
ネットショップ開業の創業融資|在庫仕入費の借り方と事業計画のコツ
ネットショップやECサイトで開業するとき、商品の在庫仕入れにまとまった資金が必要になります。「実店舗がないEC事業でも創業融資は受けられるのか」「在庫の仕入れ費用は融資の対象になるのか」と不安に感じる方は多いものです。本記事では、これからネットショップ・EC事業を始める個人事業主・中小企業の方に向けて、創業融資の基本から在庫仕入費の申請方法、事業計画書のポイントまでをわかりやすく解説します。
なお、融資の金利や限度額などの制度内容は変わることがあります。本記事は執筆時点(2026年6月)の情報をもとにしています。実際の申請時は日本政策金融公庫など公式の最新情報をご確認ください。
創業融資とは
創業融資とは、主に日本政策金融公庫が提供する、起業時の資金調達を目的とした融資制度のことです。政府系金融機関が提供するため、民間金融機関では対応できないような場合でも積極的に取り組むのが大きな特徴です。
無担保・無保証人での借り入れが原則として可能であり、事業の実績がなくても事業計画書と自己資金をもとに審査が行われます。融資限度額は最大7,200万円程度(制度による)です。
ただし、申し込みから融資実行まで1〜2か月程度の時間がかかります。書類の準備と面談が必要であり、事業計画書の作り込みが審査結果に影響します。「今すぐ資金が必要」という状況には、時間的に対応が難しい点が課題です。
実店舗がなくてもEC開業で創業融資は受けられる
結論として、実店舗を持たないネットショップ・EC専業であっても創業融資を申請できます。創業融資の審査では「店舗があるかどうか」よりも、事業計画の実現性と返済可能性が見られます。EC事業の場合は、どの商品をどの販路(自社サイト、Amazon、楽天など)で、いくらの単価・粗利で、月にどれくらい売るのかという売上計画と、その根拠を具体的に示せるかが重要です。
むしろEC事業は実店舗より初期の内装費・保証金が抑えられる一方、在庫仕入れや広告宣伝費、システム利用料などに資金が必要です。これらをどう見積もり、どう回収していくかを計画書で説明できれば、無店舗でも十分に評価されます。
EC開業の代表的な選択肢:新規開業・スタートアップ支援資金
個人事業主・中小企業の創業時の代表的な選択肢は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在の主制度となりました。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)と、創業時に必要な資金規模をカバーできる設計になっています。
税務申告2期以内の方については、原則として0.65%(雇用拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。元金返済の据置期間は最大5年以内で設定でき、据置期間中は利息のみの支払いとなるため、開業初期のキャッシュフローに余裕を持たせることができます。なお、これらの金利・条件は執筆時点のものであり、最新の数値は公式情報でご確認ください。
在庫仕入費は創業融資で借りられる?
在庫の仕入れ費用は、創業融資のうち「運転資金」として申請するのが基本です。EC事業では、開業時にある程度の在庫を確保する必要があるため、初期の仕入れ費用を運転資金として計上できます。ただし、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
- 過大な在庫は評価されにくい:売上計画に対して明らかに多すぎる在庫の仕入れは、「売れ残りリスク」と見られます。月商の見込みに見合った、回転を意識した仕入れ計画にしましょう。
- 仕入れ単価・数量の根拠を示す:仕入先の見積書や取引予定、想定する販売数量など、数字の裏づけを用意すると説得力が増します。
- 運転資金と設備資金を分けて考える:パソコンや撮影機材、倉庫の棚などは設備資金、在庫仕入れや広告費・送料などは運転資金と整理しておくと、資金使途が明確になります。
在庫仕入費を含む運転資金は、開業後に売上が安定するまでの数か月分を見込んでおくと、資金ショートを防ぎやすくなります。
事業計画書・資金使途で気をつけること
事業の実績がない創業時は、事業計画書の説得力がそのまま審査結果に直結します。とくに資金使途の組み立てには注意が必要です。EC事業特有の経費(モール出店料、決済手数料、広告費、物流・梱包費など)も漏れなく見積もりに入れましょう。
オフィスや倉庫にかかわる費用のうち、敷金・礼金・仲介手数料は資金使途に含めません。保証会社費用も同様です。ビジネスにおいて敷金・礼金は一般的に資金使途として扱わないためです。
自己資金とみなし自己資金
自己資金は、原則として申請時点で口座に確認できる形にしておきます。複数口座に分かれている場合は、申請用のメイン口座に集約し、通帳ですぐ説明できる状態にしておくと、審査がスムーズになります。
また、創業前に自費で取得した資格・設備や備品の購入・テストマーケティング費用などは、「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがあります。EC開業前に購入した撮影機材やテスト販売の費用なども該当しうるため、領収書を必ず保管しておきましょう。
申請から融資実行までの流れとスケジュール
申請から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月程度が目安です。創業計画書・自己資金エビデンス・見積書などの書類を整える時間を含めると、申請準備に1か月、審査・実行に1か月、合計2か月程度を見ておくと安全です。EC開業は仕入れや出店準備と並行して進むため、「いつ資金が必要か」から逆算してスケジュールを組むことが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q. 自己資金は申請時点で全額入金しておくべきですか。
はい、原則として申請時点で口座に確認できる形にしておきます。複数口座に分かれている場合は、申請用のメイン口座に集約し、通帳ですぐ説明できる状態にしておくと、審査がスムーズになります。
Q. EC専業で実店舗がなくても融資は通りますか。
実店舗の有無よりも、事業計画の実現性と返済可能性が重視されます。売上計画とその根拠、資金使途を明確に示せれば、無店舗でも申請は可能です。ただし「必ず借りられる」というものではなく、計画の作り込みが結果を左右します。
Q. 在庫はどのくらい仕入れる計画にすればよいですか。
売上計画に見合い、在庫が適切に回転する範囲が目安です。過大な在庫は売れ残りリスクと見られやすいため、月商の見込みと連動した仕入れ計画にしましょう。
まとめ
ネットショップ・EC開業でも、実店舗がない状態で創業融資を受けることは十分に可能です。在庫仕入費は運転資金として申請でき、売上計画に見合った仕入れと、根拠のある資金使途を示すことが採択の鍵になります。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を軸に、自己資金やみなし自己資金、スケジュールを早めに整理しておきましょう。EC特有の経費構造や計画書の書き方に不安がある場合は、融資に詳しい専門家へ相談することで、申請の精度を高められます。
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この記事を書いた人

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小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

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多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。
この記事を監修した人

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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























