
ペットホテル・デイケア開業の融資は預かれる頭数から組む|資金の分け方と減額になる理由
ペットホテル・デイケア開業の資金づくりと公庫の創業融資、よくある質問で整理します
ペットホテルやペットのデイケア(日中預かり)を始めようとすると、トリミングや物販だけの店舗とは資金の中身が変わってきます。犬や猫を預かって夜を越す、あるいは日中ずっと同じ空間で過ごしてもらうという事業なので、ケージや空調、区画の作り方に手が入りますし、人の張り付き方も変わります。
ところが開業を調べ始めると、出てくるのは「開業資金はいくら」という総額の話と、資格や手続きの話がほとんどです。総額の目安が分かっても、その金額を日本政策金融公庫の事業計画書にどう落とすのかは別の作業になります。ここでは、開業予定の方から実際に多い疑問を質問の形で並べ、申し込みの前に決めておくことを整理します。数字は執筆時点で確認できたもので、制度や利率は変わりますので、申し込みの段階では申請先でご確認ください。
質問1|開業に必要な資金は、どうやって出せばよいですか
総額をどこかから借りてくるのではなく、設備資金と運転資金の2つに分けて積み上げるところから始まります。融資の申込みでもこの2つは別々に書く欄があり、返済期間の考え方も分かれるためです。
設備資金の側は、預かる場所そのものにかかるお金です。ケージやサークル、空調と換気、区画を分ける造作、給排水、汚物処理まわり、見守り用のカメラといった項目が並びます。物件そのものにかかる費用も設備側で必要になります。運転資金の側は、事業を回していくためのお金です。人件費は事業活動に必要な経費として運転資金の対象になりますし、法人であれば代表者への役員報酬も同じく対象になります。
この分け方をせずに総額だけで申し込むと、後の質問すべてが曖昧になります。見積を項目ごとに割り、どちらの資金かを決める作業が出発点です。
質問2|ペットホテルとデイケアで、資金の中身は違いますか
同じ預かる事業でも、重くなる側が変わります。宿泊を受けるペットホテルは、夜を越す前提で空調や照明、区画、夜間の見守りをどうするかという話になり、設備側と、夜間帯の人の手当てという運転側の両方に効いてきます。日中預かりのデイケアは、遊ばせる空間の広さと、その時間に何人が付くのかが中心になります。
ここが資金計画に効いてくるのは、収容できる頭数が面積と人の数で頭打ちになるためです。売上の見込みを立てるときも、料金表の数字をそのまま伸ばすのではなく、預かれる頭数の上限から組み立てることになります。両方を1つの施設でやるのか、どちらかに寄せるのかは、資金の話に入る前に決めておきたいところです。
質問3|公庫の創業融資は、いくらまで借りられますか
創業期の主な選択肢は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月までは「新規開業資金」という名称で、無担保・無保証の特例だった「新創業融資制度」は2024年3月に廃止され、現在は各融資制度に無担保・無保証の枠組みが組み込まれています。融資限度額は7,200万円で、このうち運転資金は4,800万円です。
利率は、2026年6月1日現在の基準利率で、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に無担保で利用する場合が年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があり、この引下げは担保の有無で対象が変わるものではありません。ただし適用できるかどうかは利用する制度や審査、条件によって異なりますので、下がるものと決めつけず申請先でご確認ください。
返済期間は、新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例として、設備資金が20年以内、運転資金が10年以内です。元金返済の据置期間は5年以内で、据置中は利息のみの支払いになります。開業してすぐは収入が読みにくい事業ですので、据置をどう置くかは申込みの時点で考えておく部分です。
質問4|自己資金はいくら用意すればよいですか
制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。かつての新創業融資制度にあった10分の1という要件のような固定の基準は、現行の制度にはありません。一方で、自己資金の額は審査の判断材料として見られており、多いほど有利になりやすい関係にあります。何分の1が必須という書き方をしている情報を見かけたら、現行制度の話かどうかを確かめてください。
準備の面では、面談の時点で口座に確認できる形にしておくことになります。また、創業前に自費で取得した資格や、先に買った設備・備品、テストマーケティングにかかった費用などは、みなし自己資金として一定の範囲で評価されることがあります。動物を扱う事業では開業前に資格や講習にお金を使っている方もいますので、領収書は残しておいてください。
質問5|申し込みから実行まで、どのくらいかかりますか
書類を提出してからはおおむね3週間から1か月が目安です。創業計画書や自己資金の裏づけ、設備の見積などをそろえる時間を含めると、準備に1か月、審査と実行に1か月で、合計2か月程度を見込んでおくと落ち着いて進められます。
この事業でもう1つ考えるのは、動物を預かる事業に必要な登録の段取りとの重なりです。登録の要否や進め方は事業の形や自治体によって変わりますので、物件を押さえる前の段階で行政書士などの専門家に確認し、融資のスケジュールと並べて置いてください。物件の契約を先に済ませてから両方が動き出すと、家賃だけが出ていく期間が伸びます。
質問6|希望した金額どおりに借りられないことはありますか
申込額から減った金額で決まることはあります。減額の理由は大きく2つで、1つは資金使途の妥当性、もう1つは自己資金です。
資金使途の妥当性では、業種に対して過剰なスペックの設備や、高すぎる什器が引っかかります。店舗型の場合は、その商売に一等地が本当に必要なのかも問われるところです。もう1つの自己資金は、自己資金の額により融資額も変わるということです。額によっては減額もありえます。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
資金使途の説明では、その投資でどれだけ売上が上がり、収益がどれだけ出るのかまで書けているかが効いてきます。製造業なら機械の生産能力から示せるのですが、店舗型はここが示しにくい。預かる事業は収容できる頭数という上限がはっきりしているぶん、設備を入れた結果その上限がどう動くのかを書けます。そこを飛ばさないでください。
質問7|業界の経験がなくても審査は通りますか
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。ですので未経験だから申し込めない、ということにはなりません。ただ、経験の不足をどう補うかは計画の中で問われる部分です。
補い方には効きやすいものとそうでないものがあります。同業の知り合いから助言をもらっている、経理や専門的な業務を外部に委託している、といった説明は、経営そのものへの関与としては弱く、カバー策としては物足りません。事業の経験がある方を役員として迎えるなど、運営に直接関わる体制を作る方向のほうが説明は通ります。
あわせて、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。創業融資だから決算書は関係ない、ということにはなりませんので、手元にある決算については説明できるよう整理しておいてください。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
返済力が乏しいから減らす、という見方はしていません。返済は返済期間で調整できる話ですから、収益の中から返済金が出せることを計画で示していただければよいのです。順番としては、まず事業そのものが無理なく組めているかを先に見ます。返済の話から入って金額を小さくするより、事業の中身を固めるほうが先だと考えてください。
まとめ
ペットホテルとデイケアの開業では、預かれる頭数が面積と人の数で決まるという事業の形が、そのまま資金計画の形になります。見積を設備資金と運転資金に割り、収容の上限から売上を組み立て、自己資金の裏づけをそろえる。この順番で進めると、公庫の申込書に書く数字がつながった状態になります。
ここで触れた限度額や利率、据置期間は2026年6月1日現在などの時点にもとづく内容で、制度は変わります。動物を預かる事業の登録と融資の段取りをどう並べるか、自分の見積のどこを設備資金に入れるかで迷われた場合は、物件を押さえる前の段階でご相談ください。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























