
「採用してもすぐ辞めてしまう」「ようやく戦力になった社員が退職してしまった」——中小企業の経営者にとって、社員の離職は事業の成長を妨げる大きな悩みです。人手不足が深刻化するなか、社員が辞めない会社をどう作るかは経営課題そのものといえます。本記事では、定着率を上げるために経営者が取り組むべき具体的な施策と、離職が続く会社に共通するパターンを解説します。
社員が辞めない会社に共通する特徴
定着率の高い会社には、いくつかの共通点があります。特別な制度やコストをかけているというよりも、日常のマネジメントやコミュニケーションに丁寧に取り組んでいる会社が多い傾向です。
経営者のビジョンが社員に伝わっている
会社がどこを目指しているのか、経営者が何を大切にしているのかが社員に伝わっている会社では、離職率が低い傾向があります。ビジョンが曖昧なまま「とにかく売上を上げろ」という指示だけでは、社員は自分の仕事の意味を見出しにくくなります。
大企業のように立派な経営理念を掲げる必要はありません。「この地域でいちばん頼られる会社にしたい」「お客さんに正直な仕事をする」といったシンプルな言葉でも、経営者が日常的に発信していれば社員の帰属意識につながります。
評価と待遇が透明である
何をすれば評価されるのか、給与はどういう基準で決まるのかが不透明な会社では、社員のモチベーションが下がりやすくなります。「なぜあの人が昇給したのかわからない」という不満は、退職の直接的なきっかけになることも少なくありません。
評価基準を完全に数値化する必要はありませんが、少なくとも「どんな行動や成果が評価されるか」を社内で共有し、評価の根拠をフィードバックする仕組みがあると、社員の納得感は大きく変わります。
定着率を上げるために経営者が取り組むべき5つの施策
1. 入社後のフォロー体制を整える
入社から1〜3か月は、新入社員が「この会社でやっていけるか」を判断する最も重要な時期です。この期間にフォローが手薄だと、不安や孤立感から早期離職につながります。
具体的には、以下のような取り組みが効果的です。
- 入社初日に業務全体の流れと期待する役割を説明する
- 先輩社員をメンターとしてつけ、日常的に相談できる環境をつくる
- 1週間後・1か月後・3か月後に上司または人事が面談を行う
中小企業では専任の人事担当がいないケースも多いですが、経営者自身が「困っていることはないか」と声をかけるだけでも効果があります。
2. 定期的な1on1ミーティングを実施する
月に1回程度、上司と部下が1対1で話す時間を設けることは、離職防止に大きな効果があります。業務の進捗確認だけでなく、本人のキャリアの希望や職場環境への不満を早い段階で把握できるためです。
1on1の場では、上司が一方的に話すのではなく、社員の話を聞くことを意識します。「最近どう?」「仕事で気になっていることはある?」といったオープンクエスチョンで始めると、本音を引き出しやすくなります。
3. 成長機会を提供する
「この会社にいても成長できない」と感じることは、特に若手社員の離職理由として多く挙がります。研修制度や資格取得支援といった形式的なものだけでなく、新しい仕事への挑戦機会を意識的につくることが重要です。
中小企業であれば、大企業よりも早い段階で責任ある仕事を任せられるのが強みです。「この案件は任せるから、自分の判断でやってみて」という機会を与えることで、社員の成長実感と会社への信頼が高まります。
こうした取り組みは自社内で完結できるものも多いですが、定着率の改善を仕組みとして定着させたい場合は、外部の専門家に現状を診断してもらうのも有効な手段です。
採用・定着の戦略と仕組みづくりをまるごとサポート
V-Spiritsの採用定着支援サービスでは、給与・条件の競合リサーチ、求人原稿の改善、応募後24時間以内の初動対応など、採用がうまくいく会社が実践している型を全国2,000社超の支援実績をもとに採用定着士が伴走で組み立てます。「なぜ採れないのか」「なぜ辞めるのか」を現場目線で診断し、5ステップで仕組み化します。
4. 給与・待遇の競合比較を行う
社員が転職を考える大きなきっかけのひとつが、同業他社との待遇格差です。「同じ仕事をしているのに、隣の会社のほうが給料が高い」と感じれば、転職を検討するのは自然な流れです。
定期的に同業種・同地域の求人情報をチェックし、自社の給与水準が市場相場から大きく乖離していないか確認しましょう。給与を大幅に上げるのが難しい場合でも、手当の新設や福利厚生の充実で補える部分はあります。
5. 柔軟な働き方を導入する
育児や介護、通院など、社員のライフステージに応じた働き方に対応できる会社は定着率が高い傾向にあります。リモートワークやフレックスタイムの導入が難しい業種でも、時短勤務の選択肢を設けたり、シフトの希望を柔軟に聞いたりすることで、社員の「辞めなくても続けられる」という安心感につながります。
社員が辞めてしまう会社に共通するパターン
逆に、離職率が高い会社にはいくつかの共通するパターンがあります。自社に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
- 経営者がトップダウンで全てを決め、社員の意見を聞かない
- 評価基準が曖昧で、昇給・昇格の理由が説明されない
- 残業や休日出勤が常態化し、改善の見通しがない
- 入社後の教育が「見て覚えろ」方式で、放置に近い
- 退職者が出ても原因分析をせず、同じことを繰り返す
特に中小企業では、経営者の言動がそのまま社内の空気を決めます。「自分のやり方についてこられないなら辞めてもらって構わない」という姿勢は、結果的に優秀な人材から先に離れていく原因になりかねません。
中小企業ならではの強みを活かした定着戦略
中小企業は大企業と比べて給与や福利厚生で劣る面がありますが、定着率の面で有利な点もあります。
経営者と社員の距離が近いことは、中小企業の最大の武器です。大企業では部長クラスにしか会えない経営者と、日常的に会話ができる環境は、社員にとって「自分の存在が認められている」という実感につながります。
また、意思決定のスピードが速いため、社員の声を反映した制度変更や環境改善をすぐに実行できます。「来月からこうしよう」と決めて即座に動けるのは、中小企業ならではの強みです。
定着率の改善は、一度に全てを変える必要はありません。まずは退職者が出た際に退職理由をヒアリングすることから始め、最も多い不満に対して1つずつ対策を打っていくのが現実的です。
まとめ
社員が辞めない会社を作るためには、特別な制度よりも日常のマネジメントの質が重要です。経営者のビジョンを伝えること、入社後のフォローを丁寧に行うこと、評価と待遇を透明にすること、成長機会を提供すること、柔軟な働き方に対応すること——これらの施策は、中小企業でもすぐに取り組めるものばかりです。
離職率の改善には時間がかかりますが、1つずつ取り組むことで確実に変化は生まれます。自社だけで対策が難しい場合は、採用・定着の専門家に現状を診断してもらうことで、改善の優先順位が明確になります。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧婚状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。
同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。
大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。
ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、数々の実績を残しています。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。
- 経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一
- 補助金・助成金支援実績600件超
- ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版(累計25万部超)
- 無料相談件数は全国から累計3,000件超
この記事を書いた人
坂井 優介(Yusuke Sakai)
起業コンサルタント® / 採用定着士 / 行政書士法人V-Spirits 補助者
1988年東京都生まれ。転勤族の父の影響で幼少期を愛知・長野・岩手・埼玉で過ごす。転入するたびに方言や文化の違いをからかわれつつも、1週間もあれば現地に溶け込む適応力を身につける。
大学在学中に公認会計士試験にチャレンジするも挫折し、アルバイト先だった埼玉の大手学習塾に就職。塾業界特有の過酷な労働環境の中でも10年間勤務を続けるが、成果を上げても給与が変わらない状況に限界を感じ、在職中に会計士試験に再挑戦。再び挫折するも、学んだ会計知識を活かせる職場を求めて転職活動を開始。2021年にV-Spiritsグループに参画し、2022年よりV-Spirits総合研究所の常務取締役に就任。
現在は、中小企業の経営者向けに補助金・助成金の支援から採用定着の仕組みづくりまで幅広く担当。「制度を使いこなす中小企業を増やす」をテーマに、現場に寄り添ったサポートを行っている。
役職:V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役 / 税理士法人V-Spirits 業務部長 / 社会保険労務士法人V-Spirits 業務部長
担当業務:経済産業省系補助金支援・厚生労働省系助成金支援・マーケティング・人事労務・採用定着支援




























