にしておきます。BtoBの場合は、見込み顧客リストを資料で示せると説得力が一段上がります。
質問6:既存の借入状況
住宅ローン、自動車ローン、カードローン、リボ払い、奨学金、家族借入など、現在の借入残高と毎月の返済額を正直に申告します。ここで隠していた借入が後から発覚すると、信用そのものを大きく毀損します。事前にCICやJICCで信用情報を確認しておくと、申告漏れを防げます。
質問7:必要資金と調達方法
設備資金・運転資金の内訳、見積金額、その合計、そして自己資金・親族からの援助・公庫融資・その他借入の比率を、創業計画書と矛盾しない形で説明できるかが問われます。希望融資額が自己資金の3〜4倍を超えると、返済負担の重さから慎重審査になる傾向があります。
質問8:売上・利益見込みの根拠
月商◯円、年商◯円という数字を出したら、その根拠(客単価×席数×回転率×営業日数、など)を即答できるようにします。担当者が一番気にしているのは、その数字に「現実味があるか」「達成できなかった場合の対応」までイメージできるかです。
面談に持参する必要書類リスト
公庫面談で持参を求められる代表的な書類は次のとおりです。事前に郵送・電子提出済みのものも、当日改めて確認に使われるため、控えを必ず持参します。
- 本人確認書類(運転免許証・パスポート等の原本)
- 本人名義の預金通帳の原本(自己資金と入出金履歴の確認)
- 創業計画書・借入申込書の控え
- 家賃・公共料金・各種ローンの支払証明(直近6か月〜1年分)
- 源泉徴収票・確定申告書の控え(直近2〜3年分)
- 納税証明書(住民税・国税)
- 売上根拠の資料(見積書・契約書・予約状況など)
- 店舗・事務所の賃貸借契約書(締結済みであれば)
- 許認可証・資格証(必要業種のみ)
- 担保がある場合は不動産の全部事項証明書
支店や担当者から個別に追加書類を求められることもあるため、事前に書類リストを電話で確認しておくと安心です。
面談で落とされる人の5パターン
パターン1:創業計画書の中身を把握していない
外部に丸投げで作ってもらった計画書を持参し、自分の言葉で説明できないパターンです。書面と発言にズレが出ると、本気度・主体性を疑われます。コンサル・専門家のサポートを受けるとしても、自分で再構築して語れる状態まで仕上げることが前提です。
パターン2:自己資金の出所が説明できない(見せ金疑い)
面談直前に親族や知人から借りたお金を、自己資金として通帳に振り込むと、入出金履歴から「見せ金」と判断されるリスクがあります。自己資金は、本人名義の口座に毎月コツコツ積み上げた履歴があると評価されやすく、面談時に通帳でその経緯を説明できるよう準備します。
パターン3:家賃・公共料金・税金の延滞がある
家賃の遅延、公共料金の未払い、住民税・国税の滞納などは、生活面での信用に直結します。延滞が直近にある場合は、面談前に完済しておく、または分納などの正式な手続きを踏んでおくのが基本です。
パターン4:数字の根拠を即答できない
「売上見込みは月100万円です」と書いてあるのに、その内訳を聞かれて即答できないケースです。客単価・客数・営業日数・回転率といった分解した数字を、面談前に紙1枚にまとめて頭に入れておくと、質問にスムーズに答えられます。
パターン5:質問への返答がブレる
同じ質問を角度を変えて聞かれたときに、答えが変わってしまうパターンです。事前に想定問答を作っておき、家族や知人を相手にロールプレイしておくと、本番でのブレを防げます。「分からないことは分からないと言う」のも、信用を守るうえで有効な姿勢です。
面談前1週間の準備チェックリスト
1週間前:書類・通帳・信用情報の最終確認
- 創業計画書・借入申込書の控えを再読し、想定問答を作る
- 本人名義通帳の入出金履歴を確認し、自己資金形成の経緯を整理
- CIC・JICCで信用情報を取得し、申告漏れがないか確認
- 家賃・公共料金の支払状況を確認し、延滞があれば完済
- 必要書類のチェックリストを支店に電話で確認
3日前:想定問答とロールプレイ
- 8つの定番質問への回答を、口頭で2分以内に答えられるよう準備
- 数字の根拠(客単価・客数・営業日数など)を紙1枚にまとめる
- 家族・知人を相手にロールプレイを実施し、ブレやすい点を洗い出す
- 当日の服装・身だしなみを確認(ビジネスカジュアル以上)
前日〜当日:最終確認
- 持参書類をすべてクリアファイルに整理し、リストと照合
- 支店までの経路・所要時間を確認し、15分前到着を目安に出発
- 携帯電話の通知をオフにし、面談に集中できる状態に
- 当日朝に創業計画書を再読し、数字を頭に入れ直す
面談当日の振る舞いと避けたいNGアクション
当日は、誠実に・端的に・正直にが基本姿勢です。質問に対しては結論を先に述べ、その後に根拠を補足する流れで答えます。話を膨らませすぎず、聞かれていないことまで長々と語るのは避けます。
NGアクションは次のとおりです。
- 知ったかぶり:分からないことを推測で答えると、後で矛盾が出やすい
- 過度な楽観:売上見込みを大きく盛ると、根拠の質疑で破綻する
- 不誠実な回答:借入や延滞を隠す行為は、信用情報の照合で必ず発覚する
- 担当者批判:制度や担当者の対応への不満を口にすると、印象を大きく損なう
面談で手応えがなかったときのリカバリー
面談中に思うように答えられず、手応えがなかったと感じた場合でも、すぐに諦める必要はありません。担当者から「追加で資料を出してほしい」「もう一度説明してほしい」と求められたら、誠実に対応することで挽回できる余地があります。後日、補足資料(追加の見積書、修正版の売上根拠、信用情報の補足説明など)を任意で提出することで、評価が変わる場合もあります。
一方で、自己資金不足や信用情報の問題など、構造的な要因で不採用になりそうなときは、その公庫面談で粘るよりも、自己資金を貯め直して半年後に再挑戦する、信用情報の改善を待つ、別の資金調達手段(自治体制度融資・民間金融機関との連携)を検討するなど、戦略の切り替えも選択肢になります。
よくある質問
Q1:面談時間はどのくらいですか
標準で1時間前後ですが、申込内容や追加質問の量によって30分で終わることも、1時間半ほどかかることもあります。時間に余裕を持ったスケジュールで臨むのが安全です。
Q2:服装はスーツでないとダメですか
必ずしもスーツである必要はありませんが、ビジネスカジュアル以上で、清潔感のある服装が無難です。職種に応じた服装(飲食店の創業者なら制服に近い格好など)でも問題ないケースがあります。
Q3:配偶者や事業パートナーを同席させてもよいですか
原則は申込者本人との面談ですが、共同経営者や配偶者が事業に関与する場合は、事前に支店へ相談すると同席が認められることがあります。同席する場合は、役割分担と発言の整合を事前に打ち合わせておきます。
まとめ:公庫面談で落とされないために
公庫面談は、書類の内容を申込者本人がどこまで理解し、どこまで本気で取り組もうとしているかを見る場です。8つの定番質問への準備、必要書類の整理、信用情報の事前確認、想定問答のロールプレイを丁寧にこなすことで、面談での失点を大きく減らせます。
特に、創業計画書を自分の言葉で語れる状態に仕上げること、自己資金の形成経緯を通帳で説明できる状態にしておくこと、家賃や税金の延滞を残さないことの3点は、面談前に必ずクリアしておきたい基本です。
本記事の情報は2026年5月時点の一般的なものです。実際の運用は支店・担当者・申込内容によって異なります。創業計画書の作り込みや想定問答の質を高めたい場合は、融資実務の経験を持つ専門家への相談で、面談通過率を高めやすくなります。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























