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コラム

コンサル独立1年目の資金計画|入金時期と創業融資のタイミング

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独立1年目のコンサルタントが資金計画を「入金の月」で組み直す方法

コンサルタントの独立は、飲食店や整骨院の開業と比べると始めやすく見えます。店舗も要らず、大きな機械も要りません。パソコンと名刺と、これまでの実績があれば明日からでも動けます。だからこそ、資金計画をきちんと組まないまま走り出す方が少なくありません。

ところが1年目に手元資金が細っていく理由は、設備投資ではないところにあります。案件が決まっても、報酬が口座に入るのは数か月先というコンサル特有の構造です。売上の見込みは立っているのに支払いが先に来る、という状態が続きます。

この記事では、独立して間もない1人コンサルタントの方に向けて、1年目の資金計画を「売上が立つ月」ではなく「入金がある月」で組み直す考え方と、創業融資を使うときに見落としやすい前提を整理します。なお本文の制度内容・数字は執筆時点(2026年8月)のものです。金利や制度は変わりやすいため、実際の申請時は日本政策金融公庫などの公式情報をご確認ください。

コンサルの独立は、なぜ資金計画が軽く見られやすいのか

理由は単純で、初期費用が小さいからです。事務所を借りず自宅で始めれば、開業時にかかるのはパソコン、通信環境、名刺やウェブサイト、会計ソフトくらいで、数十万円の範囲に収まることも珍しくありません。

この「初期費用が小さい」という事実が、資金計画の議論をそこで止めてしまいます。しかし1年目に必要な資金は、開業時に一度だけ出ていくお金ではなく、案件の報酬が入り始めるまでの数か月間、事業を続けるためのお金です。ここが飲食店や整骨院とまったく違う点で、コンサルの場合は設備資金がほぼゼロで、必要なのはほぼ運転資金という構造になります。

もう1つ、独立直後のコンサルタントには特有の時間差があります。前職の人脈から声がかかっても、それが有償の契約になるまでには打診、提案、見積、社内稟議、契約書という段階を踏みます。相手が法人であれば、決裁のタイミングは相手の予算サイクルにも左右されます。実力の問題ではなく、法人取引の構造として時間がかかります。

初期費用の小ささと、この時間差。この2つがかけ合わさると、「お金はあまりかからないはずなのに、なぜか手元が減っていく」という状況が生まれます。

1年目は「売上が立つ月」ではなく「入金がある月」で組む

資金計画を作るとき、多くの方は月ごとの売上見込みを並べます。4月に契約が1件、6月に2件目、といった具合です。しかし資金繰りを見るうえで意味を持つのは、契約が決まった月ではなく、その報酬が実際に口座へ入る月です。

コンサル業では、この2つの月がずれます。ずれを生む要素は主に3つあります。

  • 初回契約までのリードタイム|声がかかってから契約に至るまでの期間。法人相手では、提案から稟議・決裁を経て契約という流れになるため、数週間から数か月かかることがあります
  • 締め日と支払サイト|月額顧問契約であっても、月末締めの翌月末払いといった条件が一般的です。4月分の報酬が入るのは5月末、という形になります
  • 成果物の検収|プロジェクト型の案件では、納品後に先方の検収が終わってから請求というケースがあります。検収が翌月にずれれば、入金はさらに1か月後ろへ動きます

この3つを踏まえて、月ごとの表を2段で作ってみてください。上の段に「契約が決まる見込みの月」、下の段に「その報酬が入金される見込みの月」を置きます。すると、契約が順調に取れていても、最初の入金までに数か月の空白が生まれることが目に見える形になります。

この空白の長さと、その間に出ていく事業上の支出額。この2つの掛け算が、1年目に用意しておきたい運転資金のおおよその輪郭になります。売上見込みの合計額ではなく、この空白期間を埋める金額で考えるのが、コンサルの資金計画の起点です。

なお、資金使途は事業に必要な支出であることが前提になります。個別の支出が資金使途として認められるかどうか判断に迷う場合は、申請先や専門家に確認しながら計画を整えることをおすすめします。

資金使途は運転資金が中心になる|返済期間と据置の使い分け

創業融資を使う場合、コンサルタントの資金計画には特有の弱点があります。設備投資がほとんど無いため、資金使途の説明が薄くなりやすいのです。

飲食店であれば厨房機器の見積書があり、整骨院であれば施術ベッドの見積書があります。金額の根拠が書類として存在します。一方コンサル業では、パソコン1台の見積を出しても数十万円で、残りは運転資金という説明になりがちです。だからこそ、前節で作った「入金までの空白期間」の根拠を、そのまま資金使途の説明に使えるように整理しておく価値があります。

返済期間と据置期間の設計も、資金使途によって条件が変わります。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例では、次のようになっています。

  • 設備資金|返済期間20年以内、据置期間5年以内
  • 運転資金|返済期間は原則10年以内、据置期間5年以内

コンサルの場合は運転資金が中心になるため、返済期間の上限は原則10年以内という前提で月々の返済額を見ることになります。据置期間は元金の返済を待ってもらう仕組みで、据置中は利息のみの支払いです。案件が積み上がるまでの期間に、この据置をどう当てるかが1年目の資金繰りを左右します。

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融資を申し込むタイミング|開業してからでは間に合わないことがある

「まず独立して、資金が足りなくなったら融資を検討しよう」と考える方がいます。しかしこの順番には時間の問題があります。

創業融資は、書類提出後おおむね3週間から1か月程度で実行されるのが目安です。ただしその前に、創業計画書、自己資金のエビデンス、見積書といった書類を整える時間が必要です。準備に1か月、審査・実行に1か月、合計で約2か月を見ておくと安全です。

つまり、手元が細ってきたと感じてから動き始めると、実際に資金が入るのは2か月後になります。前節で見た「入金までの空白期間」と、この2か月がちょうど重なる時期に申し込むことになり、いちばん苦しいタイミングで書類を作る羽目になります。

資金計画を12か月で置いてみると、手元資金がいちばん薄くなる月がどこかは事前に分かります。その月から逆算して2か月前には申し込みの動きを始めておく、という時間軸を先に決めておくのが現実的です。

参考までに、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、創業期の方であれば原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できます。2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いとなります。

「先に法人化してから借りる」という判断には注意が必要です

ここは独立コンサルタントの方がとくに間違えやすいところです。「個人事業で少し様子を見て、軌道に乗ったら法人化して、法人として創業融資を受ける」という流れを考える方は多いのですが、この順番だと創業融資が使えなくなる場合があります。

個人事業主が今の事業をそのまま法人化する、いわゆる法人成りの場合は、原則として創業融資の対象外です。すでに事業の実績があるとみなされ、通常の融資の扱いになります。

一方で、個人事業主が営んでいる事業とは別の、新しい事業を行う法人を新たに設立する場合は、その新法人にとっては創業にあたるため、創業融資を使うことができます。同じ「法人を作る」でも、既存事業の器を替えるのか、別の事業を新しく始めるのかで扱いが変わります。

独立コンサルタントの場合、この違いは切実です。個人でコンサルティングを始めて、そのまま法人化するなら法人成りにあたります。創業融資を検討しているなら、個人事業として始める段階と法人を設立する段階のどちらで申し込むのかを、あらかじめ整理しておく必要があります。判断は個別の事情によって変わるため、法人化の時期を検討している段階で専門家に相談しておくと選択肢を狭めずに済みます。

自己資金と、コンサルならではの審査材料

自己資金については、誤解が広まっています。公庫の創業融資では、制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。「総額の10分の1が必須」といった固定要件は現行制度にはありません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料になり、多いほど有利になりやすいという関係はあります。

自己資金は、面談時点で口座に確認できる形にしておきます。また、創業前に自費で取得した資格や、備品の購入、テストマーケティングにかけた費用などは、みなし自己資金として一定範囲で評価されることがあります。独立準備中に自腹で受けた研修や、事前に作ったウェブサイトの制作費などが該当し得るので、領収書は必ず保管しておいてください。

審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。判断材料はこの2つに限られるわけではなく、経験や資金使途、面談の内容なども含めて総合的に見られます。

そしてもう1つ、独立コンサルタントに関わりが深い点があります。創業融資は事業として創業した実績がなくても申し込めますが、決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていれば、その決算書が確認されます。また、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。独立コンサルタントは他社の役員を兼ねていたり、以前に設立した法人を持っていたりするケースがあるため、該当する方は事前に整理しておくと説明がスムーズです。

なお、コンサルティング業のように未経験の領域に踏み出す場合の説得力の補い方についても触れておきます。「同業のメンターから定期的に助言を受けている」「経理や専門技術を業務委託でプロに任せている」といった対策は、経営そのものへの関与としては弱く、有効なカバー策とは言えません。より説得力を持たせるには、事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えることが有効です。

1年目の資金計画を12か月で置くときのチェックリスト

ここまでの内容を、実際に手を動かす順番で並べます。

  • 月ごとの表を2段で作る。上段に契約が決まる見込みの月、下段にその報酬が入金される見込みの月を置く
  • 締め日と支払サイト、検収のタイミングを案件ごとに確認し、入金月を後ろにずらす
  • 最初の入金までの空白期間が何か月あるかを数える
  • その期間に発生する事業上の支出を積み上げ、必要な運転資金の輪郭を出す
  • 手元資金がいちばん薄くなる月を特定する
  • その月の2か月前を、融資を申し込む目安の時期として置く
  • 資金使途の説明として、入金までの空白期間の根拠を書類の形に整理する
  • 据置期間をどの時期に当てるかを決め、据置明け以降の返済額が現実的か確認する
  • 法人化を考えている場合は、個人事業と法人設立のどちらの段階で融資を申し込むかを先に決める
  • 自己資金を面談時点で口座に確認できる形にし、みなし自己資金になり得る支出の領収書をまとめる

この順番で置くと、金額の話に入る前に時間軸が固まります。コンサルの資金計画がずれる原因はほぼ時間軸にあるので、ここを先に埋めるだけで見通しがかなり変わります。

よくある質問

まだ契約が1件も決まっていない状態でも、創業融資は申し込めますか

申し込み自体は可能です。審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。ただし契約実績がない分、売上の見込みをどのような根拠で置いているのかの説明が重要になります。前職での担当領域、想定する顧客像、単価と件数の考え方などを具体的に示せるよう準備してください。

自宅開業でも創業融資は使えますか

自宅で開業していること自体が申し込みの障害になるわけではありません。ただし設備資金がほとんど発生しないため、資金使途は運転資金が中心になります。何にいくら必要で、それがなぜその金額なのかを説明できる形にしておくことが大切です。

一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか

公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。

否決された直後にすぐ再申請してもよいですか

原因を潰さずに再申請しても、結果は変わりません。自己資金不足、事業計画の説得力不足、業界未経験への対策不足など、否決の理由を具体的に特定し、そこを改善したうえで再申請することが必要です。

据置期間はできるだけ長く設定したほうがよいですか

据置期間中は利息のみの支払いになるため、案件が積み上がるまでの期間の負担は軽くなります。一方で、据置が明けたあとの元金返済は、残りの期間で返す形になります。据置を長く取るほど据置明け以降の月々の返済額は大きくなるため、案件がどの時期に安定する見込みかと合わせて決めることになります。設定できる期間や条件は制度や審査によって異なるため、申請先に確認してください。

まとめ

独立1年目のコンサルタントの資金計画でつまずくのは、金額の見積もりよりも時間軸です。契約が決まる月と報酬が入る月がずれ、そのずれが締め日・支払サイト・検収のタイミングで積み重なります。だからこそ、売上が立つ月ではなく入金がある月で表を組み直すところから始める価値があります。

創業融資を使うなら、申請から実行まで約2か月という時間を計画に織り込み、手元がいちばん薄くなる月から逆算して動くことになります。設備投資が少ない業種だからこそ、運転資金の根拠をどう説明するかが計画の中身を決めます。法人化のタイミングによって創業融資が使えなくなる場合がある点も、早い段階で確認しておきたいところです。

制度や金利は変わりやすく、本文の内容も2026年8月時点のものです。自分の案件の入り方でどのくらいの運転資金が要るのか、どの時期に申し込むのが現実的かは、事業の中身によって変わります。判断に迷う段階で一度専門家と話しておくと、選択肢が狭まる前に手が打てます。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。


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