
製造業の創業融資で公庫に断られたあと、再申請の前に確かめる6つの問い
機械を入れて独立するつもりで日本政策金融公庫に申し込んだところ、希望額が出なかった、あるいは見送りになった。製造業の創業融資では、この段階でのご相談が続きます。
断られた理由を調べると、業種を問わない「融資を断られる理由◯選」の記事が並びます。ただ、そこに挙がる項目を順に潰して同じ計画で出し直しても、結果が変わらないことがあります。製造業は資金使途の大半が機械と設備で、借入額が大きくなりやすく、しかも売上が立つまでの期間が長い業種です。否決の原因が、計画のつくり方そのものに残っていることが多くあります。
ここでは、再申請に動く前に確かめたい6つの問いを整理します。数字は2026年8月時点で確認したもので、制度も金利も変わりうるため、申請前に日本政策金融公庫の公式情報をご確認ください。
Q1. 断られた理由を「自己資金が足りないから」と決めていませんか
自己資金は審査の大きな判断材料です。一方で、制度上は自己資金の額や割合の要件が決まっているわけではありません。かつての新創業融資制度にあった自己資金1割といった固定の要件は、現行の制度にはありません。
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。材料はこの2つに限られません。製造業の場合、資金使途の大半を機械が占めるため、その機械でどれだけの量をこなせるのか、その量に見合う受注の見込みがあるのか、という説明が計画の中心になります。自己資金だけを積み増して同じ計画書を出し直すと、判断が変わりにくいのはこのためです。
Q2. 機械1台ごとに、資金使途を説明できる状態ですか
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、融資限度額が7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。製造業は設備の単価が高く、この枠に近い金額を希望する場面が出てきます。金額が大きくなるほど、見積の中身に説明を求められます。
確かめたいのは、型式・数量・単価・納期の入った見積が揃っているか、そのうえで「なぜこの機種か」「なぜこの台数か」を自分の言葉で言えるかです。同等品が他社にもある中でその1台を選んだ理由、能力に対して受注量が見合っているか、後から増設する前提なのか。中古機を入れる計画なら、価格の根拠と、あと何年動かせる見込みなのかも説明の対象になります。
返済の設計も先に確認しておくと話が早くなります。新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例では、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内、据置期間はいずれも5年以内です。

💬 執筆者の小峰から一言
経験の不足をどう補うかは、書き方で評価が分かれるところです。信用金庫で融資を出す側にいたころの感覚で言うと、同業の知人に定期的に助言をもらう、経理や専門技術は外部に委託する、という補い方は経営そのものへの関与としては弱く見えます。事業経験のある方に役員として入っていただくなど、運営に直接関わる体制まで踏み込めているかで、読まれ方が変わってきます。
Q3. 量産と入金までの期間を、運転資金に織り込んでいますか
製造業は、機械を据えてから現金が入るまでの距離が長い業種です。如付と試運転、試作品の品質確認、取引先の承認、初回の受注、納品、そして入金。この間にも家賃と人件費は出ていきます。
設備資金だけを手当てして運転資金を薄く組むと、稼働が始まる前に手元が細くなります。運転資金の資金使途は、事業に必要な支出であることが前提です。従業員の給与や、法人であれば代表者への役員報酬は、事業活動に必要な経費として運転資金の対象になります。
元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いになります。稼働までの期間が読める業種だからこそ、その期間をどう見積もったかを計画に残しておくと、説明が通りやすくなります。
Q4. 一度断られた記録は、次の審査にどう効きますか
ここは誤解が流通している部分です。日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報機関側の記録として残ることはありません。一方で、公庫内部には審査に落ちた記録が残ります。そのため、同じ申請者が次回審査を受ける際は、過去に否決された経緯を踏まえて慎重に扱われる可能性があります。
過去の延滞や債務整理に心当たりがある場合は、信用情報そのものを確認しておく方法があります。CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターの3機関で自己開示を行い、現状を把握します。延滞が残っていれば完済し、登録が抹消される時期を確認します。自己破産歴の登録期間は最長でも7年程度で、全国銀行個人信用情報センターの官報情報が2022年11月に10年から7年へ短縮され、CIC・JICCは5年です。10年という数字は古い基準にもとづくものです。
Q5. すぐ再申請してよいですか
期間を空けば通る、という性質のものではありません。原因を潰さずに再申請しても、結果は変わりません。自己資金不足、事業計画の説得力不足、業界未経験への対策不足など、否決の理由を具体的に特定し、そこを改善したうえで再申請することが必要です。
製造業でよくあるのは、機種の選定と受注の見込みが結びついていない、量産までの期間が計画に入っていない、といった中身の問題です。時間の目安としては、書類提出後おおむね3週間から1か月で実行に至り、書類を整える時間を含めると合計で2か月程度を見込む形になります。改善に必要な作業量から逆算して、次の申込み時期を決める順番になります。

💬 執筆者の小峰から一言
見落とされやすいのが決算書の存在です。創業融資だから決算書は関係ない、と受け取られることがありますが、新しく設立した会社でも一期でも決算が締まっていればその決算書は確認されます。代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象です。手元にある決算については、内容を説明できる形で整理してから臨んでいただくのがよいと思います。
Q6. 公庫以外の手段に切り替えるべきですか
切り替えの前に、仕組みの理解を揃えておきます。自治体の制度融資は、自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携する仕組みです。融資の実行主体、つまりお金の出し手は民間金融機関で、信用保証協会は保証を付ける役割を担います。自治体は利子補給や預託などで関与します。信用保証協会が直接貸し出すわけではありません。
製造業では、機械をリースで導入する案も並びます。初期費用を抑えられる一方で、リースには次のようなデメリットもあります。
- 連帯保証人が必要になる
- 機器の所有権が持てない
- 契約期間中の中途解約が難しい
- 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い
融資とリースのどちらが自社に合うかは、資産計上の考え方や資金繰りの状況によっても変わります。賃貸借費用の負担も含めて、税理士や金融機関に相談しながら判断する形になります。
まとめ
製造業の創業融資で公庫に断られたとき、見直す先は自己資金の額だけではありません。機械1台ごとの資金使途の説明、量産と入金までの期間を織り込んだ運転資金、経験不足を補う体制。この3つが計画の中で結びついているかを確かめてから、再申請の時期を決める順番になります。
参考までに、2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。
否決の理由は、書面だけでは特定しきれないことがあります。どこを直せば計画として通るのかを整理する段階からお手伝いできますので、次の申込みに動く前にご相談ください。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























