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コラム

IT系起業の創業融資|失敗しない事業計画書の作り方と審査のポイント

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IT系の起業で創業融資を通すための事業計画書の作り方|エンジニア・SaaS起業が押さえるべき審査のポイント

受託開発、自社SaaS、Webサービス——IT系の起業は、在庫を持たず少ない初期投資で始められる一方、「売上が立つまでに時間がかかる」「自己資金が貯まりにくい」といった理由で、創業融資の審査では独特の難しさがあります。とはいえ、ポイントを押さえた事業計画書を用意できれば、IT系の起業でも創業融資を活用することは十分に可能です。この記事では、これから起業するエンジニアや個人事業主・中小企業の方向けに、創業融資の基礎から、IT系で失敗しない事業計画書の作り方までをわかりやすく整理します。なお融資の制度・金利は変わりやすいため、本記事は2026年6月時点の情報をもとにしており、申請前には日本政策金融公庫などの最新情報もあわせてご確認ください。

創業融資とは

創業融資とは、主に日本政策金融公庫が提供する、起業時の資金調達を目的とした融資制度のことです。政府系金融機関が提供するため、民間金融機関では対応できないような場合でも積極的に取り組むのが大きな特徴です。

無担保・無保証人での借り入れが原則として可能であり、事業の実績がなくても事業計画書と自己資金をもとに審査が行われます。融資限度額は最大7,200万円程度(制度による)です。

現在の主力制度は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在の主制度となりました。税務申告2期以内の方が利用する場合は、原則として0.65%(雇用拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置期間中は利息のみの支払いとなるため、売上が立つまでに時間がかかりやすいIT系の起業ではキャッシュフローの余裕を作りやすい仕組みです。

IT系起業の創業融資が「難しい」と言われる理由

IT系のビジネスモデルには、審査で不利に見えやすい特徴があります。あらかじめ理解しておくことで、事業計画書で先回りして説明できます。

  • 売上計上が後ろ倒しになりやすい:受託は納品まで、SaaSは契約が積み上がるまで売上が立ちにくく、開業当初は赤字になりがちです。
  • 自己資金が貯まりにくい:会社員時代の副業から始めるケースが多く、まとまった自己資金を用意しづらいことがあります。
  • 成果物が形に残りにくい:設備や在庫がないため、「何にお金を使うのか(資金使途)」が金融機関に伝わりにくいことがあります。
  • 事業内容が専門的:技術的な強みを専門用語のまま説明しても、審査担当者に価値が伝わらないことがあります。

これらは裏を返せば、事業計画書で丁寧に補えば評価に変えられるポイントでもあります。

失敗しない事業計画書の作り方(IT系で押さえる点)

事業の実績がない創業時は、事業計画書の説得力がそのまま審査結果に直結します。IT系では特に次の点を意識しましょう。

  • 収益モデルを数字で示す:受託なら案件単価×件数、SaaSなら想定顧客数・月額・解約率などを使い、いつ黒字化するかの根拠を示します。
  • 受注の裏付けを添える:すでに見込み顧客や引き合いがある場合は、その事実を計画書に盛り込むと信頼性が高まります。
  • 専門用語をかみ砕く:技術の話は「誰のどんな課題を、どう解決して、いくら稼ぐか」という事業の言葉に翻訳します。
  • 資金使途を具体化する:人件費(エンジニアの採用)、外注費、広告費など、何にいくら使うかを明確にします。

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自己資金・みなし自己資金の考え方

自己資金は、申請時点で口座に確認できる形にしておくのが原則です(原則として全額入金)。複数口座に分かれている場合は、申請用のメイン口座に集約し、通帳ですぐ説明できる状態にしておくと、審査がスムーズになります。

みなし自己資金になる支出を整理する

創業前に自費で取得した資格・設備や備品の購入・テストマーケティング費用などは、「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがあります。領収書を必ず保管しておきましょう。IT系であれば、開発用の機材や、サービスのテスト運用にかけた費用などが該当する場合があります。

資金使途で失敗しないための注意点

IT系は資金使途が伝わりにくい分、ここで計画書の精度が問われます。資金使途の組み立てには次の点に注意しましょう。

オフィスにかかわる費用のうち、敷金・礼金・仲介手数料は資金使途に含めません。保証会社費用も同様です。ビジネスにおいて敷金・礼金は一般的に資金使途として扱わないためです。

また、運転資金として認められるものとそうでないものの区別も重要です。人件費は、事業活動に必要な経費として運転資金の対象になります。一方で、創業者・経営者の個人的な生活費は運転資金の対象になりません。資金使途はあくまで「事業に必要な支出」であることが前提のため、生活費を運転資金として申請することは避けましょう。

申請から融資実行までのスケジュール

申請から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月程度が目安です。創業計画書・自己資金エビデンス・見積書などの書類を整える時間を含めると、申請準備に1か月、審査・実行に1か月、合計2か月程度を見ておくと安全です。「今すぐ資金が必要」という状況には時間的に対応が難しいため、開業スケジュールから逆算して早めに準備を始めましょう。

よくある質問

Q. 自己資金がほとんどなくても創業融資は受けられますか?

自己資金は審査の重要な要素のひとつですが、金額だけで合否が決まるわけではありません。事業計画の説得力や、みなし自己資金として評価できる支出があるかどうかも含めて総合的に判断されます。「必ず借りられる」という保証はないため、計画書を丁寧に作り込むことが大切です。

Q. 副業から始めたIT事業でも申請できますか?

副業として進めてきた実績は、むしろ事業の継続性や受注力を示す材料になり得ます。これまでの売上や顧客とのやり取りを整理し、計画書に反映すると説得力が高まります。

Q. 創業融資で受けた資金の税務上の扱いが気になります。

融資は原則として借入金であり返済義務がありますが、個別の会計・税務処理は税理士の領域です。具体的な処理は自己判断せず、税理士に相談することをおすすめします。

まとめ

IT系の起業は、売上が立つまでの時間や自己資金の貯めにくさといった事情から、創業融資の審査で不利に見えやすい面があります。しかし、収益モデルを数字で示し、受注の裏付けや資金使途を具体的に説明できる事業計画書を用意すれば、評価につなげることは十分に可能です。制度・金利は変わりやすいため、最新情報を確認しながら、無理のない資金計画を立てましょう。事業計画書の作り込みや金融機関とのやり取りに不安がある場合は、創業融資に詳しい専門家に早めに相談することをおすすめします。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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この記事を監修した人


中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

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